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この世界は救世主を待っている! ~最強を受け継いだ少年が至高に昇りつめるまで~  作者: ストレーナー
第二章 結ばれる縁 ヘプルクロシア編

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第34話 水底の魔女!

 本日何度目かのいてっ。



「商品を持ってきたぜMr.ビッグマム」


「ご苦労さんデニール、そこに置いておきな。こいつは代金だ」


(……女性にミスターって……確かにちょっと声は低いけど。でも本人も怒ってる様子は無いし、そう呼ぶように自分で言ってるのかな? それにしても……)


 地面に置かれたクレイは、背中に一定の間隔をおいた棒のような物が立っている感触に気付く。


(鉄特有の冷たさ……鉄格子……牢屋か? の割にはあまり臭さを感じないし、足の下には草や石の感触もあるから床じゃなくて地面だな。なんだここ?)


「おっと、商品の価値を見定めないうちに取引するってのはどうなんだいマム」


「何言ってんだい。あたしが見定めようとすると、いつも俺たちの目利きを信用しないのかって騒ぎ立てるくせにさ。今回はそんなに自信があるのかい?」


「身綺麗にしてるからある程度の教育は受けてそうだし、その上ディミトリのおっさんが処方してくれた痺れ薬もそれほど効果が無いくらい頑丈なようだ。この二つの情報は値段を釣り上げる要素にならないかい?」



(あれ? ひょっとすると商品って俺のことなのか? 困ったな……他の国に売り飛ばされたら特使の役目が果たせなくなっちゃうぞ)



 ここに至って、ようやく自分が誘拐されたという重大な意味に気付くクレイ。


 しかしやみくもに暴れ回っても事態が好転するとは限らない。


(ガビーにだけはなりたくないからな)


 ガビーがフォルセールに来て以来、彼女が早とちりで何度も失敗した姿を見てきたクレイは、窮地に追い込まれた時こそ冷静な思考と行動が必要と知っていた。


「仕方ないねえ。あんたたちとも長い付き合いだし、今回ばかりは特別だよ」


「へへ、さすがMr.ビッグマム話が早いぜ。おいグレン」


「へいおやびん」


 デニールとマムの交渉が成立したと見え、クレイが入っていた袋の口を縛っていた紐が取り払われる。


「んー? なんだこれ……巨大な天幕の中? と……えええ!?」


 袋から顔を出したクレイが見たものは巨大な一本の柱と、そこから周囲の支柱へと延びていく頑丈な縄、それらに支えられた天幕。


「なんだい、人の顔を見るなり叫ぶなんて礼儀のなってない子供だね」


「カ、カエルが二足歩行してる!?」



 そしてぎょろりとした目と、横長の巨大な口を持つ女性だった。



「なんだァ? てめェ……」


 そして巨大なカエルじみた女性がクレイの悲鳴を聞いて表情を一変させ、明らかに服の生地が横に伸びている腹部を震わせて巨大な鳴き声をあげる。


「グレンデル!」


「そっちの名前で呼ぶなよ! 素性がバレないように、声色を変えて二人いるように見せかけてるんだぞ!」


「アンタの事情なんてどうでもいいんだよ! アンタさっきこの子がある程度の教育を受けていそうなんて言ってたねえ!?」


「そ、そうだったっけ?」


 Mr.ビッグマムにグレンデルと呼ばれた大男はとぼけるが、ギロリと大まなこで睨まれた途端、その身を縮こまらせる。


 なぜなら先ほどの口調からも分かるように、Mr.ビッグマムがマジギレしていることは明らか。


 大柄で毛むくじゃらな、言うなれば大猿じみた姿のグレンデルも反論してはいるが、ぬめぬめと輝く冷や汗を流すその姿はまるでカエルに睨まれたなめくじ。


 Mr.ビッグマムに一喝され、更に身を縮こませたグレンデルはすぐに視線を下に向けるも、そこへ容赦ない一言がMr.ビッグマムによって加えられる。


「人の顔を見るなりカエル呼ばわりするようなクソガキなんて、あたしゃあ生まれてこのかた見たことが無いよ! どうなってんだいええ!? 事と次第によっちゃあ、水底の魔女と呼ばれ恐れられるこのあたしが……」


