最初の目的地
ボロボロの革靴に大きめの黒ズボン。
シンプルな白のシャツ、背中には大きなバッグ。
あまり上品とは言えない格好の少年レノン。
一方で、純白のドレスを纏い太陽の光を浴びるたびに美しく輝く金色の長い髪の少女ティア。
2人は辺りには何もない田舎道をゆっくり歩きながら会話を楽しんでいた。
「この辺り本当に何もないわね……まぁ風は気持ちいいけど」
「確かにこの辺りは山とか道ばっかりで何もないよねぇ……。でももう少し歩いたところに村があるよ! ボクはよくそこで買い物してるんだ! まぁ小さい村なんだけどね」
「ふぅん。なんだか楽しみだわ!私ね、アルフランの姫として世の中のことはすごく勉強したの……様々な言語の学習、食事のマナーやダンスの踊り方。本当はやりたくないことばっかり! 自由に外出はできないし堅苦しい口調で話さなきゃいけない。どんな時でも笑顔でいなければいけない……。でもこうして初めて自由になれたの! だからね……。あのねレノン、私ね? 村の人達とお話ししてみたいわ!」
ティアは右手を口の前に持ってきてフフッと笑みを浮かべた。
心なしかピョンピョン跳ねているような気もする。
その姿は一国のお姫様というより可愛げのある1人の女の子だった。
レノンとティアが他愛のない会話をしていると、ティアの背後から半透明のティアによく似た少女がスッと現れて強引に会話に入ってきた。
『あのぅ〜。レノンさん、ティアさん? お二人の会話を邪魔するようで悪いんですけど、お二人はまず最初にどの落とし子を回収するおつもりなんですか?』
「うわぁぁぁ! びっくりしたなぁ! 急に出てこないでよ!」
「ちょ、ちょっとあなたね!? いきなり出てこないでよ!」
レノンとティアは唐突にティアの背後から現れた【再生の権能】「女神ティアドロップ・クライノート」に声を揃えて注意した。
なんだか半透明のその少女は少し落ち込んでいるようにも見えた。
「す、すみません……でもこれからのことを知っておこうと思いまして……」
その弱々しい声に2人は気を悪くしたのか顔を見合わせ「ごめん」と謝った。
「これからねぇ……私達は落とし子にあまり詳しくないからあなたは何から回収すべきだと思うの?」
「そうですねぇ、【審判の権能】でしょうか。序列第5位ということもありますが何より彼は“話がわかります”」
「【審判の権能】っていうと、「聖騎士シュヴァリエ・クライノート」だね! ここからどのくらいかかるのかなぁ。ティア分かる?」
「天の書に書いてあった情報だと“騎士国家フィルメーラ”ね。なら一番近いわよ!あの国には何回か行ったこともあるし、騎士王のお爺様とも交流もあるわね」
「さっすがお姫様……頼りになるなぁ……」
「うふふ。では“フィルメーラ”へと向かいましょうか。レノン! ティア!」
これからの予定が決まり、2人と1人がお互いの今までの生活などを話しながら道を歩いていると少し先に小さな村がポツリと見えた。
「あ、パカロ村が見えたよ! 着いたらご飯でも食べて行こうか」
「そ、そうね! 歩いてお腹も空いてきた頃だものね!」
「……はぁ、緊張してきたわ……」
「大丈夫だよティア〜。村のみんなは優しいし緊張することないって!」
そんな会話をしているうちに村の方からこちらに向けて大きな声で呼びかけられた。
「おぉ〜い! レノンじゃないの! この前来たばっかりじゃないか! 何か買い忘れたものでもあったのかぃ? それともおばさんが恋しくなったってか?」
村の入り口には恰幅の良い40代くらいの女性が笑いながらレノンに手を振っている。
レノンはそれを見て笑顔で手を振り返して村へ走って行った。
「こんにちわルゥマおばさん! 色々は話したいことがあるからお店行ってもいい?」
「いいともさ! それはそうと隣の可愛い娘は誰なのさ?まさか……お嫁さんかい!?」
「ち、違うよ! この娘のことも話すからはやくご飯作ってよ! は・や・く!」
「あっはっは! わかったよ! それじゃあ待ってるね」
まるで親子のような会話にレノンはなんだか顔がほころんでいるように見えた。
一方ティアはおばさんの勢いに押されて口をぽかんと開けていた。
そして2人は重い荷物を抱えてルゥマという女性が営む小さな店へと向かった。
まだまだ続きますよー!毎日楽しく執筆しています。初めて小説を書いたので多くの人に読んでもらえて凄く嬉しいです!
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