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この世界は救世主を待っている! ~最強を受け継いだ少年が至高に昇りつめるまで~  作者: ストレーナー
第三章 新たな縁 フォルセール攻防編

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第85話 引率者の苦悩!

 二十分ほど飛んだ後、二人は目当てである城外に出た人々らしき集団を見つけていた。


「あれっぽいな……ん? ん~……?」


「どうしたのですリュファス?」


「いや、ちょっとな……」


 リュファスの呟きに何か含むところを感じたロザリーは、術を使ってただでさえ優れているエルフの視力を更に強化し、前方にいる集団の様子を伺う。


「……何かおかしくないですか? 見たところ全員が徒歩なのにやたら荷物が多いし、狼や熊に襲われた時用の武器も携帯していないように見えるのです」


「ロザリーにもそう見えるか。罠の可能性は?」


「魔族ではないようですが……ええと、いくつかの荷物にかなり強力な封術がかけられてるですね」


「降りよう。飛行術を解いたらマティオ殿に念話で相談してくれ」


「分かったのです」


 リュファスが聖職者の中でもかなり高位の術者であるマティオの名を出すと、ロザリーはその指示に従って地上に降り、念話をするために集中する。


「こんな時にラファエラ司祭が倒れちまうなんてな……ダリウス司祭も少しは状況ってものを考えた内容で説教してくれりゃいいんだが。あの石頭め」


 そしてリュファスは念話を始めたロザリーを横目で見た後に愚痴をこぼすと、離れた前方でくつろいでいる集団の人数と男女比率の観察を始めた。


(人数は三十人くらい、男女の比率はほぼ半々ってところか? あれだけの人数が城から出るには、物資を運搬する商人に紛れたとしても不可能だ。となるとどこから来たのかが問題だが)


 リュファスは他に仲間がいないか軽く見まわし、人影が無いのを確認すると再び前方の集団へと視線を戻す。


(あの人数なら昼間に狼や熊から襲われることは無いだろうが、夜は別……となると封術で武器を隠している可能性が高い。やっぱり魔族の罠か?)


 リュファスはそこで観察を一旦終わらせ、ロザリーの反応を待つ。


 すぐに閉ざされていたロザリーの目が開くも、続いて開かれた口からはリュファスの予想外の答えが発されていた。


「うーん……魔族の偵察にあたっているレナ様やナターシャさんたちからは何の連絡も無いそうなのです」


「つまり?」


「あの人たちはどこか他の村から来るか、地面から湧いて出たってことですかね」


「武器も持ってないのに他の村から来れるわけねーだろ! おまけに地面から湧いて出るとか、そんな奇妙な現れ方をするなら人間じゃなくて魔族の方を疑えよ!」


「冗談なのですよ。リュファスは真面目すぎなのです」


 からからと笑うロザリーをリュファスはジト目で睨み付け、都合のいい時だけ人の扱いを変えてこれだから女は、などとブツブツ言いながら前方へ視線を戻す。


「ロザリー、お前の目でもアイツらの正体は人にしか見えなかったんだな?」


「なのです。それほどの幻術を使うような魔族が三十体も別行動をとったら、いくら何でも分かるはずだとマティオさんも言ってたのです」


「魔術はその効果が強力になるに連れて精霊力の残滓ざんしが増える……よって幻術は術の対象から離れるに従って、段階的に残滓を霧散させる幻術を同時に何種類も使う必要がある……か」


