7-7 ダンジョンと勇者たち
ステータスを教えた翌日の夜、勇者たちが疲れ果てた顔で夕食を食べていた。
ちなみに私はシャルとして勇者たちが泊まる宿の食堂で食事をしながらその様子を見ている。
(女王としてだとなにか構えるところがあると思うから、やっぱりこういうところの方がいいよね。)
宿で泊まるために、わざわざ会議を開いたのは秘密だ。
王城の食事も美味しいけどここの宿の食事も美味しかった。
そう思いながら勇者たちの会話に耳を傾ける。
「先生すごく怖いよ、」
「でも教えるのがうまくないかな?
それよりも寝たりして連れていかれたみんなはどこに行ったんだ?」
「数分で戻ってきたよ。
でもものすごい変貌していた。魔物の知識を必死に覚えようとしていたよ。」
(そんなに怖いのかな?大丈夫かな?でも今日1日で終わりだから大丈夫だよね?)
「明日は何をするんだ?」
「確かチートを使った実践だろ?
先生も見に来るらしいぞ、」
「「「ひっ!」」」
1人の言葉を聞いて隅にいた3人が怯えたような声を出した。
「おいおいそんなに怖かったのかよ、過剰すぎないか?」
「あ、あれは本当に、怖かったんだ、」
その言葉は本当のようでその時のことを思い出したのか震えだした。
「それならば明日に備えて今日は早めに寝よう。
MPは寝ないと回復しないしな。」
イケメンくんがそうみんなに言って食事を終えて部屋に戻っていった。
(明日は魔物との戦い、命をかけることになる、命の危機になって正気でいられるかが分からないですね。
冒険者として一緒に行きますか。)
魔物との初めての戦いはいざという時は助けられるようにするのがいい。
(その為にこれからまた会議かな?)
大臣たちを集めて行った会議で私が明日同行することを伝える。
最初は反対されたが色々と説明をした結果OKを出された。
そして当日、今まで攻略しきたダンジョンの中で1番簡単な場所に馬車で向かう。
勇者たちには馬車の中でそのダンジョンに出てくる魔物について私が書いた本を読んでもらっている。
流石に地図は渡していない。
(だって渡したら簡単に終わってしまうし、みんなで頑張ってもらった方がいいよね。)
勇者たちは少しの時間で必死に魔物を覚えようとしている。
中にはダンジョンと聞いてとても喜んでいる者達もいる。
「シャルさん、今回は一緒に来てくれてありがとうございます。」
私に勇者が話しかけてきた。
「女王に頼まれたので断る理由はありませんよ。あ、つきましたから行きましょう。」
返事をした時にダンジョンに着いたので話をやめてダンジョンに入る。
「ここでは魔物がいろんなところから出てきます。
気をつけないと死ぬこともあります。
皆さんにはここで出てくる魔物を1チーム5匹倒してもらいます。」
そう言って私が戦闘で歩き出す。
ちなみになるべく魔物と遭遇するように道を選びながら進む。
「その過度から魔物が来るので倒してみてください。」
そう言って私の後ろにいた1つのチームに声をかける。
私が1番後ろについてから戦闘を始める。
戦い方は事前に考えていたようでそれぞれチートを使って魔物を翻弄しながら倒していた。
「上出来です。次も頑張ってくださいね。」
少しだけ褒めてまた進む。
そして遭遇、討伐、遭遇、討伐、を繰り返していく。
ダンジョンに入りちょうど4、5時間になった所で休憩を挟む。
「一度休憩しましょう。皆さんにダンジョンで食べるための食事を渡すのでそれを食べて少し休んでから魔物との戦いを再開します。」
そう言って携帯食料を全員に渡す。
それは宿の食事と比べれば美味しくないだろうが、これから自らの手でお金を稼ぎ生活してもらうためにはこれを食べる時が来るので今のうちに食べさせておく。
それから数分後、攻略を再開する。
出てくる魔物をうまく調整して全チーム残り1匹にしてボスのいる部屋に行く。
「ここはダンジョンのボス部屋です。
今まで戦ってきたやつよりも強いので皆さんで力を合わせて倒してください。
倒せたら今日の予定は終わりです。」
そう言ってボス部屋に入る。
ボスはでかい狼。
ダンジョンではよく狼を見るが、ボスとして見たのはこのダンジョンだけだった。
「みなさん頑張ってくださいね。」
それだけ言って勇者たちにすべて任せた。
チートを持った勇者なら余裕で倒せる相手。
だが、その狼は勇者たちを怖がらせるのには十分な姿をしていた。
(狼というか、ケルベロスみたいな感じかな?)
3つの口から涎を垂らし低い声を出しながら威嚇をしている。
私はこの魔物についていた鎖を引っ張って首を絞めて倒した。
狼が突っ込んできた。
勇者のうちの1人が前に出て防御系のチートで突進を防いだ。
イケメンくんは後ろに回り込んでいて切りつけようとしていたがその剣はただ叩きつけるだけのもので普通によけられていた。
勇者の行動で他の子もようやく動き出していた。
だが、まだ恐怖が残っているようで顔は青ざめ足が震えている。
「みんな!大丈夫だ!俺たちは力を持っている!その力があればこいつも倒せるはずだ!怖がるな!前を見ろ!
怯えるな!立ち向かえ!
俺達が力を合わせれば絶対に勝てる!」
勇者はそう言って自ら狼に突っ込んでいった。
それを見ていた子達もぼろぼろになりながら勇者の援護をするように動き狼がおされはじめた。
そしてついに勇者が狼の首を剣で切り飛ばした。
それを見た子達は緊張がとけたようにその場に座り込んでしまったがそれぞれ歓喜の声をあげた。
だが、すぐにそれは絶望に変わった。
どこからともなく2体目の狼が出てきたのだ。
(私も最初は驚いたよ。2回戦目があるんだから。)
勇者はすぐに立とうとするが先程の戦いで力を使い果たしてしまったのか、うまく立てずにいる。
「みなさん、よく頑張りましたね。
倒して嬉しいのはわかりますけどすぐには緊張を解いてはダメですよ。
でも今回だけは及第点にします。」
私はケルベロスの前に立ち勇者たちにそういう。
「シャルさん、早く、逃げないと!」
勇者がそう言った。
「ダークボール」
私はケルベロスにダークボールを放つ。
ケルベロスは叫び声をあげることなく死んでしまった。
「な、、」
勇者たちは驚いたような顔をしている。
「あなた達もこれくらい強くなれますよ。
さて、帰りますか。」
唖然としている勇者たちにそう告げて、ダンジョンの外に転移する。
ダンジョンを出ても勇者たちはまだ動けないでいた。
「わざわざ勇者たちを守るために女王に依頼されたのに強くなくてどうするんですか?
さあ帰りましょう。私もみなさんと同じ宿に泊まっているんですよ。」
そんなことを言いながら勇者たちが馬車に乗るのを待っている。
(元々の予定とはだいぶ違ったけどまあ、いいよね。レベルもたくさん上がったと思うし。)
馬車を走らせて王城に戻る。
戻る間馬車では今回の反省会が行われていた。
私は馬車を途中で降りて転移で王城に行き変装魔法を解いて服を着替えて、戻ってきた勇者達の話を聞いた。
「俺たち、もっと強くなります!」
最後はそんな感じで締めくくって自分たちの宿に戻っていった。




