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入寮の儀式3

どういうわけか少し話そうよ、と2人に言われてソファで話していた。いや、話を聞いていた…拓巳と…

理央は城マニアらしい。城について熱く語りだした。拓巳はまたかという顔をしていたから毎度の事なんだろう。

「じゃあ、一番好きな城はどこなの?」

「ええー?そんなの決められないよぉ!でもねえ、うーん・・・熊本か、姫路か・・・竹田も捨てがたい・・・」

なんかぶつぶつ言ってる。もう19時半になるし、そろそろ食堂いこうよー。

「じゃあ、この城はどこから攻めると思う?」

「そろそろ行くか」

拓巳が助け舟を出してくれた!俺にはそう思えた!あ、そうだね、なんてすんなり行けるなら早く言えばよかった。いや、城の話が面白くないとかじゃなくて!ええと、奥が深いよね!城!





やっとのことで食堂へ。

いやあ、めっちゃ広いわ。天井高いし。寮内の温かみのある感じとは反対に白い壁に薄い色で抽象的な何かが描かれている。照明の形も波型にデザインされていてなんかハイソな感じ。時間をずらしたせいか生徒もまばらで俺たちは端っこの窓際に座った。2人に聞きながらタッチパネルで注文を終え、今か今かと料理が来るのを待っていた。なんかこっちを見ている人が多いような。一瞬考えたが料理が来たので忘れてしまった。

「こちら銀むつの味噌焼きとなすの揚げ浸し定食になります。」

「渋いよ、渋すぎるよ真尋。」

そういう理央の前にはエビドリアと小さいハンバーグ、ポテトフライ、サラダ、それにゼリーがついていた。これはなにか?お子様セットみたいなやつなのか?もう大きいから旗はないのか?そして拓巳の前には天ざる。こっちのほうが断然渋くね?これはもう、日本酒だよね、いや、酒飲んだことないけど。

「真尋、明日すこし大変かもしれないぞ」

「ん?なんで?」

「外部生って珍しいんだよ。だいたい小学生からおんなじ顔ぶれだし」

「ああ、そっか。みんなサラブレッドだもんな」

「あのさ、なんでここに来たとか聞いてもいい?あ、言いたくないならいい、聞かない」

「理央、大丈夫だよ。隠すようなことでもないし。」

そう、俺は中学生まで庶民?だった。少しみんなよりできるからといっても公立の学校に通い、中学ではみんなと一緒に塾にも行き、コンビニで駄菓子を買い、チャリンコで暴走したり、ゲームで狩りに行ったりもした。とにかく、普通の中学生だったんだ。そんな中3の冬。いままで存在すら知らなかった母さんの兄さん、つまり叔父に当たる人から家に連絡がきたんだ。一人息子が病弱で会社を継がせても負担になりかねない。息子が信頼できる右腕として真尋を貸してくれないか、みたいなさ。母さんは叔父と仲が良くないみたいで激怒して突っぱねたんだけど、爺さんとうちの親父の説得でしぶしぶ了承したってわけ。そしておれはゆくゆくはその人の右腕になれるようにここに放り込まれた、ってな事をきれいな言葉づかいで説明した。



「そっかぁ、じゃあ、期待されてるって事だ」

と理央は言うが、俺は叔父のお眼鏡に叶ったんだろうか?色々調べた上での処置だろうけど。

正直叔父も従兄弟もどんな人か知らないし、写真すら家にはなかった。その話をすると母さんの機嫌が悪くなるからしないようにしてたし。俺がここに来たのは親父もそうだけど、なにより大好きな爺ちゃんのお願いだったからだ。母方の爺ちゃんはたまにふらっと我が家にお土産を持って(だいたいおいしいもの!)やってきて夕飯を食べて帰っていく。俺と妹の話を真剣にときには笑いながら聞いてくれた。幼稚園の時のおできでいじめられ事件も聞いてくれた。そして慰め、励ましてくれた。両親以外におできの存在を知っている唯一の人でもあるのだ。妹にさえ教えなかった。そんな爺ちゃんに叔父の力になってやってはくれないか、なんて言われたら断れないよ。高校が推薦で決まっていてもね。(公立TOPの進学校だったんだぞ)



「事情はわかった。真尋の叔父とやらの会社はどこなんだ?」

「それがわからないんだ。聞いても そんなのしらなくてたいい! って感じで」

「そうか、まあ桐生に入れるくらいだから文句ないところなんだろうな。で、さっきの大変って話に戻るけど」

と拓巳は話しだした。


ここは隔離された男子校ってことでゲイやバイが結構いるってこと。かっこいい人や可愛らしい人は性の対称になるということ。それから生徒会について。生徒会役員選出は抱かれたい、または抱きたいの人気投票で決まること。そんな人たちには親衛隊という役員をお守りする立場なのに独占欲丸出しの厄介な集団があること。親衛隊持ちの人に話しかけられたりしただけで校舎裏に呼び出されたり、ひどい時にはリンチという名の制裁を受けるということ、などなど。




普通じゃねーなぁ・・・

あれ、ちょっと待てよ、前におわしますおニ方。かっこいいし、可愛いよね。んん?

「あのー、理央と拓巳は親衛隊あるの?」

「「あるよ」」

「!」

だめじゃん、俺あしたリンチ決定。

「大丈夫だよ、2つともそんなに大きな規模じゃないし、僕らのところはほのぼのしてるんだよ。友達みたいな感じ」

「それに真尋にも出来るんじゃないか?親衛隊」

「はあ?何言ってるんだよ冗談きついよ」

こんな庶民歴15年の俺に親衛隊なんて・・・あったら面倒そうだ」

「冗談じゃないんだけどね」

「ねぇ」

「いやいや、ない。ないよ。それよりもうそろそろ行かないか?飲み物も無くなったし」

真尋はほうじ茶、理央はミルクティー、拓巳は酒、じゃなくてルイボスティーを飲んでいたんだけど、その頃にはもうほとんどの生徒がいなくなっていた。

その後まっすぐ部屋に戻って明日の用意をし、母さんに文字を打ち、部屋風呂に入り(理央がでかい風呂に入りに行こうと騒いていたが疲れたをいい通した)、ベッドに入った。


明日からどんな生活が待っているのやら。



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