とある病院のマニュアル
ある中学生の女の子は生まれた時から心臓が弱く一ヶ月に一度、病院の検査を受けてきました。でもある日、学校でいつもと同じく変わらない生活を送っていたはずなのに突然の心臓の発作でいつも通っている病院に入院する事になりました。
母はいい機会だから精密検査も行うと言い出したのです。その女の子は母の言葉に拒むことはなく少し長めの入院が決まりましたのです。
そして、今日がその入院の日。
あの発作が起きた以来、体調になんの問題もないその女の子は病院に入院する意味なんてわからないと思いながらいつもその女の子の検査をしてくれる看護師さんのお話を聞きました。
そして、最後に看護師さんは女の子にとあるファイルを渡したのです。
なんのファイルなのかなと気になったその女の子はその場でファイルを開けてみようとしましたが、その看護師さんはそれを止めるようにファイルを開けようとする女の子の手をぎゅっと握り言いました。
「これはあなたが一人にいるときに見なさい。それと、これに書いてあるものは絶対守りなさい。」
そう女の子に言っていた看護師さんの手が少し震えていましたが、その女の子は何も知らず頷き部屋を出る看護師さんに手を振ったのです。
そして、その部屋に一人残された女の子はさっき看護師さんに渡されたファイルを開けてみました。
それはこの病院のマニュアルだったのです。
そのマニュアルの一番最初のページにはこう書いてありました。
『このマニュアルは周りに誰かいないか確認後に開けてください』
しかし、その女の子はその意味深な文句に気にせず、部屋のドアが少し開けていることも気づかずそのマニュアルの紙を捲り読み始めたのです。そこに書かれていた内容は…
『□□□病院に長期間入院するお方にお伝えします。このマニュアルに書いてあることは入院期間中何があっても守ってください。
何があってもです。
1. もし紫色の白衣を着ている看護師を見かけたら目が合わないように下を向いてその場から離れてくだない。この病院が使用する看護師用白衣は桃色と白のみ使用していますから。
もし彼女に声をかけられたら近くのトイレに入ってください。彼女は水を嫌いますから。
2. もし、何も言わずドアを三回以上たたくものがあれば、ドアを絶対に開けないでくだない。音も出さないでください。ドアをたたく音が止まったら出ても構いません。
3. 中央エレベーターの四号機を使用する際にはエレベーターの天井をしっかり確認の上で乗ってくだない。確認をしたあと、乗った場合でも5階のボタンがあれば上を見ずに降りてください。この病院は4階しかおりません。
4. 4階の非常口に子供の影が見えるなら近づかないで見ないふりをしてください。転んで泣き声がしても近づかないでください。あれは子供ではないので。
5. 深夜4時26分から5時15分までの間、窓を誰かたたく音がしたら無視してください。確認しない方が良い選択です。
最後にこのマニュアルのことは誰にも、たとえ家族であろうとも口にしないでください。そして、マニュアルと共にファイルを病院の焼却場へ燃やしてください。
彼らがこれを見て方法を変えるかもしれませんので。
この上述のことを守れば何もなく無事に退院できますので、何卒よろしくお願いします。』
その女の子は意味のわからないマニュアルが書かれた紙をなんだか不気味だと思ってクシャクシャにして部屋のゴミ箱へと投げ捨てたのです。
そして、なんだか寒くなった女の子は布団を被ってその不気味な内容を忘れるために目を閉じ寝ようとしましたのです。
どのくらい経ったのでしょうか。その女の子が目覚めた時には部屋のドアが完全に開いていてゴミ箱に投げ捨てたはずのマニュアルの紙は何処かへと消えていました。
しかし、その女の子は深く考えず看護師さんが捨ててくれたとばかり思ったのです。
その後、その病院からは誰一人退院することはなく閉鎖されたのことです。
めでたしめでたし…