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この世界は救世主を待っている! ~最強を受け継いだ少年が至高に昇りつめるまで~  作者: ストレーナー
第三章 新たな縁 フォルセール攻防編

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第89話 オリュンポス由来!

[霧が出てきたか]


 先ほどから散発的に続く爆発の一つ、いや幾つかが堀の水を巻き上げでもしたのか、フォルセールの街はうっすらと霧がかかり始めていた。


[ジョーカー殿にも困ったものだ。いきなり外に出てどこかに行ってしまうとは、指揮官にあるまじき軽率さよ……しかしこの霧、所々に精霊力が混ざっているような……なにか妙だな]


 アンドラスはフクロウにそっくりな頭をくるりと一回転させて周囲の状況を確かめ、その後にフォルセール城を包む三つの城壁の最外、第三城壁を見上げる。


(敵の懐に入り込んだのは間違いない。だが今となっては袋の中に追い詰められたネズミとも感じられる)


 なぜそう感じたのかは分からない。


 自分たちと比べるも愚かしい、そう断言できるほどに力を持たぬ人間たち。


 その人間たちの拠点の一つに入り込んだとは言え、恐れるべき何物をも持たぬ虫けらたちに対してなぜこのような不安を感じるのか。


(第二城壁よりこちらに天使の力は感じぬ。オリュンポス十二神のアテーナーが入り込んでいるとは聞いたが、領境の森の一件からも分かるように奴らは相互不可侵の立場を未だ崩してはいない……では何なのだ、この胸にじわりと浮かび上がる不安は)


 アンドラスは現実を把握するべく翼が生えた背を丸めて考え込み、頭に浮かんだ疑問点をあえて口に出す。


[己の身に宿る力を頼みにして生きる我ら魔族。そしてその傾向がより顕著な魔神の中でも最上位の一人であるこのアンドラスともあろうものが、孤立してしまったくらいでそれほど気弱になるものか……?]


 さほど複雑に見えぬ街の作りの中で分断される味方たち。


 戦闘の痕跡はあれど、戦っている最中の味方が見えぬ不可解な状況。


 理解はおろか推測すらできぬ二つの不安要素から、アンドラスの精神は昂揚とも動揺ともつかぬ高ぶりを見せていた。


(いや……本当に人間たちと戦ったのか? 爆発だけなら遠くから狙い撃つだけでも十分だ。残滓は物質界の象徴たる固体には残りやすいが、宙に残る残滓を見ることは実際に魔術が放たれた瞬間を見るでもしない限りほぼ不可能……何ッ!?)


 先ほど通り過ぎた時は、確かに無人だったはずの脇道からわずかな空気の揺らぎを感じたアンドラスは、慌てて身を翻して物陰から振り下ろされた剣を避ける。


「外れちまったか」


「今ので死んでおけば苦しまずに死ねたものを、なのです」


 不思議な光と共に現れた、黒い肌を持つ二人の男女は、最上位魔神の一人であるアンドラスを見てもまるで恐れる様子を見せず、不敵に笑った。


[貴様ら……天使アルバトールが王都に潜入した時の子供たちだな? 確かリュファスとロザリーと言ったか]


「へぇ、王都でお前に会った時からかなり成長したのに分かってもらえるとはな」


「あの時は世話になったですね……」


 猛獣のような笑みを浮かべるリュファスと、暗い笑みを浮かべるロザリー。


(なんだ? あの光は)


 最上位魔神すら恐れる様子の無い二人を見たアンドラスは、二人を包む白銀の光の正体を見極めようと目をこらし、そして見開いた。


[なるほど、先の大戦で竜の素材より作られた新装備か]


「それだけじゃねえぜ」


 リュファスは剣を握った右手を目の前にかざす。


[まさか……金剛石アダマスか!]


「その通り。前に色々とあって、ゼウスの持ってた鎌の破片がテイレシアに幾つか残されたらしいんだが、それを一つ目の巨人キュクロープスに加工してもらった」


 密教で言う金剛杵こんごうしょ、あるいはゼウスの持つケラウノスに見た目がそっくりなリュファスの持つ光る剣は、弧を描いた四本の棒が球状にまとまった物がグリップの両端についており、その一方から伸びた光には周囲から絶えず新しい魔力が供給されていた。


「封魔装備やアダマスだけじゃないのですよ」


 自信たっぷりのロザリーの声を聞いたアンドラスは、その目に更に信じられないものを見る。


[バカな! なぜ海神ポセイドーンの三叉槍トリアイナを、貴様のようなエルフふぜいが持っている!]


