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この世界は救世主を待っている! ~最強を受け継いだ少年が至高に昇りつめるまで~  作者: ストレーナー
第二章 結ばれる縁 ヘプルクロシア編

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第47話 何で今なのさ!

「ん? お前のような子供が本当にテイレシアの特使なのか?」


「うん」


「確かに持っている身分証は本物だが……隊長! ちょっと来てもらえませんか!」


「どうした」


 しかしすんなりと入城はできなかった。


 やはりクレイの年齢が若すぎること、そして見た目がさらに年齢より幼く見えることで、城門を守る衛兵に呼び止められてしまったのだ。


「いや、この子供なんですがね……」


「ほう、テイレシアの特使と言うのか。確かにかの国であればそのような型破りなことも平気でやりかねんが……おや? そこの御仁もしやエンツォ殿では?」


 そして番屋の中からやや年かさの男性が現れ、クレイ一行の顔を順番に改めていく途中、一人の偉丈夫のところで目が留まる。


「然り。そしてこの方は間違いなく聖テイレシア王国の特使にして、フォルセール領を治めるアルバトール候の一子クレイ様ですぞ」


「……! それは失礼しました。どうぞお通りを」


 エンツォがいつものように剛毅な笑いを浮かべてクレイの紹介をすると、即座に衛兵の隊長と若い衛兵が直立不動の姿勢を取り、持っている槍を天に向ける。


 その大袈裟とも言える見送りを受けながら、クレイたちは王都ベイキングダムの中へ入って行った。



「やっぱりアルバ候って凄いんだね。名前が出た途端に衛兵さんたちの顔つきが変わったのが分かったよ」


 王都ベイキングダムの中に入ったクレイたちは、活気と異国の品々にあふれた街並みを興味深く見ながら王城へと向かっていく。


 その途中、衛兵だけでなく町の住民ですらエンツォに会釈をする姿を見たクレイは、先ほどの入城の一件を思い出しつつエンツォに話しかけていた。


「前回の天魔大戦の時に、魔族がヘプルクロシアにまでちょっかいを出してきましてな。その時にたまたまこちら側に来ていたアルバトール候の活躍により、ヘプルクロシアを二分する戦いは収められ、魔族は撤退したのです」


 その恩義は民の一人一人に至るまで浸透している、エンツォからそう聞いたクレイは、思わずため息をついてしまっていた。


「俺もそうなれるのかな……いや、ならなくちゃいけないんだよね」


「ふむう、ですがこのエンツォの見たところ、若様であればそれ以上を望んでも良さそうに見えるのですがな」


 クレイはまじまじと見つめてくるエンツォの眼に耐えきれず、視線を逸らす。


 と、その視線を逸らした先に、クレイはちょっとした異変が起きていることに気付いていた。


「あれ? 護衛みたいな人たちを連れた偉そうな人がこっちに手を振ってる?」


「ああ、あれはこのヘプルクロシア王国の宰相を務めているブラッドリー公ですな」


「そんなお偉いさんがわざわざ出迎えに……? あ、なんか分かった気がする」



 一人で納得するクレイ。


 なぜならブラッドリーの後ろには、にこやかな笑みを浮かべた王妃クレメンスが付き従っていたのだ。



「初めましてクレイ=トール=フォルセール殿。私はこの国の宰相をしているブラッドリーと申す者。以後お見知りおきを」


「お初にお目にかかりますブラッドリー公爵。僕のような子供にも直々にお出迎えいただけるとは、公の人柄には本当に敬服いたします」


「子供などと何をおっしゃられることやら。ここに来るまでに一つの盗賊団を壊滅させたとの情報は、すでに届いておりますぞ」


 互いに頭を下げ、町中で長ったらしい挨拶を始めるクレイとブラッドリー。


 それを中断させたのはクレメンスだった。


「堅苦しい挨拶は王城でもできるだろう。行くぞ二人とも……ん? そこにいるのはフィーナとディルドレッドではないか。まったくもう、トール家の者は女性しか随員に増やさない家訓でもあるのか?」


