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家出少女はどこに

 やがてレストレイドは街外れの旅人街に入ると、とある宿の前で歩みを止めた。


「……ここッスか、レストレイド?」


「ううーん……駆け落ちか誘拐か迷うところやな」


 ここは旅人のための区画。南バミューダ外輪に位置しており、バミューダの外からやってきた人間が行き交う界隈(かいわい)だ。


 誘拐犯が潜伏する場所。二人揃ってバミューダから出るための最後の拠点。どちらとも考えられた。


「かんけーねーッス。突入して確かめるッスよ! そしたら……へへっ……運良く(から)んでいるシーンにありつけるかも知れねーッス‼」


「ちょっとそんな、イノライダーさん……きゃー!」


「……ちょいまち」


 なんとなく、タキシードはマリーの尊厳を守るべきだという気分になって、中の様子を確かめるべく猫の耳を立ててみることにした。


 宿の裏に回り、バサバサ飛び上がって屋根に上がると、タキシードはそろりそろりと歩いて部屋の様子を探っていく。すると、角部屋の付近で男達の話し声が聞こえてきた。


「――くそ、なんなんだ――」


「――す、すまねぇ――」


「――このままじゃ――クレーメンスに――」


「――女を――追うか――」


「――ふざけた真似を――」


(? なんか、変やな)


 声が聞こえてくるのはその部屋だけだった。他に収穫もなかったので、タキシードは脇道に潜んでいたエイジャ達の元に戻った。


「――マリーは、いないっぽいなぁ」


「ここじゃなかったの?」


「いや、ここ……やとは思う。……なんか知らんけど、あの部屋にいる連中、犯罪臭がするな」


 タキシードが先ほど声がした部屋を猫の手でピッと指した。イノライダーが彼の指差す先を追って見て、小首をかしげる。


「犯罪臭って……なんスか?」


 うーんと唸ったタキシードは、自分の頭を整理した内容を口にする。


「これは誘拐事件で、あそこにいるのが誘拐犯で、マリーはいない」


「誘拐犯がいて……マリーがいないんスか?」


「兄ぃ、それだけじゃ分かんないよぉ」


「ワシにも分からんのや……一人で逃げ出せたんかな?」


 バミューダでは、女だから弱いなんてことはない。隙さえあれば逃げられる女はごまんといるだろう。とはいえ、あの部屋には複数人いた。マリーがその包囲から一人で逃げ出せるほどの手練れだったなら、そもそも連れ去られていない気がする。


 器用に猫の腕を組んで喉を鳴らしたタキシード。するといつの間にか、タキシードの話を聞いたレストレイドが再び道の匂いを嗅ぎ回っていた。そしてレストレイドは宿の裏に回り込むと、ワンッと一度吠えた。


 三人がその場に行き、タキシードが通訳する。


「――マリーの匂いが、続いている?」


 レストレイドは宿の裏にマリーの匂いを見つけた。しかも空気中に濃く漂っているとなると、つまりそれは、ついさっきマリーが移動したということになる。


「ほな、追ってみよか」


「え……その犯罪者はとっちめないッスか?」


「あいつらも、マリーの行方(ゆくえ)を知らんみたいやったし、そもそもワシらの仕事はマリーを探すことやし……イノライダーは捕まえに行ったらええやん。自分警察やろ」


「……自分がそんな体育会系的な逮捕劇、できると思っているッスか、所長?」


「無理やろうなぁ」


 イノライダーは線が細い。間違いなく危険な女ではあるのだが、直接戦闘(ガチンコ)はタキシードと同じく苦手な部類に入る。


「警察のくせに、そんなんやから閑職に追いやられんねん」


「だから閑職じゃないッスよ!」


「二人とも急ごう? マリーちゃんが心配だよ」


 レストレイドの手綱を持って歩き出していたエイジャの真っ当な指摘を受けて、二人とも慌ててレストレイドの後を追った。匂いは相当濃く残っていて、途中からはタキシードにも分かるようになった。


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