<13>後で隠しておきます
そのまま彼女の手を口元に引き寄せて、柔らかい指先に、チュッと口付けをしたくなる。
湧き上がる己の欲求をグッとおさえて、俺はモモの顔をのぞき込んだ。
「ごめんね。痛くない?」
「はっ、はい。大丈夫です……」
頬を赤く染めた彼女が、恥ずかしそうに視線をそらす。
その仕草に心まで温められながら、俺は小さくステータスとつぶやいた。
――――――――――――
六吏 司 (むつり つかさ)
レベル : 1
職業 : なし
スキル : 異世界のとびら
仲間 : モモ(奴隷)
――――――――――――
再使用までの時間が消えていて、仲間にモモの名前が追加されている。
良し、炸裂しろ、俺のスキル!
彼女と一緒に日本に行って、いちゃいちゃしたいんだ!!
このもちもちでエロかわいい彼女と、いちゃいちゃしたいんだよ!
一緒に行かせてくれ!!
「異世界のとびら」
必死に祈りながら、そうつぶやいた。
気が付くと、あのときと同じような“黒い球”が浮かび上がって、風が俺たちの周囲を吹き付けて行く。
来るときは感じなかった風の強さに、目を開けていられない。
「きゃっ……!」
小さな悲鳴が聞こえるけど、彼女の姿を見ることは出来そうもなかった。
だけど、ぎゅっとつないだ指先からは、柔らかくて頬ずりしたくなる手の感触が伝わってくる。
行きよりも長かっただろうか?
体全体に感じていた風がなくなり、うっすらと周囲が見えてくる。
目の前にあったのは、パチリと開いた大きな瞳。
つつきたくなるやわらかい頬に、重ねたくなる唇。
「えっと、ここは……? さっきまでいた、お肉のお店はどこですか……??」
いつの間にか吐息が届きそうな距離にまで近付いたモモが、キョトンと首を傾げていた。
風で服がずれてしまったのか、甘噛みしたくなる肩が丸出しだ。
肩を噛むのは、……ダメだよな?
うん、知ってる。わかってる。大丈夫だ。
そんな彼女の背後に見えるのは、見慣れたアパートの部屋。
「ここは俺の家だよ。そんでもって、今日からはモモの家でもあるね」
「わたしの……?」
「そう。寝起きして、帰ってくる場所だね」
積み上げられた小説に、本棚からはみ出した漫画たち。
ベッドの下からはみ出しているエロ本と、パソコン周りに積み上げられたエロゲー。
……あとで隠しておこうと思う。
「ステータス」
――――――――――――
スキル : 異世界のとびら
(再使用まで1時間58分)
――――――――――――
どうやらこっちの世界でも同じ時間で良さそうだ。
でもまぁ、せっかくならゆっくりしたいよな。
向こうじゃ寝る場所もないし、発泡酒を買うのも明日で良いだろ。
「今後、どうするか何だけど……」
あー……、まずは部屋の説明からかな?
机代わりのコタツとベッド、パソコンくらいしかないから、説明なんてあってないようなものだけどさ。
モモはどこに座って良いのかもわからずにキロキロしてるし、紹介くらいは必要かな。
「狭い家だから部屋ってここしかなくて、そこがお湯を沸かすくらいにしか使ってないキッチン。で、あとはお風呂場だね」
ガチャリとドアを開いて見せる。
ガスコンロに火をつけて、消して、空っぽの冷蔵庫もすべて開けて見せた。
「すっ、すごいです! どれもキレイで素敵な魔法具ばっかりです! 壁とか床とかも、なんかこう、すごいです!!」
「ふふっ、そうかな? まぁ、ここじゃ一般的な感じだけどね」
マスターの酒場を見て、そのレトロな感じに感動したけど、向こうから見たらそう見えるのか。
年相応な感じで目をキラキラさせてるし、あとは好きに見てもらった方が早いかな。
「それじゃぁ、モモは――」
「お片付け、ですね? 頑張ります!」
ぎゅっ、と手を握ったモモの胸が、大きく揺れていた。
なぜか彼女の瞳が輝いている。
「本なんて高級品だもんね。丁寧にがんばらなきゃ」
そう小さくつぶやいて、モモは落ちていた小説を拾い上げた。
タイトルは『貧乳のキミとおっぱいが嫌いな僕』
「ご主人様は本が好きなんですね。すっごく高いって聞くんですが、いっぱい持っててすごいです」
もう一冊手に取った。
タイトルは「6人の姉と8人の妹たち。全員の太ももを抱きしめて2」
続けて持ち上げたのは「団地妻は幼女な養女と絡み合う(新装版)」
軽く肘を曲げて、左手とふっくらとしたおっぱいで支えるように、小説を積み上げていく。
「ん? ベッドの下にも本が――」
「わわぁあああああああ!!!!」
「ひゃっ……!!」
伸ばしかけていた手が、びっくりしたように引っ込んだ。
四つん這いになっていたモモが、やわらかそうなお尻を俺の方に突き出している。
顔をうずめたくなるような太ももが、お尻で持ち上げられたスカートからはだけていた。
パンツはいつものようにギリギリだ。
「ふゃっ……!!」
どうやら自分で気が付いたらしい。
彼女の手がスカートの裾を手で隠す。
俺を見上げていた大きな瞳に、うっすらと涙が浮かんでいた。




