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この世界は救世主を待っている! ~最強を受け継いだ少年が至高に昇りつめるまで~  作者: ストレーナー
第二章 結ばれる縁 ヘプルクロシア編

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第23話 教会は危険がいっぱい!

「どうして貴女はいつもいつも厄介ごとしか持ち帰ってこないのですか! 私は新しい法衣を持って帰るように貴女に頼んだはずですよ!?」


「えー、いいじゃない。法衣はきちんと用途がバレないようにセファールに口留めして厳重に封印して持って帰ったし、クレイがゴネずに素直に教会に来るなんて珍しいし、結果オーライってもんじゃない?」



(……なんだ?)



 近くで女性が言い争う声。


 その騒がしさにぼんやりと意識を取り戻したクレイは、やや焦点の合わない目で天井を見上げ、周囲を見渡す。


(教会の礼拝堂……の祭壇の上……かな。とすると、またラファエラ司祭とガビーがケンカしてるのか)


「クレイが教会に来るのを嫌がるのはあなたが居る時だけです!」


「何それひどい! どういうつもりなのよこの……えーと、障壁を張って……天軍の副官たるガブリエルの取り扱いがひどすぎないかしら! マニュアル作りなさいよマニュアル! コワレモノ取扱注意って!」


 三年ほど前、ガビーがフォルセール教会に来た日から見慣れている光景が、今日もすぐ近くで繰り広げられているのを感じ取ったクレイは、諦め半分と言った溜息をつきつつ起き上がろうとする。


(あのうっかりガビーが天軍の副官ねぇ。メタトロンから最初に聞いた時はまさかって思ったけど本当だったのか。まぁさっきうっかり禁句を口にしようとした俺も、ガビーのことをどうこう言えな……アレ?)