「そ、そんなこと言ってもMrs(ミセス)ケロリーナ!」


「ゲェェ! あんたこそナニ勝手に人の名前を喋ってんだいこのうすらとんかち!」



 どうやら仲間割れのようである。


 クレイは一安心すると、その間にゆっくりと周囲を見渡し始める。


 すると周りには鉄製の檻が何個も置かれており、そしてその中にいる子供たちが、不安げにカエルや大猿のほうを見つめており、その様子を見たクレイは彼らを安心させるために笑顔を浮かべた。


(……なるほど、ご禁制の品、か……人を商品にするとはね)


 以前から噂にはなっていたが、ローレ・ライに住むならず者たちの一部は、どうやら本当に誘拐した子供たちを売り払っているらしい。


 あまりの無法ぶりに、この町を治める評議衆たちは取り締まりを強化しているとの話だったが、クレイの耳には他の噂も入ってきていた。


(いわく、奴隷商人をかかえこんでいるのは評議衆の一人だとか。ブルックリン殿はそれを肯定も否定もしていないみたいだけど)


 クレイは首を振って両手を上げ、人差し指で耳を塞いで離れたところから聞こえてくる見苦しい言い争いから逃避すると、目の前の檻の中にいる何人かの子供を見つめ、そしてその横に置いてある檻の中へ視線を移す。


「こっちはルー・ガルー(狼人間)……それにハルピュイアの子供か? 奴隷にするには狂暴すぎるし、見世物にでもするのかな」


 人間との違いは、頭部に犬の耳が生えており、背中の下部から尻尾が生えているだけに見えるルー・ガルーの子供。


 対してハルピュイアの子供は、まさに異形であった。


(セイ姉ちゃんから聞いてたけど、本当に体の殆どが鳥なんだな……でも顔は可愛い少女のものだし、小さいけどきちんと胸もある。これは一部の好事家がペットにしたがるわけだ……ってあれ?)


 クレイは隣の檻の中に座り込んでいる一人の少女……と言うかセイレーンの姿を認め、驚いた後に忍び足で近づく。


 そのセイレーンは自分の口を人差し指で抑えており、その姿は喋らずとも何より雄弁に一つの願いをクレイに伝えていた。


(内緒にしてくれってことかな? それにしても何やってんだろセイ姉ちゃん)


 フォルセール城に住み着いているセイレーンたちの一人、セイ。


 ふっくらとした白いズボンで隠した下半身は完全に鳥。


 しかし上半身は背中に生えた羽根以外は完全に人間のそれであり、顔立ちもあどけない少女のものである。


(助けを求めるどころか内緒にしてくれ? うーん、ちょっと試してみるか……あ、やっぱりわざと捕まってるなこれ)


 腰の剣に手を伸ばした途端、ツンツン逆立った緑色の髪が生えている頭をぶんぶんと振り始めるセイを見て、クレイはその答えを得る。



 その時だった。


 クレイの頭上にある天幕が切り裂かれ、一人の少女が飛び込んできたのは。



「ついに見つけたわよ悪の人身売買組織を取り仕切る悪の女首領! 正義のフィーナ騎士団を率いる正義の騎士団長にして正義の淑女! フィーナ=ブルックリン=マックールは貴方たちを絶対に許さないったー!?」



(あ、着地に失敗して足くじいてる……しかも口を押えてるし舌でも噛んだか?)


 そして登場した直後に右足を抱え、着地した檻の天井部を転がり始める少女にクレイは一瞬だけ親近感を覚えるが。


(これ絶対ややこしくなるパターンだよ……ああ、天使になんてなるんじゃなかった)


 程なくクレイは飛び込んできた少女の醜態を見て思わず頭を抱え込み、体を左右にゆするのだった。



 さらにその頃、ローレ・ライの港では。



「いやああああっ!?」


「どうしたのですガビー!」


「ひ、人が……死んでる……」



 港にぷかぷかと浮いている青い長髪の男性を見て、ガビーも悲鳴を上げていた。

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