表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪異の掃除人  作者: 長埜 恵
第1章 円を描く小指
17/95

15 あなたに

 ここで死ぬのだと思った。

 明確な殺意を持って僕らに迫る怪異に、それでもなお抗う方法など、見当たらなかった。

 だから、僕がどうしてこの時、その一言を発することができたのか。

 それは、未だにわからない。



「松留久作さん」



 ――小指の集合体は、僕の喉元スレスレで、動きをピタリと止めた。


「あなたが住んでいた場所に、行ってきました」


 そう、その名は、今やおぞましく変わり果ててしまった彼が、かつて呼ばれていた名前。


「みんな、心配してました。勝蔵さんも、道吉さんも、久作さんに、会いたいと」


 指が、迷い悩むように僕の目の前で蠢いた。


「だから、久作さん……!」


 しかし次の瞬間、僕の首に指が食い込んだ。

 ――いや、食い込む寸前で、僕の右耳を掠め真っ黒な腕が伸びた。その腕の先には、スタンガン。


「続きは、痺れながら聞いてくれ」


 右腕を指でできた触手の内側にねじ込む。バチリという激しい音と焦げ臭い匂いが辺りに満ちた。曽根崎さんは、今度こそ、指の塊――久作さんに、電撃を食らわせることに成功したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化情報】
怪異の掃除人・曽根崎慎司の事件ファイル(宝島社文庫)
表紙絵
小説家になろう 勝手にランキング
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