逃走→絶望→打開
私は逃げ続けた。
いくら後悔したところでこの獣達・・・いや魔獣達から逃れることなんてできない。
あの日、王宮地下で”本”を開き逃走劇は始まった。
地下からでも聞こえるほどの戦闘音。
私は急いで音の正体を確かめるため地下を抜けて王宮の中に駆けた。
私の目に映ったのは魔獣と呼ばれる獣たちと生死をかけ戦う騎士達。追われ食い殺される召使い達。
そして黒いローブ姿の男
辺り一面の血、立ち込める血の匂い。
怒号・悲鳴・嗚咽。戦いの”におい”
「お嬢様! どうかお逃げください! 遠い……遠い場所へ!」
私専属の執事である”バトラー”が声を荒げ魔獣たちを薙ぎ払う。
しかし魔獣達の猛攻は続く。
振り払えども立ち上がりその鋭い牙で噛み、喰い千切る。
王宮に轟く咆哮。
並みの戦士では太刀打ちできない執事バトラーでさえも長くはもたないだろう・・・
私はただ何も言わずバトラーや騎士達が開いてくれた出口への一本道をひた走る。
命を張り、道を開けてくれた者たちへの犠牲を無駄にしないために。
しかしそう甘くもない。
魔獣達が、ローブ姿の男が私の前に立ちはだかる。
「そう簡単に逃げられると思うなよ。"心臓の適合者よ”あの人界大戦から1000年、どれほどお前を探していたことか・・・」
目の前のローブ姿の男はそう語りかけてくる。
この男が何を言っているのか理解はできなかったが、ここでどんな手を尽くしても殺そうとしてくる意志が伝わってきた。
逃げなければ……どこへでもいいから、遠くへ。
できるだけ、遠くへ……
しかしがむしゃらに走ったところでこの状況を打開できるわけがない。
そう思考を巡らせるも解決策は見つからない。
絶 望
ここで終わる、何もかも。
皆が開いてくれた道が、何もかもが無駄に終わる。
そんな考えが頭を支配していく。
しかし、魔獣たちは次々と倒れていく。
騎士たちの放つ鉛の弾丸、貫く長槍、道を切り開く剣。
「お嬢様! どうかお早く! 私たちの剣が、心が折れぬうちに! どうか!」
道は開かれた。
騎士達は魔獣を抑え、バトラーはローブ姿の男と対峙している。
今しかないんだ。
「あなた達……絶対に! 絶対に生きていて! また、またいつか……!!!」
私は心からそう叫び一筋の道を駆け抜ける。
純白のドレスを血まみれにさせながら。
私は王宮を抜け出した
こんにちわ。秋葉きもおです。第二話となりました。ここから更に物語が動き出します。頑張って書き続けるのでどうか見てください!!