「レプリカですよレプリカ。まぁ変なことに使おうとしてたみたいですから、ちょっと保釈金代わりに借りたですよ」


[……十二神はここで何をやっているのだ]


 予想もしなかった回答にアンドラスは絶句し、今の状況とまるで関係のないことを思わず口走る。


「母様によると、ずっと昔から性懲りもなくやってることを未だにやってるだけみたいですが」


[そうか]


 当然発した質問に対する解答の中に現状を打開するための収穫はまるで無く、やや脱力したように肩を落としたアンドラスは次の瞬間に鋭く目を光らせた。


[だが所詮はエルフ。魔人の中でも力を持つ一握りの者しか与えられぬ、栄光ある爵位を冠するこのアンドラスに勝てると思ったか]


「もちろん勝ちますよ」


「ああ、お前に勝って今日こそ母上の恐怖の呪縛から解放されてやるぜ」


「……本当に何をしているのだ十二神は」


 アンドラスとリュファスたちが対峙した直後、遠くで一つの爆発が起こり、リュファスはそれを契機として手が届かなかったアンドラスとの距離を一気に縮める。


[神器を持とうと! 龍気を纏おうと!]


「うおっ!?」


 だがアンドラスはいつの間にかその手に持っていた鋭い剣で、万物を断つといわれるアダマスの剣を平然と受け止め、弾き返し、ひるがえした剣でリュファスの胸部を切り裂いていた。


[その使い手がエルフ、それもクォーターふぜいではどうにもならぬな!]


 続けてほぼ同時に背中より迫っていたトリアイナの穂先を叩き落すと、アンドラスはロザリーの首元を狙って鋭い突きを繰り出す。


[ほう、小癪にもこのアンドラスの剣を避けるか!]


 しかし手ごたえも十分に感じられた剣の先でロザリーの体は霞のように消え、次の瞬間にはリュファスの隣に移動してその傷を癒していた。


[妙な術を使うようになったものだ。召喚魔法によるものか?]


 先ほどアンドラスが突き出した腕の先で、確かにロザリーは驚いた表情で自分の首に突き刺さった剣を見つめていたはず。


 しかし実際に彼の剣に突き刺さっていたのは、人型に切り取った紙片だった。


「固体に残滓が残るなら、それをあえて見せれば目くらましになる、なのですよ」


 ペロリと舌を出し、得意気に笑うロザリー。


 その侮辱を見たアンドラスは軽く溜息をつき、そして右手に持つ剣を二本に増やした後に軽く宙へ投げ上げ、各々の手にそれを持ち替えた。


[この最上位魔神の一人であるアンドラスに対して怖気づかずに挑んでくる勇気。技量の差を埋めるための準備を整える知恵、そしてそれを遂行できるだけの力。なかなかのものだと褒めておこう]


 次の瞬間、アンドラスは殺気をリュファスとロザリーに向ける。


「くッ!?」


「息が……苦しく……何なのですかこれは」


[だが旧神アナト殿に我が力が届かぬように、エルフふぜいでは最上位魔神の力には到底届かないことを、この場で証明してやろう!]


 アンドラスが発した殺気に貫かれ、動きが止まったリュファスとロザリーに向かってフクロウ頭の魔神が襲い掛かろうとした瞬間、今度は立て続けに巨大な爆発が離れた場所で分散して起こる。


「さっさとお前たちを倒して仲間と合流せねば……む?」


 剣を振りかぶったアンドラスは、自分の周囲を包む霧がさらに濃くなってきたことに気付くが、それでも彼は剣先を止めることなくリュファスとロザリーに切りかかっていく。


「ロザリー逃げろ!」


「そんなこと言っても動けないですよ!」


 そして二人の目前にアンドラスの剣が迫った瞬間。


「おわあっ!?」「きゃああ!」


 近くの家が巨大な爆発とともに崩れ落ち、同時に二人の体は自由となっていた。


[何者……!]


 追い詰めた敵を逃がす原因となった爆発の向こうに、一人の人影を認めたアンドラスは所属を問う。



[やっているではないかアンドラス。久しぶりだなリュファスとロザリーよ]



 そこに現れたのは、堕天使ジョーカーだった。

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