<9>奴隷 保護 制度
モモと2人で酒場のドアをくぐる
「うぃっす。買って来たぜ、マスター」
「おん? なんだ、ずいぶんとゆっくりした買い物じゃねぇか。逃げたのかと思ったぜ?」
カウンターの奥で包丁を握っていたマスターが、ニヤリとした視線を向けてくれた。
俺の後ろに隠れるモモを流し見て、マスターが肩をふるわせる。
「おまえさんらしいな」
「だろ? この世界で、いや俺の世界も含めても1番可愛い子に出会ったぜ」
もうね、このおっぱいとかマジやばいっしょ!?
この子、俺の奴隷なんだぜ?
俺の奴隷、……くふふふ。
「くはははははっ。やっぱ、おまえさんは俺の見込み通りだな」
「ご主人様、そう言われると、恥ずかしいです……」
俺の裾を小さく引いて、モモが顔を赤らめていた。
やっぱ彼女を買って良かった。本当にそう思う。
「それでなんだが、マスター。悪いんだけど、飯作ってくれねぇ? 2人分」
「おん? 奴隷用じゃなくて普通の飯ってことだな? 良いぜ待ってろ。まかない程度ならすぐ出してやる」
「わるいな、開店前なのに」
「良いってことよ。おまえさんには早いとこ酒を持ってきてもらわなきゃ破産だからな」
くははは、と笑いながら、何やら作業をはじめてくれた。
「マスターと話があるんだ。モモは先にあそこの席に座って待っててくれるか?」
「お話、ですか? わかりました。お待ちしてますね」
1回、2回、と俺の方を振り返りながら、モモが窓際の4人席に腰掛けてくれる。
落ち着かないのか、席に着いてからもキョロキョロと周囲に視線を向けていた。
そんな可愛らしいモモから視線を外して、カウンターに腰掛ける。
「なぁ、マスター。奴隷保護制度、って何だ? どこまで命令していい?」
「おん? なんだ藪から棒に。そりゃおめー、あの子次第だろうよ」
チラリとモモに視線を向けると、両手を股の間に挟んで、足をバタバタさせていた。
仕草は可愛いし、つぶれながらも揺れるおっぱいがやべえ。
「モモを買う時に聞いたんだ。扱いがひどい場合は、契約を解消させられることがある、ってな」
しかもあれだ。
耳に付けた小さなピアスに付属している魔法で、瞬時に通報が出来るらしい。
ちなみに、ピアスを取り外した場合は、すぐに警備隊――警官のような人たちが飛んでくるんだとか。
日本よりハイテクじゃね?
「そりゃおめー。常識の範囲を越えたらだろ? おまえさんなら大丈夫だと思うぜ?」
「いやいや、その常識を教えてもらうために奴隷を買ったの忘れてんのか?」
「なに、心配ねぇよ。おまえさんのことだ。どうせエッチな命令がしたいんだろ?」
「わっ、バカ、声がでけえよ!!」
マスターの口を抑えながら、モモの方を振り返る。
「この机、冷たくて気持ち良いです」
彼女は机に上半身を乗せて、頬をむにむにと押しつけていた。
なにそれ、可愛い!
そんでもって、机と体にはさまれたおっぱいがエロ可愛い。
やばいだろ、それ!
「なぁ、マスター……。俺はなぜ机じゃないんだろう……?」
「…………は?」
俺は今、あの机になりたい。なぜ俺は机に産まれなかったんだ!!
くそっ! 悔やんでも悔やみきれねぇ!!
……いや、まて。
あんな感じで、体の上に乗ってもらうのはどうだろうか?
ブリッジで机になって、その上に!!
命令するか? 俺を机にしろ、……って、そうじゃなくて!!
「モモが嫌がったら、俺の奴隷じゃなくなるんだろ?」
「そういうことだな。だが、普通は店になんて帰りたがらねぇ。よっぽどじゃなきゃな」
だから、そのよっぽど、ってどのレベルだよ?
普通に達成しそうで怖いぞ? マジで。
例えば今の机の命令だが、よっぽどになるのか?
……なりそうな気がするよな?
さすがに変態すぎるよな?
うむ、わからん……。
「清く正しいお付き合いから始めればいい。そんな感じか?」
「おー、まぁ……、そうだな。それなら間違いはねぇ」
「そうか……」
つまり、エロい命令はしばらくお預けか。
「わかった。サンキュー」
でもまぁ、一緒にいるだけでも幸せだもんな。
でもって、奴隷とご主人様の関係であることに間違いはない。
これからずっと一緒に暮らすんだ。
ゆっくりじっくり攻略していけばいいだろう。
「ただいま」
「はい! おかえりなさい!」
この笑顔と、素敵なおっぱいを見ているだけでも幸せだしな。
いずれは『ご主人様、触ってください』って言わせてやる!!
俺なしじゃ生きられない体にしてやるぜ!!
「ご主人様、どうかしたんですか? なんだかやる気に満ちてるように見えますよ?」
「あー、うん。まぁ、あれだ。モモを幸せにしなきゃな、って思ってたところだよ」
「えっと、その……。末永く、よろしくお願いします」
頬を赤らめたモモちゃん、超やばい。