8-19 転びの始まり
日曜日はどうやって過ごしますか?
こんな感じの雑談もいいですね。
「あれま、久しぶりだね。」
神様は目を見開き、先程まで動かしていた手を止めてこちらを見た。
「神様ここにいたんですね。あ、そういえば、最近何かあったんですか?」
「それは、パラに聞いたのかな?」
首を縦に振るとパラの方を1度見て納得したように再び私の方を見た。
「うん、ちょうどいい大陸があったからそこに住むことにしたんだよね。
それと、最近は色々とあってこの世界のバランスを保つのが大変になってきたんだ。
だから休んでなくてね、君が欲しいのはこれでしょ?」
そう言って石をひとつ渡してきた。
受け取ったが、このまま帰る訳には行かない。
「なにか手伝いますよ。そんなに大変なのは私も関係してるんじゃないですか?」
「手伝いと言っても神様にしかできないことだからね。
その気持ちだけもらっておくよ。」
「さ、また仕事に戻るよ。」と言って再び手を動かし始めた。
けど、次の瞬間には神様は倒れていた。
音もなく、風のゆらぎなどもなく自然に。
「神様!?」
「ちょっとだけ寝るだけ。」
そう言っているが、その顔は本当につらそうだった。
顔は白く、呼吸も弱々しいし、体も軽すぎる。
「私も手伝いますよ。
神様になります。」
神様には恩がある。
何かの間違いでこの世界に来たけど、その分だけの出会いや思い出があった。
それを恩だと思っているほどだ。
「神様になる方法、教えてくれない?」
「どうしても、神様になりたいの?
神様になったら、今までのようには行かない。
それに、試練もある。試練は、失敗したらその試練の中で記憶をなくす。
本当にそれでもいいの?」
神様がそう言って警告をしてくる。
「いいよ。王国の方はパラを変身させて私に似せて代わりになってもらう。」
話を聞いていたパラはなんとなくそうなるのが分かっていたようで頷いている。
「サラもパラと一緒にいてあげて。」
そう言ってサラを下ろす。
「それじゃあ、とりあえず試練を受けるための場所に行こうか。」
そう言って手を振り上げるとそこは先程までいた場所ではなく、緑と黄色で彩られた神殿のような場所だった。
「あら、転生神様、どうかなされたのですか?」
そこには落ち着いた雰囲気を纏う女性が1人。
「彼女に試練を受けさせて。
説明付きで。それじゃあ私はもう戻るよ。頑張ってね。」
そう言って神様はどこかに行ってしまった。
「じゃあ、頼まれた通り説明をするよ。
今からあなたが受ける試練は時逆の試練です。
これを受けるにあたって注意して欲しいことがあります。
もしも、この試練では稀に記憶が消失する可能性があります。」
「記憶の消失って赤毛の神様のことですか?」
「はい、なので気をつけて欲しいのです。」
悲しそうな表情をしながらそう告げる。
「試練と言っていましたけど、どんなことをするんですか?」
「あなたの記憶と能力をブロックした状態で新たな人生を初めて、歪神を倒してもらいます。」
記憶をブロックして、という所で、なぜ記憶が消失したのかがわかった。
「なお、この倒すというのはあなたが死ぬまでにその世界にいる歪神が消え去ることを意味します。
なので、自分で行ってもいいですし、他人に任せてもらっても大丈夫です。」
そういう選択肢もあるのか、と思いながら意志を固める。
「わかりました。記憶が消えるということは学んできた技術なども消えるんですか?」
「いえ、算術などは変わらないです。
ブロックされるのは今のあなたの役職や攻撃系、防御系のスキル、魔法のみです。
それと、転生神様には悪いことをしたと思っているので記憶の消失の条件を教えておきます。」
「条件、ですか?」
「はい、それは歪神に自分が倒されること。
転生神様は相打ちという形で歪神を倒しました。
この場合だと蘇生させてから神になります。
歪神は倒した、殺したものの記憶や魂を吸収して強くなります。
それを防ぐためです。
相打ちの時には記憶を残そうとしたのですが、昔の契約が残っていて無理でした。」
それは、新しい神は生まれて欲しいけど相手が強化されるのは困る、ということなのだろう。
「わかりました。それでもやります。
でも、私がいない間誰が女王を、、」
私がいなくなったら何が起こるのかを考える。
「私たちがあなたのかわりをするわ。」
そういったのはパラで、その横にはサラもいた。
どうやって?、と聞こうとする前にパラが私そっくりに変身した。
「容姿はこれでいいし、あなたの行動や気持ちは私とサラマンダーがいれば充分よ。
行ってきなさい。」
突き放すようでいて優しい言葉を貰った。
「ありがとうサラ、パラ。
それと、私がいない間、よろしく。
サラマンダー、パンドラ。」
最大限の敬意をはらってそう言う。
「では、試練を始めるならそちらの扉へ。」
指された方向には開いた扉があった。
「また後で。」
パラから言われた。
「うんまたあとでっ!」
扉に入る瞬間、私は転んだ。
神になるための試練は転ぶところから始まってしまった。
ちなみに最終話ではありません。




