ロズの過去(前半)
ロズ視点です。
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私は、訳あって冒険者ギルド職員をやっている。
というのも、、ダンジョンを潜るにはパーティを組まなければいけない。そして、私も昔はパーティを組んでダンジョンに挑んでいた。あの頃は、本当に若かった。どんなことでも、果敢に挑戦し充実した時間を過ごせていたように思う。その時は、こんなことになるとは思いもしなかった。
ある日、ダンジョンにいつものように潜っていると宝箱がある部屋があった。ラッキーと思ったのは私だけではなかっただろう。そう、その日は盗人のルシフが調子が悪かった。いつもなら、罠だとルシフなら気がついただろう。だが、あの日は違った。
そして、宝箱が罠だと気付かずにあの部屋に入ってしまったのだった。そして、入り口が閉まってしまった。だが、私だけ離れていた。というのも、あまりないが途中で襲われて誰かにとられてしまうことが無いように見張りとしてたまたま入り口の外にいたのだった。そして、悲鳴だけが聞こえてきた。
私は、信じられなくてずっとその前にいた。だが、前にも後にもその悲鳴以外の音は聞こえなかった。
そして、入り口が開いた。
そこには、誰もいなかった。
「ひっ。」
そのまま、私は座り込んでしまった。
私はもしかしたら、ギルドに戻っているかもしれない、と気を持ち直してなんとかギルドに戻ったが帰っていないとのことだった。
それからは、ふさぎ込んでしまった。
確かに、冒険者は危険と隣り合わせだしいつ死ぬかもしれないということはわかっていた。
いや、分かっているつもりだった。
だが、まさか自分のパーティのメンバーが死んで自分だけ生き残るとは思わなかった。
自分を責めた。
いっそのこと死のうかと思った。
でも、そんな時にギルド支部長がギルド職員をやらないかと声をかけてくださった。
おかげ様で、こうして暮らしていけている。
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今日も、初々しい冒険者をサポートしてあげるか。
っと、気合いを入れる。初めて冒険者をやる人は大抵ウキウキしていて希望に満ち溢れている。そして、失敗することが多いのだ。
ギルドから出てきたのは、16歳ぐらいの男の子だった。そして、いきなりびっくりしていた。
たしかに、私は小さくて幼い顔だちだが23歳にもうなっている。まあ、びっくりされるのはいつものことだ。あまり、気にしていない。
すると、すごい申し訳なさそうな顔をしてきた。
こっちが、傷つくからやめてほしいものだ。
まあ、優しいのはいいことだ。
でも、そんな子こそ命を落としやすい。
初心者ダンジョンでも舐めてかかったら、あっさり死んでしまう。私が守ってやらないと。
と、その時は私は思ってしまっていた。
「あれが、モンスターよ。試しに倒してみて。」
緑色の醜い人のような形をしているモンスターがゴブリンだ。この、始まりのダンジョンは比較的簡単と言われている理由はモンスターの中で最弱とも言われるゴブリンが最後のダンジョンつまり、50階層まで出てくるからだ。だが、一番弱いからといって侮ってはいけない。ずる賢いから死んだふりなどをして冒険者が近づいたところに急に剣を突き刺してくることがある。十分気をつけないというと。
「ファイアボール」
あれでも、死んでいないのか?
とサキトが聞いてくる。頭が吹っ飛び、体が真っ黒に焦げたゴブリンがいた。えっ!?ファイアボールってこんなに強かったっけ?まあ、術士の力が強ければ強いほど初級魔法でも強くなる。それに、力をこめれば初心者でも強くなる。まあ、たまたまだろう。
だが、しっかりゴブリンに1発で当てれるのは素晴らしい。
初心者はまず動くモンスターに魔法を当てることができない。それが、できる時点で才能があるのだろう。
次々とモンスターを倒していき、10階層まで来た。
私がいなくてもいいぐらいというか、本当に何もしていない。強いのもあるのだろう。だが、なによりも足が速いのだ。こちらがついていくので、精一杯だ。
普通、魔法師は足が遅いのではないのか?
彼といると、普通の感覚を失いそうになる。
ダンジョンは、断じてこんなに早くいけるものではない。
13階層は、岩がたくさん並べてあり隠れる場所がたくさんある。そのため、慎重に進んでいくのが普通だ。奇襲や不意打ちを警戒するためだ。とても、神経を使う。その上、ゴブリンメイジが岩の陰から魔法を打ってくる。こちらが、攻撃しようとした時にはもう岩に隠れていて、反撃ができない。とても厄介な場所だ。ふつうなら
だが、彼は相手が打つ前にもう倒しているから攻撃がこちらに来ることはない。そして、岩に隠れている奴も岩を軽々、飛び越えてその瞬間に魔法を打ち一瞬にして倒していく。
はっきり言って、初心者じゃない。強すぎる。
そして、本当に思う。こんなに、魔法師が運動ができていいのか?あの、ひょろっとした体のどこに筋肉があるのだろう。
そもそもゴブリンナイトは「ファイアアロー」一発で倒せるような相手ではない。だが、急所である眉間を岩の上を飛んでいる一瞬で撃ち抜いているから。一発で倒れるのだ。これは、誰にでもできることじゃない。よっぽどの達人でないとできない。
(変身した時に、魔法を打つ感覚までコピーしたためアキトは達人レベルに魔法を操ることができていた。また、前世の感覚があるためある程度はうまく操ることができる。しかしもし、素人に変身していたら下手な技術をコピーして苦労しただろう。)
そして、私たちは20階層にまできてしまった。
その間、私は何も出来なかった。
これでは、単なるお荷物ではないか?
たしかに、達人レベルまでいっている腕を彼は持っているかもしれない。
だが仮にも、私はBランク冒険者だぞ。
じっと見ているだけで、ついていっているだけでいいのか?
いやいけない。なんとかして、Bランクの矜持を保ちたい!
またしても、休憩しなくていいそうだ。
私は、この段階で やっと彼を見守ると思うことがいかに間違いだったのか気づいた。
21階層に入るとバイソンの群れがやってきた。
彼は、広範囲魔法が使えないようだ。よし、チャンスだ!今こそ、B級だと言うことを見せつけるべきときだ。
《ブレイジングラウンジ》
よし、倒せた。ふと、彼を見ると感心した顔をしている。私だってやるときはやるんだから!
というか、あなたの方がすごいよね?
まあ、役立つことができたから良かった。
そう、思って調子に乗っていたのが悪かったのだろう。