開かずの宝箱
10階層にまで到達した。どうやら、始まりのダンジョンはとても簡単なようでゴブリンやボアしかいない。
ファイアボールとファイアアローだけでどんどん突破できる。全部で50階層らしいので五分の1クリアしたことになる。
「もう少しいけそうなら行こうか。ここからは、トラップもあるけど油断しなかったら君ならいけるはずだよ。」
ダンジョンは、10階層ごとにリスポーンできる地点がある。だから、帰らないかどうかの確認として質問されたようだ。
「まだまだ、いけます。」
転移の渦に飛び込むと、ゴブリンがまた現れる。
どうやら、今度は魔法を当てるゴブリンのようだ。
確か、ゴブリンメイジだったはずだ。
だが、そんなもの関係ない。
「ファイアアロー」
「ファイアアロー」
「ファイアアロー」
「ファイアアロー」
「ファイアアロー」
先に処理してしまえば、あとは雑魚のゴブリンが残るだけだ。
それからも、「ファイアアロー」×10をすればどんどん倒れていく。正直、ロズさんがいらないくらいだ。
「ねえ。休憩しなくてもいいの?」
「はい、まだまだいけます。」
20階層をクリアできた。
21階層にやってくると、何か牛のようなものがこちらに向かってくる。
どうやらバイソンの群れのようだ。当たったらひとたまりもないだろう。
俺には、範囲魔法が少ない。
魔法剣士や偏った魔法師にしかなったことがないからだろう。幸い爆発が使える。
使おうと思ったところ、ロズさんが駆けていく。
《ブレイジングラウンジ》
これは、剣士が多数を相手するために生み出された必殺技の一つで周りの敵を一掃することができるらしい。
一気に、10匹以上のバイソンが倒れていく。
…すごい。…すごすぎる。
呆然としてしまった。
たしかに、Bランクと言われるだけある。
「私だってやるときはやるんだからね。それに、油断しちゃダメよ。」と微笑む。
もう少し、階層を下っていきボスのオークを倒すと
転移の渦が見えその後ろに大きな宝箱が見えた。
今まで、宝箱は何回か見つけてきたが銅貨や銅硬貨や小さな魔石しか入っていなかった。
それに、今回のは大きい。
これは期待できそうだ。
宝箱の前まで、走っていくと
「待って!そこに行っちゃだめ!」
と追いかけてくる。
そして、俺を引き留めようとロズさんが走ってきた瞬間宝箱がある部屋の入り口がガチャンとしまった。
そう、2人は閉じ込められてしまったのだ。
「えっ!?」
「ここは、[開かずの宝箱]っていって宝箱の前までやってきた冒険者を閉じ込めてモンスターで殺すトラップ部屋よ。勇者でやっと止めることのできるモンスターがいっぱい出てくるの。もうダメだわ。
ああっ、ほらきたよ。最悪だ。」
見ると、オークが8体にトロールが1体いる。
「ファイアウォール」
「ファイアウォール」
「ファイアウォール」
「ファイアウォール」
自分の四面を囲んで配置する。
ウォール系の魔法は、モンスターを足止めするためのスキルである。そして、それにも種類が分かれていて突進などの攻撃はウォーターウォール、魔法などの攻撃はウィンドウォールで受け止める。
では、ファイアウォールはどうやって使うのか。
相手に攻撃を与えるためである。
それも、高火力で。
そのため、持続時間が3つのうちで一番短いがオークなどでも倒すことができる。
ふうこれで、一安心だ。
効果時間が切れれば、もう一回構築すればいいだけだ。そのうち、倒せるだろう。
しかし、心を読んだようにロズさんは言ってくる。
「無理よ。オークは、倒しても倒しても現れるの。トロールを倒さないと。トロールを倒さないとこのポップは止まらない。だから、ファイアウォールを解除して。それで、私がなんとかして食い止めるわ!その間にあなただけでも逃げて。」
「えっ、そうなんですか。でも、俺だけ逃げるわけにはいかないから。だからもう少し考えましょう。それに扉は閉まってしまってるんで無理ですし。」
「そうね。じゃあ、あと何回ファイアウォール打てる?」
「えっ?うーんと20回ぐらいですかね。」
「MPきれないの?ファイアウォールはなかなかMPを使うはずじゃない。四面も貼ればMPの多い君でも限界があるんじゃないの?」
確かに、ファイアウォールはかなりMPを使う。
だが、俺にはMP回復上昇Ⅱがあるためファイアウォール四面分ぐらい効果時間中に回復できる。
「MP回復ができるんで大丈夫ですよ。それより、どうやってトロールを倒すか考えないと。」
「うっ…うん。そうね。といっても、ファイアウォールが貼ってある間は私は何もできないのだけれど。」
「トロールを一撃で倒すことってできますか?」
「それは、無理よ。トロールは、40階層のボスでパーティで行くのが推奨されてるほど強いのよ。それを私1人で倒すのは無理よ。ましてや、一撃なんて無理ね。」
「そうですか。」
トロールを倒す方法はある。それは爆発を使うことだ。
だが、あまり第五級魔法は相手の前で使いたくない。最終手段として使いたい。
幸い、トロールは賢いので自分からファイアウォールに飛び込んではこない。今のうちにいろいろ試しておこう。
まずは、ファイアウォールを動かすことができるか試してみよう。
ファイアーウォールと波動を組み合わせた感じをイメージして、動け!と心の中で祈る。
動かない。
動かない。
動かない。
だが、諦めない。
そして、遂にその時は来た。
何回も何回も試してみて、何枚もファイアウォールを張り替えるうちに数ミリ動いた。
その時、体に何かが湧き上がるような気がした。
何かと思うと、第三級魔法 対物波動 をゲットしていた。
へぇ、俺の身体でも成長できるんだ!ととても嬉しくなった。
それからも、何回も試しているうちについに部屋の端までファイアーウォールを動かせるようになった。だが、トロールに少しダメージを与えることができただけでまだまだ生きている。
そして、何度目かのオークが出てくる。そして、トロールももう一体増えた。
だが、問題ない。ファイアウォールをもう一度貼るとオークはいつも通り死ぬし、トロールは飛びこんではこない。
「よーし、まだまだいくぞ〜。」
「対物波動」
「対物波動」
「対物波動」
「対物波動」
四面一気に飛ばしていく。
「まだまだまだ〜」
続けて、「対物波動×4」する。
そうして、一体目のトロールが死んだ頃新たにスキルを手に入れた。
飛円壁【炎】
その時には、トロールはもう10体以上いたがスキルを習得したことによって格段にスピードが向上したおかげで一気に倒していける。
そして、ついに全部のトロールを倒した時部屋の入り口がガチャンと開く音がした。
「終わったのか?……………よっしゃーーーー!」
そう言って、そのまま倒れたのだった。