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天翔ける宙(そら)の彼方へ  作者: 早秋
第2部第3章
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(6)探索完了

 未探索領域は、別に資源を持ち帰らなくても必要最低限の探索をするだけで十分利益にすることができる。

 今回のように、王国から直接依頼を受けるというのは珍しいパターンだが、今まで人が入っていない場所の探索を行って戻るだけでも十分なのだ。

 新しいルートが見つかって、その先にある未探索領域に行けたとしても、その船が必ずしも十分な装備を持っているとは限らない。

 というよりも、そういった場合のほうがほとんどだ。

 そういった場合は、新領域の発見だけを報告して、あとの調査や採取を他に任せてしまうのだ。

 そもそも冒険者の場合、新しいルートの発見だけで十分な利益を得ることができるので、無駄に危険を冒す必要はない。

 

 未探索エリアで一番危険なのは、どこに生息しているのかわからないヘルカオスであるが、それ以外にも危険は多くある。

 場所によっては、風に吹かれたように流されてしまったり、あるいは、灼熱地獄になったりなど、様々な環境要因が起こり得る。

 勿論、そういった危険地帯は、探知機によって未然に発見することができるが、未知の自然現象となれば、そう上手くはいかない。

 さらに、探知機で事前に見つけたとしても、ヘルカオスやほかの自然現象によって、どうしてもそこを通らなければならないこともある。

 そういうことを考えれば、一概に船の装備が上がればいいというわけではない。

 どの船で、どの場所を選んで、新しいエリアを探索していくのか、それこそが船に乗っている者たちにとっての腕の見せ所なのだ。

 

 

 テミス号は、当たり前だが、『天翔』の技術レベルではなく、ダナウス王国のものに合わせて作られている。

 その構成は、以前の機体よりもさらに隠密性に優れた造りになっている。

 言葉は悪いが、以前の機体が盗みに入った家に人がいれば、それを害する強盗型だとすれば、今のテミス号は、完全隠密型になっている。

 一言でいえば、攻撃力を極端に落として、探知と逃亡に優れた機体だ。

 もしヘルカオスに察知されれば、逃げの一手を打つしかないほどの攻撃力しか持っていない。

 その分、隠密性に優れているので、戦闘をせずにヘルカオスの探索をするのには非常に便利な機体といえるだろう。

 

 そのテミス号の艦橋は、現在とてつもない緊張感に包まれていた。

 それもそのはずで、機体のすぐ傍に、ヘルカオスが一体うろついているのだ。

 もし見つかって、テミス号に攻撃が一撃でも当たってしまえば、一瞬で沈められてしまう。

 そんな危険地帯を通っているのだから緊張しないはずがない。

 

 そのヘルカオスを十分にやり過ごしたところで、カケルが艦橋全体に声を掛けた。

「よし。もう十分だろう」

 その呼びかけで、最大限に高まっていた緊張感が緩んだ。

 とはいっても、完全にゆるゆるになったわけではない。

 近くのヘルカオスをやり過ごしたからといって、別のヘルカオスが出てくる可能性もあるし、避けなければならないような自然現象も起こり得る。

 未知領域の探索では、緊張感を完全になくすことなどできないのである。

 

 

 とはいえ、いくら未探索領域とはいえ、ずっと危険地帯が続くわけではない。

 点在する安全領域というのも存在するので、そこまで到達できれば、ある程度の休みは取ることができる。

 また、そうでなければ船の中の人々がもたない。

 

 そんな安全地帯に到達したテミス号では、カケルとクロエがこれまで取得できたデータの確認を行っていた。

「うーん。今のところ資源としては微妙だな」

「そうですね。危険性と天秤にかければ、大艦隊を派遣する意味はないでしょうね」

 未知領域の探索を難しくしているのは、ひとえにヘルカオスの存在が大きい。

 邪魔なヘルカオスさえいなくなれば、場合によっては危険な自然領域を避けながら、小型機で採掘を行ってもいいのだ。

 そのために、事前に情報を得たうえで、大艦隊を派遣してヘルカオスを先に処分してしまうという方法も取ることができる。

 中型機や大型機の場合は、その船の大きさのお陰で、自然現象が邪魔をして通ることができないということも多々あるのだ。

 

 今までテミス号が通って来た場所は、当然のように探知機で周辺の資源の調査も行っている。

 というよりも、それらのデータが欲しいがための、王国からの依頼なのだ。

 結果いかんによっては、軍の派遣なども考えられるのだが、今のところはそこまでしてこの領域を開発する必要性は感じられない。

「まだまだ探索領域はあるが、この分だとあまり期待できそうにないな」

「そうですか?」

「まあ、ただの勘だけれどね」

 カケルは気楽な調子でそう言ったが、何故かクロエは難しく考え込むような顔になった。

 

 そのクロエの顔を見て、カケルは首を傾げた。

「どうしたんだ?」

「いえ。カケル様がそうおっしゃるのであれば、打ち切ってもいいかなと、少しだけ思っただけです」

「いやいや、流石にそれは気が早すぎるな。この先に何かあるかもしれないから、責めてあと一日くらいは真面目に探索するよ」

 ダナウス王国から受けている依頼は、未探索領域の調査であり、結果を持ち帰ることが重要である。

 流石にすべての領域を探査してほしいという依頼ではなく、出来る範囲で調査を行い、その結果によって受け取れる報酬も変わって来る。

 王からの直接依頼なので、報酬がケチられるという心配もまずありえないため、さっさと引き上げるという選択もありなのだ。

 とはいえ、テミス号の乗組員たちの訓練も兼ねていると考えているカケルは、今すぐに戻るつもりはなかった。

 

 そのカケルの考えに気付いたのか、クロエと同じように傍に控えていたミーケが、艦橋を見ながら言った。

「この辺りは、皆の訓練にちょうどよさそうだにゃ。折角の機会だから、このまま続けたほうがいいにゃ」

「そういうことだな」

 カケルがそう答えると、クロエも理解したような顔になって頷いた。

 もとから反対するつもりはなかったクロエだが、ミーケの言った理由に納得できたのだ。

 

 

 結局、ダナウス王国から受けた依頼は、テミス号の乗組員への訓練期間と化した。

 なんだかんだで技術の習熟を図るには、実践が一番いいとわかったのだ。

 調べた範囲内には、いくつかの希少資源が出てきていたが、それをダナウス王国がどう判断するかはまた別の問題である。

 カケルは、調べた範囲の全データを王国へ渡して、依頼は終わりという事になったのである。

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