「そう言うわけじゃ無いですけど……エンツォさんとサリムもいるのに、女性についてのみとやかく言うのは少々厳しくありませんか? 王妃殿下」


 不満げに答えるクレイ。


 そこに助け舟を出したのはブラッドリーだった。


「おお、そう言えばクレメンス王妃が聖テイレシア王国に行った時も、フォルセール候と一緒でしたな」


「あ、あれは私の意志と言うか兄……陛下の命で仕方なくだな!」


「では城に戻りましょう。ディヴィッド!」


 慌てて言い訳を始めるクレメンスを無視するように、ブラッドリーは護衛の騎士の一人を呼び寄せる。


「確かあのディルドレッドとか言うお嬢さんはお前の妹だったな。お前が私に仕えるようになってからかなり経つし、近しい家族に会うのは久しぶりだろう。城に戻るまでの間で良ければ少し話をしても良いぞ」


「はっ。ご厚情感謝いたしますブラッドリー様」


 こげ茶色の髪の毛を持つ屈強な騎士が頭を下げ、クレイは頭一つほど上にある厳格な顔を見上げた。


(へぇ、ディルドレッドさんのお兄さんか……あまり似てないな)


「久しぶりだなディルドレッド。父上からの手紙ではあまりいい話を聞いていなかったので不安だったが、元気そうで何よりだ」


「お……お久しぶりです……兄上」


 しばらく会っていなかった家族と話をしていると言うのに、なぜか下を向いているディルドレッドを見たクレイは、右手に彼女の腰縄を持ったままであることに気付く。


(あーそっか……幻術をかけてて見えないからと言っても、なにかの拍子で気付くかもしれないし今のうちに外しておくか)


 そしてクレイが縄を外そうとディルドレッドに近づいた途端。



(いやーまいったぜよ、ゼウスの説教に時間を取られて思ったより調整に時間がかかってしもうた)



 クレイの頭の中に、聞き覚えのある声が響き渡る。


(ほれ、これがおニューの大海の戒めじゃクレイ。今度の奴はそがいに簡単には外れんきに、大切に使うんじゃぞ)


「え」


 同時にクレイの両腕には見覚えのある腕輪が装着され、体は一気に重くなり。


「なんで今なのさあああああああ!?」 


 縄を掴んだ右手が、大海の戒めによる重さでじわじわ下がっていくことにクレイは耐えようとするが、それにも限界はあった。


「きゃっ!?」


 クレイが前方へ伸ばしていた右手が下がったことに伴い、持っていた荒縄がディルドレッドの体を引っ張り、バランスを崩したディルドレッドは兄であるディヴィッドの方へ倒れ込んでしまう。


 当然二人は気まずい雰囲気に包まれることとなるが、それは知り合いの面前で抱き合ったことによるものではなかった。


「どうしたディルドレッ……どうして鉄球を足にはめられているのだ。それになぜ腰に縄をくくりつけられている」


「あ、えーとこれは……その……クレイ様にはめられたと言うか」


「クレイ様にはめられた……? まさか……お前……」


 大海の戒めが発動したついでにクレイが拘束物にかけていた幻術もとけ、ディルドレッドは腰に縄をつけられて足に鉄球をはめられた、さながら罪人のような姿を周囲に露わにしていたのだ。



「見ろよ、あれが新しい天使のクレイ様だそうだ。ここに来る途中にさっそく盗賊団を一つ潰してしまわれたそうだぜ」


「ってことは、あの女も盗賊の一味か……?」


「腰縄をつけられてるってことは、王城へ引っ立てる途中なんだろうな。ってことは良くて縛り首か……悪いことはできねえもんだ。くわばら、くわばら」



 あたりから聞こえてくる野次馬の声。


「……お、お兄様? クレイ様?」


 その薄暗い声は、ディヴィッドとディルドレッドの間どころか、そこにいる関係者一同すべてを気まずい雰囲気に包んでいく。



「……この正義の淑女フィーナの身内から犯罪者を出すことになるなんて……後の始末はお任せしますブラッドリー公」


「フィーナさまあああああっ!?」



 かくして聖テイレシア王国の特使、クレイの顔と名前は一気に王都ベイキングダムにも広まったのであった。

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