 息を軽く止め、気だるい体に活を入れ、しかし起き上がろうとするクレイは起き上がれなかった。



「何だよこれ!? ラファエラ司祭! 何で俺祭壇に縛り付けられてるの!?」


 なぜなら祭壇の上に寝かせられていたクレイの体は、皮ベルトで厳重に縛り付けられていたのだ。



「起きましたかクレイ。実は……」


「フッ! 話は聞かせてもらったわよクレイ! どうやらあんたメタトロンを」


「貴方が領境の森で魔神を倒した時の様子をサリムに聞きまして」


「宿していたようね! だけどあんたじゃまだメタトロンの力に」


「なので貴方の中でメタトロンがどういう状態なのか」


「耐えきれないからあんたごと封印」


「一人ずつしゃべって」


「はい」「はい」



 こうしてクレイは二人の話を聞いたのだった。


 縛り付けられたままで。



「大体わかったけどさ……なんでサリムの記憶を昔みたいに封印しなかったのさラファエラ司祭。そうしたら俺の中にメタトロンがいるってバレなかったのに」


「貴方は封印してほしかったのですか? 昔に戻ったサリムを」


「まだ縛り付けられたままだしね。この状態が続くなら、さすがに封印してほしかったと言う以外ないかな」


 すいっと目を逸らすラファエラ。


 その隙にガビーが一歩前に踏み出し、得意気にしゃべりだそうとするが。


「だからあんたをこのまま封印……」


「教会に来る前にメタトロンが言ってたぞガビー。今度不用意に我を目覚めさせるようなことがあれば……」



 クレイの言葉を聞いた途端、ガビーは顔を凍り付かせていた。



「……あれば?」


「君がいくら泣いても殴るのをやめない、だってさ。前に何やったんだよガビー。割と本気で怒ってたぞメタトロン」


「しししししし、知らないわ! あたし何にも知らない! 覚えてないもの絶対!」


 しゃがみ込んで頭を抱え、虚ろな目でガタガタと全身を震わせるガビー。


 その様はまるで、無数の死神に囲まれた罪人のようである。


「ま、まぁ落ち着けよガビー。とりあえずさ、メタトロンは力を使いすぎて疲れたから眠るって言ってたよ。だから別に俺を縛り付けなくても……」


「それを聞いて安心したわビーム!」


「ぎえあああ!?」


 だがメタトロンが力を使いすぎて眠ったと聞いた途端、いきなり何も考えていない顔でクレイに右手を向け、その先っちょから怪しげな紫色の光を放つガビー。


「それそれー! アンタがあたしを避けてるって聞いてから何かイラっとした成分を加えたこのガブ……ガビビームで大人しく封印されちゃいなさいクレイ!」


 しかしガビーの卑劣な不意打ちによってクレイが悲鳴を上げた直後。



「……そこへ直れ、ガブリエル」



 クレイの目と髪は真紅に染まり、クレイを拘束していた皮ベルトはあっさりと焼き払われ、威厳に満ちた表情になった彼は右手を軽く握りしめたのであった。



「まるで成長していない……と言うか、これはむしろ幼児退行しているな。まったく君たちはこの十余年の間、一体何をしていたのだ?」


 しばらく後、何かの作業を終えたクレイは、当然の権利と言ったように祭壇の上で足を汲み、ラファエラを軽く睨み付ける。


 その燃えるような真紅の髪に縁取られた顔の眼下には、一人の幼女が美しい金髪の代わりになぜか巨大なたんこぶを生やし、ひっそりと倒れていた。


「王たるメタトロンは転生。先代の司祭であり、天軍を率いるエルザ司祭――ミカエルもまた。ルシフェルに至っては魔族の指導者となって、復活した天軍の副官がこの有様ではどうしようもないと思いませんか? 何をしていたとはこちらの言葉です」


 ガビーのその痛々しい姿をじっと見つめていたラファエラは、自分が先ほどまで被っていた緑の帽子をそっとたんこぶに乗せ、うっすらと笑み……いや微笑を浮かべつつメタトロンの苦言に答える。


「……天使アルバトールはどうなったのだ」


「アルバ候ならウリエルと一緒にもうすぐこちらにいらっしゃいます。炎、風、水、土の四属性の元に、貴方を今度こそ強制的な魂の眠りにつかせて、完全復活を成し遂げてもらうために」


 ラファエラが静かにそう告げた後、なぜかガビーのたんこぶの上に乗っている帽子がくるくると回り始め、その微妙な雰囲気に耐えきれないようにメタトロンの真紅の髪が一気に赤茶色に色あせる。


 いや、次の瞬間にクレイは表情を年相応のものとし、慌てた様子で口を開いた。


「ええっ!? それは困るよラファエラ司祭! 今メタトロンを封印されちゃったら俺はどうなるのさ!?」


「あー、えーと……クレイ……ですか?」


「そうだよ! それにアルバ候がこちらにいらっしゃるとか俺聞いてないよ!」


「話す予定だったのですよ。つい先ほどまでは」


 ラファエラが床で動かなくなったガビーを憎々しく見つめると、その表情を見たクレイが何かを察し、痛々しい表情で宣告を下した。


「もうガビーは手遅れなんじゃないかな」


「何よそれえええええ!?」


「うわ動いた!?」


 たった今まで気絶していたガビーが、前触れもなく敏捷に動き始めたのを見て動揺し、たちまち体を遠ざけるクレイ。


 すると再び彼の目と髪は真紅へと転じ、表情の豊かな幼さの残る顔を感情を抑えたものとし、普段の彼からは想像も出来ない重々しい口調で喋り出していた。


「さすが水のガブリエル。我がそこそこ本気で殴りつけたのにもう復活するとは」


「法術の腕だけは我々の中でも抜きんでていますからね……忌々しいことに」


 ちょっとシャレにならないほど憎々し気に呟くラファエラに、今度はクレイ=メタトロンのみならずガビーまで身を引く。


「ラファエゥぉっとラファエラちょっと怖いんだけど」


「あら、怖くなるのはむしろこれからですよ……ガビー」


 不穏極まりないなラファエラの発言。


 聞き捨てならないその言葉の真意を問おうとガビーが口を開こうとした瞬間。



「四大天使が一人、土のウリエルまかり越してございます」


「同じく四大天使が一人、火の代行者アルバトール参上いたしました」


「お入りくださいアルバ候。待っていましたよウリエル」



 扉から軽いノックの音がすると、入室を求める二人の男性の声が部屋の中へ染み渡っていった。

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