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4.うちのエルフは大不評。竜も絶賛大不評

「エルフ?」

「はい」


 ベルティアの案内にジェイクは抱えていた頭を上げた。


「一般的に人間の上位格とされるエルフか?」「はい」「最低でも十億台の格が必要なエルフ?」「はい」「人間の能力を下回るのは繁殖力ぐらいのエルフ?」「はい」


 ジェイクが疑念をあらわに問い、営業スマイルのベルティアが頷く。

 何度かの問答の末ジェイクは黙り、少し考えた後で聞いてきた。


「……なんで?」

「実は私の管理する世界では八百六十万年前からエルフの発展が急務となりまして、大々的にエルフ発展キャンペーンを実施しているのです」

「いや、でもさすがに千六百万じゃ……」

「このキャンペーンではなんとレベル一万、五桁の格からエルフ転生が可能になっております」

「なんでだよ!」


 限度を超えた激安にジェイクが叫ぶ。

 ベルティアは営業スマイルを絶やさず売り込みを始めた。


「私が格を補填するからでございます」

「……」

「転生時に私が必要な格を譲渡し補填いたします。生を終えた後の返済は不要で、獲得したレベルも当然転生者の所有物となる事を保証いたします」

「……」

「さらに生を終えた後のアフターサービスも万全でございます。千年に及ぶ神の世界での生活費支給。私の世界に限定されますがある程度の世界への干渉と他生物への特別優先転生権。他の神の管理される世界に転生される場合は私が先方の神に紹介させていただきます」


 まさに至れり尽くせりの内容である。

 が、ベルティアは肝心な所を見落としていた。

 今さっき詐欺に遭ったばかりの被害者にこのような文言が受け入れられるはずがないのだ。


「……胡散臭い」

「なぜっ!」

「今さっき詐欺の被害届を出したばかりの俺にそれを聞くのか? というかお前、さっきまで俺に接待チートとかチート詐欺とか言ってたじゃねーか」

「私の世界では現在エルフ枠を拡充しないと非常に、そう非常に困るのです。ですから自腹出血大サービスで人類格のエルフをご提供しているのでございます」


 ベルティアの言葉に嘘は無い。

 つまり……


「どんだけひどい転生なんだよそれ」

「ぐはっ!」


 つまり、そこまでしないと転生者を得られないという事である。

 気持ち良くチートしてレベルを失ったチート詐欺とは違う方向でヤバい転生であった。


「せ、説明だけでも聞いて下さいよ。親切のお返しという事で」

「まあ、その位ならいいけど」


 席を立とうとするジェイクを何とか留まらせ、ベルティアは端末の画面を示しながらエルフの紹介を始めた。


「まず、火が使えません」

「ほう、つまり食事はすべて生か」「はい」

「食中毒は?」「年五回ほどのたうち回ります」

「寄生虫は?」「同じく年五回ほどのたうち回ります」


 ベルティアは説明を続けた。


「さらに食料は特定の所作で受け取る必要があり、それを怠ると食料が腐ります」

「特定の所作?」

「食料で頭をぶん殴られるのです。若い頃は痛いだけですが老いると骨が弱くなるので、やがて頭をかち割られて生涯を終える事になります。そして生を終える際、世界樹に食われます」

「……」


 すでにジェイクは無言。

 ベルティアはさらに説明を続けた。


「ですが良い所も色々あります。当世界のぶっちぎりチート最強植物である世界樹との繋がりにより暑さ寒さや怪我から身を守れる世界樹の守りという防御の祝福が常にかけられており、同じ人類格である人間の大半はエルフに傷一つ負わせる事は出来ません」

「……」

「木々が異常生長するため定住が出来なかったりキノコに体を蝕まれたり精神異常を引き起こしたり色々厄介な事はありますが間違い無く人類格種族でございます。しかも激安! ですからうちのエルフに転生なさってはどうでしょう?」

「嫌だよ!」


 胡散臭いから明確な拒否へと反応がレベルアップした。


「な、なぜですか!」

「なんで一生飯で殴られ続けなければならんのだ!」

「人間だって一生お金で殴られ続けているようなものではないですか」

「実際に殴られた事なんて一度もねぇよ。しかも食中毒に寄生虫、キノコにラリるとかどんだけ人生ハードモードだよ! さらに最期は世界樹に食われるのか!」

「命はめぐるものなのです。植物が動物の糧になるように人間やエルフも何かの糧となるのですよ」

「そこまで確実に食われねえよ! 食畜と同じじゃねーか!」

「ああっ待ってください!」


 話を聞いていられないと席を立とうとするジェイクにベルティアがすがり付く。

 カウンターにずるぅりとダイブする姿は世界主神とは思えない程みっともない。

 ベルティアも必死であった。


「こんな美味しい話は他にはありません。どうせチートですってんてんなのですから反省の意味を込めてエルフやりましょう! ね!」

「猪の方がまだマシだわアホらしい」

「ですがうちのエルフは間違い無く格を上げる最短ルートです。格を十億まで上げるのにたったの千年。それもエルフに転生するだけで確実に手に入るのです。通常の転生ではよほどの無理をしないと千年では難しいですよ?」

「いやいやそれで頭殴られ続けるとか無理だから。年に十回も食中毒と寄生虫とか無理だから!」


 格を一つ上げる、つまり十倍のレベルを手に入れるには通常十回以上の転生を必要とする。

 危険な事を行わなければ十回以下にする事は難しい。ベルティアの言う通りエルフは千六百万のジェイクの格をたった一度で二つ上げるチート転生だ。

 しかしジェイクは拒否の姿勢を崩さない。

 当然である。危険な事を選択できると強制されるでは意味が全く異なるのだ。


「じ、じゃあ竜! 竜はどうですか? 転生枠の先約が二人いるのですぐには転生できませんがレベル一兆台、十三桁の格を持つ当世界のぶっちぎり最強動物です……まあ世界樹の足元にも及びませんけど」

「どうせそっちも大概なんだろ?」


 すがり付くベルティアにジェイクが冷ややかな視線を向ける。

 その通り。まったくロクでもない転生である。


「えー……人間の宗教活動により討伐され、世界樹に食われます」

「やっぱ食畜じゃねーか! どんだけ世界樹強いんだよ!」

「いやもう強すぎて強すぎてエルフが減ったら世界が食われてしまうのです! ですから私を助けると思ってぜひエルフに!」

「被害者の俺がなんであんたを助けにゃならんのだ!」

「被害届を出してあげたじゃありませんか!」

「仕事なんだから当たり前だろへなちょこ正社員め鬱陶しい!」

「そんなーっ!」


 カウンターで行われるジェイクとベルティアの一幕に周囲の視線は生温かい。

 いつもの事なのである。

 そしてすがりつくベルティアを振り切って去っていったジェイクのようなチート被害者が、望みの転生にありつけずにエルフに転生するのもいつもの事なのである。


「……やっぱエルフやるわ」

「ありがとうございます。ありがとうございます!」


 ベルティアの世界のエルフはチート被害者の駆け込み寺のような扱いなのであった。


レベル桁に関してはこんな感じです。


カイら人間が9桁。

アレクら勇者とエルフが10桁。

バルナゥら竜が13桁。

イグドラが最初に顕現させた異界の主が21桁。

世界樹イグドラがもうちょっとで33桁の32桁。

神の格は33桁以上。

ベルティアの桁数は次回。


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