3:コミケにサークル参加すると味わえること1
今回、初めてサークル参加してみて、コミケにサークル参加すると、以下の3つが漏れなく味わえることが分かった。
a:作品を完成させること
b:本を作ること
c:本を売ること
運が良ければ、
d:感想を頂くこと
も味わえるかもしれないが、これは確実ではない。
ではこれから、ひとつひとつについて僕のレポートと感想をお伝えする。
a:作品を完成させること
作品の完成とは締め切りだった。伏線の抜け漏れ、表現、誤字脱字、構成を1字1句すべて納得するまで確認し、これでよしと膝を打つ瞬間が作品の完成ではなかった。
作り手の実力とは、締め切りで切った時の作品の出来なのだということも分かった。
作り手は、あそこはまだ手を入れられる、ここはもっと良くなるはずだ、と勘付いている。これまでたくさん本を読んできたのだ。「プロの作品となんか違うな~」って分かっている。でも、もう終わりにしないと明日のコミケに間に合わない。それが作品の完成であり、その時点の作品が作り手の実力なのだ。
僕は生まれて初めて作品を完成させ、自分の実力を知った。すごく恥ずかしかった。
b:本を作ること
本は物だった。物体だった。本は情報だと思っていたが、それは一面的な見方だった。表紙があって、それを開いたらタイトルがあって、作者名が書いてあって、本文が始まったら最初から順番に読めなくてはいけない。
当たり前だ。当たり前だが、PC画面にずらっと並んだ文章を必要な形に成形し、物として現実世界に顕現させなければならない。これは一大作業だった。
ネットで調べたら、製本には色々な方法があった。僕はその中から、中綴じという方法を選んだ。一番簡単そうだったからだ。中綴じとは、紙を重ねて半分に折って本にする方法だ。A4用紙を使えば、A5サイズの本ができる。
この時、ページレイアウトをちゃんとしないと本にならない。表紙と裏表紙は1枚の紙の左右に印刷されるだろうことは、すぐに分かる。では、本文1ページ目の反対側には何ページ目が来るのか?
1ページ目の反対側は、全体を4の倍数ページで構成していれば、本文最後のページになる。2ページ目は、1ページ目が印刷された紙の1ページ目と対面する側になって、その裏が3ページ目になる。このようにして、両面印刷でページを刷っていく。
オー! ソンナフクザツナコト、ワタシニハムリデース! と、いきなり混乱したが、wordにお任せすると、ちゃんとやってくれた。でも、全体のページ数を4の倍数にしないとうまくいかないことに、なかなか気づかずに右往左往した。
全部で9万6千字あったので、一段組だと大変なページ数になった。そこで2段組にした。
いくつかルビを振りたい言葉があったが、ルビを振ると行間が広くなってしまう。すべての行間を広めにして、ルビ有りの言葉を含む行間が気にならないように調整したら、ページ数が倍になってしまった。そこで、言葉が最初に出てきた時だけルビを振ることにした(ルビに関しては、きっとwordに設定もあるだろうが、それは今後の課題だ)。
中綴じ本用に成形できたので、データをpdf化して、セブンイレブンでUSBメモリからプリントした。両面印刷は倍の値段で、1枚20円。27枚で540円になる。
ケチな僕は、一部だけ刷って、近くの5円コピーに行った。こちらは1枚10円だから、コストは半分の270円だ。
しかし、このコピー機が遅い。20部刷るのに5分かかる。だから、27枚を20部刷ろうとすると、
27×5=135分=2時間15分
だけ、かかる計算になる。
その上、百円ショップの隅っこにあるこのコピー機はけっこう人気があって、後ろにどんどん人が並んでいく。2台あるうちの1台は、あいにくメンテナンス中。
後ろからのプレッシャーで、10分も占有すれば胃が痛くなってくる。それで、2~3枚刷っては列の最後に並ぶというループを繰り返した。疲れたら部屋に帰って原稿を順番通りに振り分けた。コミケ前日(8月13日)の11時から始めたコピー作業が終わったのは、19時半だった。
コピー機ループをしていると、同じ様なことをしている青年がいることに気がついた。電車の写真が入ったページを刷っている。大きめのリュックを背負って、コミケ80と書いた紙袋を持っていた。
時刻は17時過ぎ。思い切って声を掛けると、明日のコミケで売る小田急電鉄の本を作っているとのこと。はきはきした良い青年で、意気投合してツイッターのアドレスを交換した。彼は時間がないらしく、価格が高くても印刷が速いコピー機を求めてコンビニに行った。
表紙は綺麗な紙を使いたかったので、東急ハンズで買った。1枚35円。この紙は、コンビニも百円ショップも手差しが不可だったので、自分のインクジェットプリンターで刷った。不安だったが、うまくいって良かった。
綴じも問題だった。普通のホッチキスでは、A5幅あるページの真ん中まで届かない。あらかじめネットで調べて、九十度回転するホッチキスを買った(このホッチキスはコミケ会場でも使っている人を見た)。
でも、今度は枚数が多すぎて、ホッチキスの針を打っても、先端が裏側に1ミリくらいしか出ない。なんとか止まるけど、これでは読んでいる最中に紙が外れてしまうだろう。しばし考え、互い違いに針を打ち、合計4本の針で止めることにした。これで大丈夫なはずだ。
東急ハンズでは、ホッチキスを打った部分をカバーするテープも買った。製本テープという名前だと知った。
これで準備OK。ホッチキスの針と製本テープを除くと原価305円の本の材料が揃った。
さあ、製本の開始だ。ネットでやり方は入念に調べてあった。27枚の紙を、できる限り揃えて、一気に折る。表紙をかぶせて一旦開き、ホッチキスで止める(この際、ホッチキスが多少ずれても気にならないから大丈夫。と、コミケ達人の先輩からアドバイスを頂いていて、気持ちが楽だった)。
製本テープを貼って、最後にもう一度、ぎゅっと折る。丁寧に(ことあるごとに定規で、とんとんと紙を揃えながら)作業して、1部に5分ちょっと掛かっただろうか。こうやって21部作った。終わったのは23時だった。
本当は上下(天地)と開く方(小口)を裁断するそうだ。そうすると、端が揃ってちゃんとした本になるし、段差がなくなるので、めくり易くなる。
僕は裁断機を持っていないので、諦めた。その結果、本の前半はぺらぺらとめくれるが、後半は指を逆に掛けないとめくれない本になってしまった。
さて、明日は早いし、もう寝る――前にやることがあった。POP作りだ。本のタイトル、値段、内容の紹介を、会場の通路を行く人に伝えないといけない。
本当は、もっと時間を掛けてじっくり作りたかった。でも時間がなかったので、ぱっと考えて、ぱっと作った。台紙は余った表紙用の紙を使った。
また、今回は無料配布本も用意した。A4を2つ折りにすると、A5サイズの4ページの本(自分で本を作った後は、これも立派な本だ! と思えてくる)になる。自己紹介と掌編小説(原稿用紙5枚ほどのショートショート)を2編載せた。
販売する本にも、無料配布本にも、ツイッターのアドレスと公開用のメールアドレスを載せた。
さあ、準備完了。あとは寝るだけ――じゃなかった!
出掛ける準備がまだだ。暑さ対策、飲み物、食べ物、タオルなどをスーツケースに詰めて――頑張れ、自分!