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天翔ける宙(そら)の彼方へ  作者: 早秋
第2部第4章
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(9)疑似精霊の調整

 新しい世界に生まれ変わった(?)『天翔』では、今現在も新しい領域を捜して、探索が行われている。

 当然それは、カケルの意思に関係なく、『天翔』内の構成員が日々着実に行っていることだ。

 とはいっても、カケルがこの世界に現れる十年間は、元あった世界に加えられた新しい領域を調べるのに費やされていた。

 それもそのはずで、もともと貿易によって得ていた資源のすべてを独自で手に入れられるようにするというのは、口で言うのは簡単でも実際に行うのはなかなか難しい。

 きちんと安定的に資源を得るようにするために、それほどの時間がかかったというわけだ。

 

 勿論、その間もそれ以外の場所の探索を行わなかったというわけではない。

 『天翔』は、カケルを頂点とした国のような組織だが、すべての民を統制しているというわけではなく、中枢をなしている組織以外は自由な活動も行っている。

 その最たるものが冒険者で、彼らの活動は、『天翔』の領域を広げるのにも一役買っていた。

 組織に縛られていない彼らは、自由にカオスタラサに飛び出して行き、様々な情報や資源を持ち帰ってきている。

 それは今現在でも続いていて、『天翔』にとっての貴重な探索要員なのである。

 

 そもそもゲームだった時に、主人公――すなわちカケルが冒険者の一人だという設定から始まっているので、『天翔』に冒険者ギルドが存在するのは当然のことである。

 冒険者ギルドは、政府や民間から依頼を受けて、それらを冒険者に提供することにより手数料を得ている。

 あるいは、冒険者が新しいルートやヘキサキューブを発見した時に、複雑な手続きを代わりに行ってくれる組織になる。

 ちなみに、ゲームの時には、カケルは冒険者の一人でもあり、冒険者ギルドの運営側でもあった。

 具体的には、冒険者ギルドにどれくらいの人数を配置して、どれくらいの活動を行わせるかを指定してたりもしている。

 勿論、現実となった今ではそんなことはしていないが、いずれにしても冒険者ギルドが『天翔』にとって重要な組織の一つであることに変わりはないのである。

 

 

 カケルは『天翔』の総統ではあるが、冒険者ギルドのメンバーの一人もでもある。

 そのため、時にはギルドの依頼を受けることもあった。

 といっても、総統であるカケルが直接ギルドに向かうことはせずに、個別に依頼を受けられるように特別扱いになっている。

 『天翔』そのものではなく、カケル個人の資産は、こうした冒険者としての活動で得たものがほとんどなのだ。

 

 カリーネを乗せたテミス号は、現在『天翔』の勢力圏内で探索作業を行っていた。

 その目的は、主にカケルが受けた冒険者ギルドの依頼をこなすためである。

「――その辺りは、『天翔』も変わらないのですね」

 少しだけ感心したように言ってきたカリーネに、カケルは頷きながら答えた。

「まあ、そうだね」

 まさか、ゲームの世界の名残で、どちらも成り立ちが同じだから当然だとは言えず、カケルは無難な返しをすることしかできなかった。

 

 そんなカケルの様子に気付かずに、カリーネは感心したままギルドの依頼内容を見ていた。

「中身はそんなに違いがないような……」

「ああ、それはな。そもそもやることは、どこであっても変わらないから、当然だ。ただ、やっぱり取りに行く物や難易度は、全く違うはずだぞ?」

 カケルがそう教えると、カリーネはさらに注意深く依頼を見るようにした。

 といっても、カリーネは冒険者が取りにいく採取物などに詳しいわけではないので、違いなど判るはずもない。

 付け加えると、『天翔』の技術レベルは、この世界では段違いなので、取ってくる物なども全然違うものがある。

 冒険者として、『天翔』内でも最高位にいるカケルは、当然受ける依頼もランクが高い物になっている。

 

 ただし、今乗っているテミス号は、組み込まれている武器や装備が、『天翔』ではなく世界(ダナウス王国)基準になっているので、そこまで危険な場所へ行けるわけではない。

 そのため、現在いる場所は、テミス号でも普通に活動できる場所だった。

「とりあえず、探索と分析をよろしく」

 乗組員にそう指示を出したカケルは、それ以降は特に何かを言うことはしなかった。

 この程度の危険度で、一々カケルが指示を出す必要はない。

 はっきりいえば、乗組員だけでも十分に対処できる場所で、カケルはお飾りでいるだけでも十分なのだ。

 

 それでもカケルが乗っているのは、疑似精霊であるテミスのためだ。

 テミスは、あくまでもカケルが主軸となって働いていて、最後の決断はカケルに従うようになっている。

 それらのことから、テミスの経験を積むには、やはりカケルが一緒にいる方がいいのだ。

 もっとも、カケルがいなくても成長はするのだが、いた方がいいのは確かなことだった。

 だからこそカケルは、テミス号になるべく乗るようにしているのだ。

 

 

 カオスタラサ内で探索を続けているテミス号だったが、カケルは要所要所でテミスに話しかけていた。

「テミス、どう?」

「はい。特に問題があるようには見えません」

 テミスがそう言ってくるのと同時に、カケルはクロエにも確認を取っていた。

 そこでクロエが頷くのを見てから、カケルは「そう」と頷いた。

 

 テミス号に積まれている探知装置で得られるデータと、テミスが処理を行っているデータは違いが出るわけではない。

 ただ、テミスが処理を行う前の生のデータだけを見ることもできるので、そこでの違いが起こる可能性はある。

 というのも、探索で拾ってくるデータは膨大なものとなり、それらをどの部分を抽出するのかということは、あくまでもそれまでの経験やデータによって切り捨てられたりするのだ。

 それが、疑似精霊にとっての知性や船の運用にも関わってくるので、これらの調整は非常に重要なものになる。

 探索によって得た膨大なデータから、どうやって重要な情報を見つけてくるのかは、人も疑似精霊も変わらないのだ。

 

 こうした細かい調整を行いながら、船は徐々に成長をしていくことになる。

 そのため、最初は同じような作りであるはずの疑似精霊に、性格がついてくるというのは、ある意味で当然のことなのだ。

 カケルは、そうした調整を行いつつ、テミスがきちんと成長していけるように、カオスタラサでの調査を続けるのであった。

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