天の書
またまた拙い文章ですが読んでいただけると光栄です
窓から朝日が差し外から鳥たちが挨拶のように鳴く。
木製の温かみのあるテーブルには出来立ての朝食が並んでいた。
そんな平和な朝にピリピリとした空気が流れている。
テーブルにはティアとレノンが向かい合わせで座っている。
起きたら自分が下着姿だったのを恨んでいるのかティアはレノンの顔をふくれっ面で睨んでいるが、レノンはそれを気にせず朝食を楽しんでいる様子だ。
「どうしたの?ティアも食べなよ?冷めちゃうよ?」
レノンが問いかけるとティアはさらにきつく睨みつける。
だが空腹には勝てなかったのかパン一枚に手を伸ばしそれを頬張る。
するとティアは口に手を当て目を丸くし、美味しいと小さく呟く。
それをみてレノンは嬉しそうに微笑んだ。
「私を助けてくれたのよね‥‥ありがとう。それと詳しい自己紹介がまだすんでなかったわね」
「私はアルフラン国の王女”ティア・ナイトドロップ”よ。一昨日16歳になったわ。水と木の魔術が得意でよく召使いや騎士たちに披露したものだわ……それがあんなことになるなんてね……」
ティアの大きく宝石のように綺麗な瞳から大粒の涙がボロボロと零れ落ちる。
ティアは俯き肩を震わせながら誰かの名前を呟いたり、「ごめんなさい」「私のせいで」と繰り返し小さな声で謝っているようだった。
レノンはティアが落ち着くようにと適温の紅茶を彼女にスッと差し出した。
そして優しく問いかけるようにレノンは言う。
「ねぇティア。何があったのかボクに話してくれない? 何か力になれるかもしれないから」
レノンの問いに対してティアはふるふると首を横に振った。
そして涙声でレノンにこう返した
「それは嫌よ……関係ない貴方まで巻き込めないわ。ここで貴方が関わってしまったなら貴方もきっと殺されるわ……そんなのもう嫌なの。もう誰にも死んでほしくないの……」
重く、感情のこもった声。
それはきっと本心で固く結んだ決意の表れだったのであろう。
しかしレノンはそれを否定するように強くティアに告げた。
「ボクは誰かが目の前で泣いてるのに見過ごすこと何て出来ないよ。これから大変なことに巻き込まれるかもしれない。茨の道を進むことになるかもしれない。それでもボクは君の力になりたいんだ」
「だからこれまでのことを詳しく教えてくれないかな」
レノンの真剣な顔にティアは心を救われたような気がした。
もう誰も犠牲にしたくない気持ちもあったが、それよりもレノンがまるでヒーローのように見えた。
そしてティアはそっと頷きこれまでのことを語り始める。
「後悔、しないでね」
「……私が小さい頃に王城の地下に大切なものを保管しているとお父様に聞いたことがあるの。そして一昨日警備の隙をついて地下に忍び込んでその保管されている物を見に行こうとしたわ。地下は一本道で最奥まではすぐにたどり着くことができた。私はそこで”一冊の本”を見たの。見たことのない言語で書かれているようだったけれど好奇心に負けて本を開いてしまった……。それが事の始まり」
「未だに信じられない。本の中から、とても綺麗な宝石のようなものが突然目の前に出てきたの。そしてすごい光を放って目の前から消えていたわ。それで来た道を引き返していたら地上で怒号と悲鳴と戦闘音が聞こえて、それから……」
「王城の中に戻ると辺りは血まみれで悲惨な状況だったわ……。私は一人で逃げ出してきたの。お城を逃げ出してずっと逃げてきたわ。皆が繋いでくれた命を無駄にしないように、死なないように。敵の追っ手と何度も戦闘を繰り返したけれどついに力尽きて、次に目を覚ましたらあなたに助けられていた。これで全てよ。もう後戻り何て出来ないわ……」
また泣きそうになりながらもティアはすべてを話した。
歯を食いしばって服の裾を強く握りしめる。
自分の犯した罪と一時の好奇心を強く後悔しながら肩を震わせる。
そんなティアをレノンは優しく抱きしめて「つらかったね」とティアをなだめる。
その一言でティアはまた大粒の涙を流す。
どれだけの時間がたっただろうか、レノンはティアが落ち着くのを見計らって話を切り出した。
「ティア、ボクはもうティアを追う奴らに目を付けられていると思う。だからボクもティアと一緒に行動しようと思うんだけど、どうかな?」
ティアはレノンの提案に少し悲しい顔をしたがただコクリと頷くだけで何も言うことはなかった。
続けてレノンは話の中で気になった部分をティアに尋ねる。
「その地下にあった本を見たいんだけどいいかな?一応ティアを寝かせた部屋に置いてあるんだけど」
「えぇ……良いけど見たことのない文字で書かれていたの。私も言語は勉強していたけれどあんな文字は見たことないかったわね……。あなたにも読めないと思うけど、今持ってくるわね」
ティアはそう言うと寝室に向かい本を手にしてレノンに手渡した。
その重みにレノンも少し驚いたようだ。
「王女様が読めないような言葉をボクが読めるわけないけど、何かわかるかもしれないし一応確かめてみよう。えぇっと……」
レノンは表紙をなぞるように文字を確かめる。
その様子をティアは神妙な顔つきで見ている。
その時レノンが呟いた
「天の書……そう書いてあるよ……これ」
「ねぇ……ティア。ボクこれ読めるよ!」
レノンはそう言ってティアの顔を見て笑みを浮かべた
ティアドロップ・クライノートを読んでいただきありがとうございます。投稿する日にちが空いてしまい時間もまばらですがこれからもおっていただけるとありがたいです。次回も早めに更新できるよう頑張りますのでよろしくお願いします。