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Face of the Surface

ああああやだあああ!!!

作者: 悟飯 粒

「なぁ狩虎。お前幽霊とか得意かよ。」


遼鋭と宏美の3人で歩いていると宏美がいきなりよくわからないことを言いだした。


「………まぁ、得意とまではいかないが耐性はあるな。一応妹と弟を持つ長男だからな。」

「ふーーん………よし、お化け屋敷に行こう。」

「よし、遼鋭!帰ってス○ブラするぞ!」

「ちょ、待てよ!何逃げようとしてんだよ!」


俺が全力で走って逃げようとすると、宏美に肩をがっしりと掴まれ逃げないように首を軽く締められる。


「こんな真夏のクソだるい暑さをすっ飛ばすにはさ、やっぱりホラーに限るよな?なぁ?」


今は8月。夏休み中だ。それだと言うのに何かして遊ぼうと市中をあてもなく歩いている。サッカーでもしようかと思ったが、よく考えると俺はリフティングもボールコントロールも出来ないのでやっていてつまらないというなんとも悲しい結論に辿り着いてしまい挫折。そしてその悲しさのあまり宏美の頭が可哀想なことになって、お化け屋敷に行こうだなんて常人じゃ考えられないようなことを喚き散らしている。というわけだ。


「北海道の夏程度で暑いだなんてまだまだだな。東京行ったら死ぬぞ。」

「………本当お前の耐熱性能はどうなってんだ?頭沸いてんの?」


俺は夏だろうと冬だろうと常にパーカーのジーパンだ。しかもこれで運動するからね。どんなに暑くても上は脱がないと決めている。だって素肌見られたくないし………


「暑いのはいくらでも耐えられるだろ。むしろ寒さには耐えられない。死に関わる温度とか本当おかしい。北海道寒すぎだろ。南国になれよ。」

「お前本当に北海道人なのか?僕はいつも不思議だよ。」

「生魚食えなくて寒いのが苦手なだけで、生まれも育ちも北海道だ。文句あるか?」

「文句しかないんだよなぁ……」

「でも狩虎は牛乳とラーメンと卵が好きだから立派な北海道人だよね。」

「まぁな………ミスター道産子と言われる所以だな。」

「大切な部分が欠落してるのによく言われるな………それじゃあお化け屋敷に行こうか。」

「よし!家に帰ってお好み焼きを食おう!暑い日は汗をかくにかぎる!」

「そこまでやなのか!?お化け屋敷がそんなにやなのか!?」


宏美は鮮やかなステップで俺の懐に潜り込むと、洗礼された動きで首に手をかけコブラクラッチを極めた。


「それにせめてちゃんちゃん焼きって言え!北海道らしくないだろうが!」

「はぁ!?北海道人がちゃんちゃん焼き食ってると思われるとか恥だわ!!あんなの食うんならクソまずいタピオカドリンクを飲んでる方がマシだ!!」

「そっちの返答は求めてないんだよ!!お化け屋敷が怖いのかって聞いてんだよ!!」

「お化け屋敷なんていう建物はこわかねーよ!!俺が怖いのはお化けの性質だ!!」


俺は宏美の腕をタップして、極め技から解放してもらった。


「別に見えないのは構わない。おどかしてくるのも構わない。だがな、やつらは自分が物理無効なくせにこっちには物理攻撃がありなんだよ。それが怖いんだ。」

「…………つまり?」

「対策のしようがない。やつらチート使って俺らを襲ってきてんだよ。チート厨と一緒に遊びたい奴なんていないだろ?」

「………よし、なおさらお化け屋敷に行きたくなった。行くぞ。」


有無を言わさぬ力で宏美は俺を引きずって近くの遊園地に連れて行く。


「え?ちょ、やだ!やだよ俺!……遼鋭!助けてくれ!お前もお化け屋敷になんか行きたくないだろ!?」

「いや、面白そうだからいいんじゃない?」

「遼鋭てめぇええ!!裏切りやがったなぁああ!!」


