血烈戦争
まあ、それはいいとして宝物庫にもう一つ気になっていたものがあった。それは、(エターニィティーブラッド)というアイテムである。その説明文が、
飲んだ時点で成長が止まり、吸血鬼の力によりその状態で止まる。
とても、興味深いアイテムだ。
昔、吸血鬼のダンジョンがあったとは、水晶から聞いたが詳しくは聞いてなかった。だから、今のうちに聞いておこうと思ったのだ。
「わかりました。これまでの記録に残っているものを読み上げます。昔、昔、ダンジョンマスターの中に入は、三帝と呼ばれる現時点でいう獣=(猫)、龍=(竜)、恐怖=(デュラハン)のような、強き存在がいた。それが、血=(吸血鬼)、空=(竜)、太陽=(トンボ)であった。」
「トンボ?えっ?弱そうだな!」
「いいえ。竜よりも大きく、そして物理攻撃はほぼ効かず、偉大なる魔法をたくさん用いその上、称号のおかげで太陽が昇っている間は無敵でした。森の王とも呼ばれており、昔はこの島の大半は森でしたから、最強とも呼ばれていました。そして、森以外を支配していたのが吸血鬼でした。竜は、表には出てこず閉じこもっていました。」
「吸血鬼は、不満だった。」
「俺こそが、王なのだと。一番なのだと。」
「なぜ、あんな虫やろうが森の王なんかをやってるんだ。許さん。と。」
「もともと、吸血鬼は血を飲むと興奮して狂気化して戦闘狂になる性質を持っています。そのせいか、過激な考え方を持つものが多かったのです。吸血鬼は、仲間を増やしていきました。屈強な身体を持った血を吸わないと生きれないバンパニアを始め、沢山の仲間を持ちました。」
「そんな時でした。ある事件が起こったのです。」
「それはブラッドムーンの日でした。。ブラッドムーンは、血を吸って生きるものが強くなる日で昔は10年に一度このブラッドムーンの日がありました。」
「ブラッドムーン?」
「ブラッドムーンは、月に魔力が溜まりすぎるために一気に放出するという現象でその時に赤く発光します。その色は血のように赤黒く無気味な様子でした。しかし、血を吸うものにはその魔力を吸収することができたのです。他の魔物は無理でしたが血を吸う者だけが強くなったのです。この時が、チャンスとばかりに森の王の元に吸血鬼の軍団は攻め入りました。そして、あっという間に森を征服してしまったのです。しかし、吸血鬼の野望はそれで収まりませんでした。世界を征服しようとしたのです。そして、世界を荒らし始めました。」
「それを見かねたのが、神々でした。」
「まず、人間を生み出す豊神は人間の国、今のグルモン皇国に結界を作り吸血鬼が入ってきたら瞬殺できるように対処しました。」
「次に、ダンジョンマスターを生み出す魔神は昔は一つしかなかった竜のダンジョンを増やし吸血鬼に対抗できるようにしました。」
「しかし、それでも吸血鬼たちは強かったのです。もともと最強の種族のうちの一つがさらに強くなっているのですから。そして、竜たちがどうしても勝てない理由がありました。それは、元素妖精です。当時、竜には火が、吸血鬼には水が、トンボには風の妖精がそれぞれの陣地にいました。そして、その元素妖精は火は風に強く、水は火に強く、風は水に強いという傾向がありました。そのため、竜に対して吸血鬼は有利属性の妖精だったのです。風の妖精は、トンボがなくなった時点で結界をはり閉じこもってしまったためいなかったのです。」
「このため、竜と吸血鬼が戦っても最終的には吸血鬼が勝ってしまうと考えられました。」
「また、50階層以上になると一体生まれるダンジョンの要とも呼ばれるモンスター。
《契約の魔物》である真祖ヴァンパイアは不死の属性を持っているため、一番強いモンスターは死なず、戦えば戦うほど吸血鬼が有利になっていきました。」
「そこで、魔神は竜の称号の空を消して龍の称号を授けたのです。それは、今まで生み出したすべてのドラゴンを消滅させる代わりにエンシェントドラゴンを3日間生み出すというものでした。」
「エンシェントドラゴンは、圧倒的なステータスを持ち、相手のすべての属性を打ち消すことができる能力を持った世界最高級のモンスターです。」
「魔神は、龍が倒してくれることを信じて称号を授けたのです。」
「しかし、吸血鬼の防御は固く、それでも吸血鬼を蹴散らし城までたどり着いたのは3日目の夕方でした、夜の強い吸血鬼は昼の間は城にこもっていたのです。そうして、吸血鬼とエンシェントドラゴンは闘いを繰り広げました。
いくつもの山を消し、クレーターを開け、そしてついにエンシェントドラゴンが瀕死の吸血鬼を何者をも殺すブレス(デットキラーエクスパイアー)を放った。そして、ようやく倒せた。
やっと倒すことができた。
と誰もが思った。
しかし、吸血鬼は生きていた。
たしかに真祖ヴァンパイアは死んだ。
しかし、ダンジョンマスターは死ななかった。
なぜか?
それは水の妖精がかばったからだった。」
「そして、エンシェントドラゴンは消滅した。」
「世界は、絶望した。」
「この世界は滅亡するのだと。」
「だが、そうはならなかった。吸血鬼は、一週間後に自殺で亡くなったからだった。なぜだろうか?」
「その答えを誰も知ることはなかった。」
「こうして、この戦いは幕を閉じたのです。」
なぜ、死んだのだろうか?
必死に生きようとしていたのではなかったのか?
「この戦いが、もたらした影響は計り知れなく人間側もダンジョンマスター側も大変な損害を被り大きな爪痕を残しました。そして、この戦いは血烈戦争と呼ばれるようになります。しかし、この話には続きがあるのです。」