表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/21

<3>男の戦いが始まる!

「おまえさんには、この世界の知識はない。身を守る武力もない。違うか?」


「……そうだな」


 思酒場のマスターが声をかけてくれるまでは、右も左もわからずに立ち尽くしていたんだ。


 もしそのときに、スリや暴漢に襲われでもしていたら、手も足も出なかったと思う。


 警察署の場所どころか、そんな組織があるのかすら知らないしな。


「奴隷ならおまえさんを守りながら、この街の常識も教えてくれる。戦闘を行える奴隷は高いが、普通の奴隷を買っても今のおまえさんよりははるかに強い」


「なるほどな。だから奴隷か……」


 素直に驚いた。


 まさか常識がないからと、奴隷の購入を勧められるとは思わなかった。


 奴隷に良いイメージなんて無いが、マスターの話を聞く限りじゃ、今の俺には必要不可欠に思えてくる。



 だが、そんな事よりもだ……。



「なっ、なぁ、マスター。この国には奴隷がいるんだな!? 女の子! 女の子の奴隷って、いるのか!?」


「ぉん? なんだ、突然目を輝かせやがって。いるぜ? 可愛いのも綺麗なのも」


「まじか!! 命令は? 命令は絶対か!?」


「おうよ。死ぬまで解放されない奴隷ならな」


 ……まじか。


 可愛い子が買えて、俺の命令は絶対!


 命令は、絶対!!!! くぅ――――!!!!!!!!!!


「何人でも買えるのか!?」


「何百人でも大丈夫だ」


 まじか!!!!


『おはよう、お兄ちゃん』から『今日は私の膝でお休みに成られますか?』まで、可愛い奴隷に囲まれた生活も可能じゃねぇか!!!!



 もしかしてここは天国なのか!?



 寝るときはむにむにの太ももに顔を挟んでもらうだろ?


 プルプルでふかふかな抱き枕として、右側に1人、左側に1人は必要だよな!?


 でもって、上から覆い被さってくれる子が最低限1人、いや2人は必須だ!!


 裸エプロンで朝食を作ってくれる子が1人いて、とてとてと優しく起こしに来てくれる子が――







「金さえあれば、だがな」








 …………。






「ぐふっ!!!!」





 そう、だよな……。世の中、金だよな……。


 やっぱ金だよなぁ……。


 ニートの俺に、奴隷を買う資格なんて無かったんや……。


 この世は、やっぱり、地獄や……。


 もう無理、生きてられない…………。




「くははは。そんな顔をすんなや。ところでだが、おまえさんはこの街に何をしに来たんだ?」


「何をって、そりゃもちろん、可愛くてエロい奴隷を買いに――」


 じゃないな。金儲けだったか……。


 ……金!!!!!!!!


「なっ、なぁマスター!! この前みたいに発泡酒を買ってくれねぇか? 1本で金色コイン1枚でどうだ? 今日はいっぱい持ってるから欲しいだけ言ってくれ!! 次に来るときは両手に段ボールを積み上げて持ってきてやるよ!!」


「くはははは。おうよ。俺はその言葉を待ってたんだぜ?」


 人好きのする顔で、マスターがニヤリと笑って見せた。




☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★




 それからすぐに、俺は奴隷商に向かった。


 金は、もちろんある。

 この世界はモンスターや隣国との戦争に明け暮れているため、戦闘に耐えれる奴隷の方が価値は高い。


 それ故に、可愛い奴隷は安い設定らしいのだが、それでも金色コイン100枚からが相場らしい。


 人間ひとりの価値が100万円から。

 高いのか安いのかも不明だが、今は己の欲望に従って目をつむる所存である。


 持ち込んだ本数なんて全然足りなかったが、他の店には売らないという契約で、先払いにしてもらった。 


 魔法の小切手とやらなので、スリへの対策バッチリだ。


 エロくて可愛い、俺の命令には逆らえない奴隷がそこにいて、ポケットには買えるだけの金がある。


「いっ、行くぜ……?」


 俺はゴクリと息を飲んで、店のドアに触れた。


 下半身のゲイボルグが、これまでにないほど荒ぶっている。

 激しい熱量が、腹の下に渦巻いている。


 ここからは、男の戦いだ!!


「おぉ、ようこそおいでくださいました。どのような奴隷をお探しでしょう?」


「はっ、はひっ! 小金貨200ま、まいで、かわっ、可愛い子を……」


「おや? 戦闘奴隷ではないのですね。これは珍しいお客さまです。どうぞ、こちらへ」


「ふひ!!」



 俺は張り裂けそうな心臓をおさえて、店主の後に続いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