てな感じでお化け屋敷に到着だ。至る所に[肝試し]とかなんとか書かれたフラッグが置かれている。

平日の昼間だというのに行列ができてやがる………物好きが多すぎるだろ。そんなに肝を冷やしたいのか。勝手に心不全にでもなって直に幽霊にあってろ。


「いやーー人気だなぁ。さすがはお化け屋敷だ。」

「そんなに死にたいのか………バカな連中だな。」

「んーー、悲鳴がよく聞こえてくるね。これは楽しみだ。」


遼鋭の言う通り、お化け屋敷の中から悲鳴がどんどん聞こえてくる。手元のスマートフォンでここの評価を調べると………めっちゃくちゃ怖い!?失神注意!?バカじゃねーの!?


「いや、もう、本当勘弁してください。お化けとか本当もう、そういうの無理なんですよ………」

「だからいいんだろ。」

「くそがぁああ!!そんなにこの俺が怖がる姿を見たいのか!?こんなどうでもいい男の哀れな顔面が更に醜く歪む様を見たいのか!?」

「見たい。」

「見たい。」

「この腐れ外道がぁああ!!」

「はい次の方ーー。」


ああああ!!やだ!!本当もうなんなんだよお化け屋敷って!!

係りの人に促されるまま、俺達3人は老婆の顔の口のような、お化け屋敷に入った。ここからはもう、怒涛の叫び声を楽しんでいただこう。


「ぐぉおおおお!!!」

フランケンシュタインが影から飛び込んできた!!

「ぴゃぁあああ!!!」


「恨めしい……恨めしいぃい!!」

お岩さんみたいなやつが井戸からヌメヌメと這い上がってきた!!

「ぎゃあああああ!!!」


ガラガラガラガラ!!!

上空からいきなり骸骨が降ってきた!!

「どわっへぇあああ!?!」


「ばぁあああ!!!」

ろくろっ首が障子を突き破ってきた!!

「あ、どうも……」

「なんでろくろっ首はオーケーなんだよ。」


ペシン!!

宏美に頭を思いっきり叩かれる。


「いや、だって、首長いだけだし………」


ろくろっ首って全然怖くないんだよなぁ。普通の人にしか見えないんだよね。


「あ、でも、一つ目とかは苦手かな。目が一つってめっちゃこわ、……い…………」


宏美の後ろに一つ目の大男が立っていた。右手を振って笑いかけてきている。


「ぐあってまらぁあ!?!?もぉおおおやだぁああああ!!!!」


俺は全力で走って逃げた。道中何があったのかなんて何も記憶がない。もうとにかくほとんど目をつぶった状態で、無我夢中で逃げていた。

気がつくと屋敷の外に出ていた。後ろには爆笑している宏美と遼鋭。


「いや、ごめんね狩虎。ちょっとイタズラしたくなっちゃってさ………」


両手が右手に持っていたのは一つ目のプリント。それを両目に隠すように貼っつけて俺をおどかしたのだろう。

………この男はやはり器用すぎる。そして最も人が嫌がることを楽しんでやる。最悪だよマジで。


「もう無理っす。俺もう無理っす………お化け屋敷とか本当もう無理っす。お慈悲をください………」


最悪だ、最悪だよ………なんで金払ってこんな心臓に悪いことしなきゃいけないんだよ。それなら勉強している方がまだ利益あるわ。


「それじゃあ今日はホラー系のビデオでも徹夜で見るか。」

「ああああああ!!!やだ!!!俺が何をしたっていうんだ!!!ねぇ、やめよ!?やめましょ!?こんな不毛なこと………ヤダヤダヤダヤダ!!!ヤダァァアア!!!!」


結局徹夜でリ○グとか、あまり知られてないようなマニアックなホラーを見させられ続けた。終始叫んでいつの間にか夜になっていた。最悪な1日だった。

実際にこういう北海道人がいるらしいですね。やけに如実に語られてるなぁ……まるで本人みたいだ。

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