「物質界に宿った残滓はそれすらできないですけどね。特に固体に宿ったものは」


「ああもう!」


 リュファスは頭をガシガシとかくとそう吐き捨て、腰の剣を確かめてから前方でくつろいでいるらしき人々のほうへ歩き出す。


「ロザリーお前はここで……いや、竜牙兵の召喚用意をして着いてきてくれ」


「はいなのです」


 ニコリと笑って即答するロザリーを、なぜかリュファスは恨めしそうな目で見ながら前方へと歩いていった。



「おっおっ、アンタたちも一杯やるだか?」


 リュファスが近づいてみると、どうやら集団は地面に腰を下ろし、談笑しているようだった。


 それどころか武装しているリュファスを見ても警戒する様子すら無く、魔族が近づいていると言っても笑顔のまま食事を勧めてくる始末だった。


「だから急がないと魔族がすぐそこまで迫ってるんだって! 飯は歩きながらでも食えるから早くフォルセールに!」


「あんれまー、そんただ急かさんでもー」


「ほんになぁ……しかしこんなに仲のいい兄妹は初めて見るだよ……どうだ? オラたつも今晩あたり仲をよくして兄妹でも」


「あんれー、やだよお前さん、まだ日は高いのにそんな話してー」


「何の話だよ! のんびりしてたら魔族に殺されちまうぞあんたら!」


 話は一向に進まない……というより一向に噛み合わない。


 リュファスが懸命に説得しようとしても、農夫らしき格好をした人々はとりあおうとせずに世間話をするばかり。


「こうなりゃ強硬手段だ! あんたらの荷物を持ち逃げしてでも……うおお!? なんだこの荷物!?」


 とうとう業を煮やしたリュファスが、封術をかけられた荷物の一つを持ってフォルセールに向かおうとした瞬間、力には相応の自信を持っていた彼の身体が揺らいで倒れる。


「あー、その荷物を持つにはコツがいるだよ、お若いの」


「ほんになぁ……その中身はエールが入った樽だから、そっと持ち上げないと中のエールが揺れてバランスを崩してしまうだよー」


「うっそだろ!? なんでそんなもの持ってこんな所にいるんだよ!?」


「何でもフォルセールってところで力仕事を募集してるって聞いたもんだで」


 荷物の中身を聞いたリュファスは驚きに目を見開き、それでもどうやら悪い人間ではなさそうだと判断した彼は、勝手に荷物を持ったことを謝罪して立ち上がる。


「あーなるほどな。それなら色々と手続きが必要になるから早く行こうぜ……ハイハイそこ、手を繋いで仲良くするならフォルセールでもできるから」


「あんれまーデキるだなんてちょっと早すぎだよお若いのー」


「うるせええええええええええええ!」


 そして周囲の者たちを脅し、なだめすかし、何とか立ち上がらせることに成功したリュファスは先に立ってフォルセールへと歩き始めた。



 だが。



「もうちょっと早く歩けないか?」


「あんれまーこれで精一杯だよー」


「んだんだ。なんだか知らねっぺが、こっちについてからやたら体が重くて全然言うことを聞いてくれないだよ。もう年だかなー」


「だべなー、それに比べて若い者は色々と早くて困るだなー」


「なんか引っかかるものの言い方だなオイ!」



 彼らは物凄く歩くのが遅かった。


 先ほどまでの会話と同じく、まったく先に進む様子が無い。



「荷物を置いていっちゃどうだい? 命あっての物種だろう」


「そそそそ、そんなことは絶対にできねえだ!」


「この荷物は命より大切な物だよ!?」


「一つでも無くしたら死ぬよりひどい目に遭わされるだよっ!」


「あー……ハイ」



 かと言って荷物を置いていくように言えば泣き叫んで足を止めてしまうので、リュファスとしてもどうしようもできなかった。



「どうしたもんだかな……ロザリー、魔族の方はどうなってる?」


「あっちも動きが鈍ってるそうなのです。どうもこちらの斥候の存在に薄々気付いているみたいで、様子を伺うために近づこうとすると、すぐに向こうも足を止めて探索の術を使ってくるからうかつに近づけないと言ってるのです」


「向こうが牽制し合ってる間にフォルセールに着けばいいんだがなぁ……と言うか逃がした敵を探すためじゃなくて、いるかいないか分からない敵を探すために探索の術を使ってくるって、人間を下に見る魔族にしては珍しいな」


「そう言えばそうなのですね。王都で見た時は何と言うかいい加減でその場しのぎの行動が多かったというか、良い言い方をすれば大雑把というかそんな感じだったのです」


 二人は王都で会った青い髪の旧神、そして黒髪の女神とついでに雄羊のような姿の下位魔神を思い出して顔を見合わせる。


「まぁロザリーの感想はぜんぶバアル兄ちゃん……あ、いや旧神バアル=ゼブルに関するものばかりだからあまりあてにならないな。さてと」


 リュファスは苦笑いを浮かべ、周りでじたばたとしているいい年をした大人たちを見て溜息をつく。


「ほら皆、泣いてないでそろそろ立って歩いてくれよ」


 そしてうんざりした声で号令をかけ、地面にへたり込んだ農夫たちを立ち上がらせて歩き出すのだった。


「飛行術ならとっくに着いてるのに、ホント集団ってのは扱いづらいぜ」


「なのです」


 そうこうしている内に半日が過ぎ、リュファスたちは何とかフォルセール城まで後少しと言う所まで辿り着く。



「ひいいいいっ!?」


「おたすけえええええええええ!」


「だから魔族が近づいてるから急げって何度も言ったんだよチクショオオオ!」



 予想通り、リュファスたちは魔族に追いかけられていた。

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