入寮の儀式2
は――――、先が思いやられるな。
実は俺には秘密がある。いや、秘密にしたい。
俺は小さな頃から整った顔をした子だった。今もそこそこまともであると思う。勉強も運動もそこそこできて学級委員長や生徒会長、サッカー部部長、委員会会長と長のつくものは勝手に自分にまわってきた。また、それらをこなしてしまうので、先生からもみんなからも頼りにされていた。君嶋にまかせておけば大丈夫的な空気だったわけだ。そんな俺には不似合いな、そう、あってはならないものが俺の左ケツにある。直径3cmくらいのできものだ。こんもりと盛り上がり、どす赤い色をしている。俺が成長するにつれ、できものも成長し、今ではたぶん8cmくらいになっている。ふにふにとやわらかいが座るのは苦にならない。親も手術で取ろうとしてくれたけど根が深いらしく、様子を見ましょうとこの歳まできてしまった。
幼稚園の水遊びの時、水着に着替えてたらいわれたのだ。
「まひろくんのおしりきもちわるいのついてるよ!」
「うわ、ほんとだ!なにこれ?」
「ちがうよ、うんこだろ!ふいてこなかったんだろ!」
「うわーきたねー、こっちくんなー」
しばらくの間みんな遊んでくれなかった。自分では見えないのであまり気にもしていなかったが仲がいい子らにまでひどく言われたのでだいぶ傷ついた。それから俺は水泳の時間はもちろん細心の注意を払って人前でパンツを脱がないようにしているのだ。
温泉大好きなのにな・・・
しかたない、3年間部屋のシャワーで我慢するか。そうそう、俺は本来わりとくだけた話し方をするんだけど長のつく仕事をやってるうちにきれいな話し方の方がみんな色々動いてくれるから自然とこうなってしまった。
いや、腹黒ってわけじゃなくて。
でも悪いことばかりじゃない。ここはこれからの日本を背負って立つようなサラブレッドたちが通う学校だ。政治経済から財閥、大企業、はたまた芸能界の子息までこぞって入るらしい。なんでも半端ないセキュリティーで誘拐や巻き込まれ犯罪などの心配がないそうだ。そんな凄い子達がいるって事は、
俺、目立たないよね。
いままでは結構有名で、わりと優等生っぽくしてたけど、ここじゃ好きにだらだらできるってことだ。うん、悪くない。地元一番の進学校の推薦もらってたから、ここに入れって言われたときだいぶ嫌だったんだけど。
気分が上がってきた俺は鼻歌なんか歌いながら荷解きをした。
「・・・・ひろくん・・・真尋くん」
ん、と。あ、寝ちゃったんだな。
「はーい、いまあける」
時計を見ると18時の少し前だった。
「おまたせ。少しうとうとしちゃった、顔洗ってくる」
と、ドアをあければ、同室者の理央が残念な顔をして立っていた。あれ?おれ、なんかしたかな?まあいいや、顔洗ってさっさと飯食いに行こう。
「ちょっと拓巳、どうなのあれ?さっきの落ち着き払った真尋はどこいったの?」
「あー、初見だと抱きたいと抱かれたいと半々って踏んだんだけど。威圧するようなオーラが出ていたし大丈夫だと思ったんだが。」
「だぁーめだよ、『しちゃった』とか言いながら、見た?あの色気。」
「さっきは無かったから寝起きが危ないのか?今の感じじゃ抱きたいの方が7割だな」
「外部生だしなー、気をつけてあげないとね」
という理央と拓巳の会話は真尋には聞こえなかった。