<14>ちょっとくらいなら、良いよね?
慌てて立ち上がったモモが、拾い集めていた官能小説をもちもちとしたおっぱいに押し当てながら身を縮める。
俺を見上げる瞳には、大粒の涙がたまっていた。
「ごめん、なさい……。見苦しい格好をしました……」
「いやいや、見苦しくなんてないよ。俺のことは気にしなくていいから」
「それに……。触ったらダメな本があるなんて知なくて……」
細くて小さい、消え入りそうな声だった。
モモが官能小説をぎゅっと胸に押し当てて、身を縮めている。
一番上にあった本は、やわらかい膨らみに埋もれているように見える。
「いやいやいやいや、そういうんじゃなくて! えっと、あれだ。……順番、そう順番! 最初は洗面所から掃除して欲しいんだ」
「洗面所、ですか? それってあのお水が出てくる魔法具、ですよね?」
「そうそう。魔力がこっちに入らないようにドアを締めて洗ってくれるか?」
「ドアをしめて、最初は洗面所から……。わかりました、頑張ります!!」
ごめんなさいでした、ともう1度頭をさげて、モモがスカートを揺らしながら洗面所へ駆けていく。
パタンとドアが閉まり、ジャーと水を流す音が聞こえ始めた。
「……罪悪感、半端ねぇ」
はぁ、と息を吐いて、荒れ放題な自分の部屋を見詰める。
大慌てでベッドの下に手を突っ込み、やばい表紙のお宝たちを引っ張り出した。
まとめて机の引き出しに押し込んで、ガチャリと鍵をかける。
そんでもって偽造のために、清く正しい本をベッドの下に滑らせておく。
「ご主人様。洗面所のお掃除、終わりました」
「う、うん。お疲れ様、俺もギリギリ終わった」
「んん??」
間一髪でした。
巨乳の写真集なんて絶対に見せられねぇよな。
逆に貧乳の写真集を見られても、あらぬ誤解を生みそうだ。
ホッと息を吐いてベッドに腰掛ける。
「今日は色々あって疲れたからさ。ちょっとだけ横になるよ。モモも疲れたら休んで良いからね」
「はい、ありがとうございます。私がんばりますね」
「うん、よろしく」
可愛らしく気合いを入れた彼女の胸が、ちいさく揺れていた。
そんな姿を横目に見ながら、俺はベッドに倒れ込む。
「ふん、ふふふん♪」
多分無意識なんだろうけど、モモの口から可愛らしい歌声が聞こえてくる。
たった1人で住んでいた俺の部屋に、可愛らしい女の子がいる。
しかも、甲斐甲斐しく掃除をしてくれているだなんて、すげー奇跡だと思う。
なんて幸せなんだろうか。
それもこれも、あの素晴らしい世界に行けたからだろう。
モモ、最高。異世界最高。
なんて、ぼんやりとまどろみながら音を探して、寝返りをうつ。
「っぁっ……!!」
そして俺は、太平洋よりも深く後悔した。
「んゅ……? ご主人様、どうかしましたか?」
「いっ、いや、何でもない。うん、何でもない」
なんと言うべきか、ベッドの高さが悪い。
寝転がって横を向くと、ちょうど良い高さにモモのおっぱいがある。
本を拾い集めながらぞうきんで床を拭く彼女は、当たり前のように前傾姿勢だ。
楽しそうなモモの微笑みの少し下に、大きく揺れる谷間が見える。
彼女が雑巾を持った右手を左にずらすと、谷間もつぶれなから左にずれる。
彼女が手を右に戻すと、つぶれていた谷間が、たゆんたゆんと元の位置に戻ってくる。
でもって、服からこぼれるくらい大きく揺れている。
しかもモモは、すけーかわいい笑顔なんだ。
どう考えでも、俺を誘惑しているとしか思えない。
『吸い付くような手触りのおっぱいです……。触りたく、ないですか?』
間違いなくそう言っている!
そんなん、触りたいに決まってんだろ!!
おまえとずっと一緒にいたいから我慢してんだよ!!!!
……でも、ちょっとくらいなら、いいよね?
おっぱいはさすがにダメだろうけど、ちょっとくらいなら命令しても、良いよね……?
だって、モモは俺の奴隷だもんね? 命令は絶対だからね!!
俺はグッと布団を握りしめて、ゴクリとツバを飲んだ。
「なっ、なぁ、モモ」
「んん?? どうかしましたか、ご主人様?」
なんて言うべきか……。
わかりやすく言ってみるか?
「……なめて、くれないか?」
「なめる……? 何をですか??」
床にペタンとお尻を付けたモモが、くりくりとした瞳で俺を見上げてくる。
「それはもちろん……!」
俺はガバリと布団をめくって、どっしりとベッドの縁に腰掛けた。




