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イノライダー

 イノライダーの話によると、最近バミューダ全体がきな臭いらしい。貴族街で奇抜な泥棒が現れたり、手口は別として商業地区でも強引な手口の泥棒が目立っている。加えて、東バミューダではグロテスクが出たらしく、騎士団が全バミューダで密かに警戒令を出したらしい。おかげで警察は大がかりな捜査態勢を敷いており、小さな事件に手が回らないということだ。


 先日の下着ドロの時に警察が忙しいと言っていたのは方便ではなく、なんだか本当に忙しそうだった。


 そんな話をベラベラとぶっちゃけて話すイノライダー。


「ほー、そんな事になっとったんか……ところで自分、そんな話、一般人のワシらに喋ってええんか?」


「おっと……いつも通りオフレコで頼むッスね、所長……へへっ」


「自分……ほんまゆるいなぁ」


 あきれ顔になるタキシードと、苦笑いのエイジャ。イノライダーが続ける。


「それで……他の部署だけでは人手が足りなくなって、いよいよエリート捜査官の自分のところにもお鉢が回ってきたってわけッス……で、ここは、いっちょタキシード探偵事務所のお力を借りつつササッと解決して、余った時間で家に帰ってタバコふかしながらごろごろしたいな、と……」


「エリートって……閑職(かんしょく)で鳴かず飛ばずの穀潰(ごくつぶ)しのくせに、ずいぶん偉そうやな」


「か、閑職じゃないッス! 殺人課は警察の花形なんスよ!」


「殺人なんて年に何回起こるん? 去年は一回やっけ……あ、あれは腹上死にびびった女が逃げただけの、しょうもない事件やったっけなぁ」


「ぐう」


 イノライダーはぐうの音を上げて俯いた。


 ここバミューダで殺人なんて、滅多にないのだ。強いものが(とうと)ばれる風潮の下、老若男女関わらず子孫を残すためにみんな必死で強くなろうとする。結果、その辺の商店街のおっさんですら結構な戦闘力がある。人を殺そうとすると、反撃で自分も殺される可能性が高いという究極の抑止力が働くこのバミューダで、わざわざ人を殺そうなどと言う(やから)は、相当な事情がある場合だけだ。


 そして、そこまで話がこじれるケースは生まれにくい。なぜなら大体の揉めごとは決闘で白黒つけてしまうからだ。喧嘩になって警察に逃げ込めば異性受けがすこぶる悪い。民間レベルの決闘裁判はバミューダでは一般的な事だった。


 ――まぁ、それで本当に後腐れなくやっているのだから感心する。


 決闘が終わった日の夜、当事者同士が仲良く酒を飲むのも、よくある光景だった。


「はぁ、ウチは自分らの小間使いちゃうで」


「小間使い……まさか。大事な業務委託先ッスよ」


「金払いめちゃくちゃ悪い癖に。まるでたちの悪い中抜き業者やな」


 警察が内部情報と共に探偵に仕事を流す。グレーというか真っ黒。一応、情報を流してもらえる利があるのでタキシードはイノライダーと付き合ってはいるが、冷静に考えるとこの女、かなりの悪徳警官に属している気がする。


 エイジャはタキシードをソファーに下ろし、レストレイドを連れて遊びに庭に出て行った。彼女のそんな後ろ姿を眺めながらイノライダーがひと言。


「相変わらずのドスケベボディー……眼福(がんぷく)眼福……えへへっ」


「お前……」


 タキシードはあきれ顔になって、よだれを拭っていたイノライダーを眺めた。



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