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天翔ける宙(そら)の彼方へ  作者: 早秋
第2部第3章
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(2)各国との関係

ほぼ説明回?

 三つの国が『天翔』を国家として認めるという話は、それぞれの国に連絡をしてから数日後には正式発表された。

 国同士のやり取り、しかも複数の国が関わっているというのに、これほど早く正式に報道されたとなると、最初からそういう手筈になっていたとしか思えない。

 『天翔』側はなにも聞いていたないが、事実三カ国の間でそういうやりとりがあったのだろうと推測するのは当然のことだ。

 カケルもアルミンとフラヴィから報告を受ける前からそう考えていたので、ある程度の常識があれば誰でも思いつくようなことなのだろう。

 なぜかアルミンとフラヴィは、カケルがそのことを言うと感心したような顔になっていたが。

 

 三つの国が『天翔』を国家として認めると発表されてから早一週間。

 世間では、様々な反応が出ていた。

 その中でも一番顕著な反応を示したのが、ユリニアス皇国だった。

 ヒューマン至上主義を掲げるユリニアス皇国は、カケルを除く住人がすべてナウスゼマリーゼで構成されている『天翔』を認めるはずがない。

 ある意味分かり易い反応に、皆が当然だろうなという反応をしていた。

 むしろ、この段階でユリニアス皇国も認めたら、なにがあったのかと全世界中で驚かれることになるだろう。

 

 というわけで、『天翔』本部へと戻ったカケルは、アルミンやフラヴィと今後の対策について話をしていた。

 まあ、対策といっても、方向性はすでに決めているので、あとは雑談もどきである。

「しかし、ロイド王国も大変だな」

「あそこは、立場上いろいろな国に挟まれて大変ですから」

 他人事のように言ったカケルに対して、フラヴィがクスリと笑ってそう返した。


 ロイド王国は、この世界において、一番規模が小さな国家になる。

 そのため、バランサーといえば聞こえがいいが、要は大国に挟まれて、時には理不尽な要求を受けざるを得ないこともある。

 今回の場合は、恐らくユリニアス皇国辺りに頼まれて、探りを入れるように言われていると、『天翔』は推測している。

 ……というよりも、ほぼ間違いないという確定情報も手に入れていた。

 ついでにいえば、ユリニアス皇国以外の国からも同じようなことを言われていることもつかんでいる。

 弱国としての厳しい状況に、カケルたちはむしろ同情さえしている。

 

 その目的は、当然ながら真っ先に『天翔』を国として認めることによって関係を深めることだ。

 その上で、『天翔』関係の情報を手に入れられればなおいい。

 なんとも分かり易いことだが、そもそも外交とはそういうものである。

 第三国を通じて敵国に情報が流れることが分かっていても、その関係を切ってしまえば、国交なんてものは結べないのだ。

 『天翔』は別に他国と交易をする必要がないので、国交など結ぶ必要はないのだが、それはそれでひとつの情報となる。

 その国がどういう方針で動いているのかということを知るのは、非常に重要なことなのだ。

 

 それよりも『天翔』にとって厄介なのは、ダナウス王国である。

「ダナウス王国からは、国交樹立の要求も来ているのか?」

「ええ。国家として認めるという発表と同時に来ていますね」

「それもまた分かり易い」


 ダナウス王国の目的は、考えなくてもわかる。

 『天翔』の部隊がダークホエールを討伐したことによって、戦闘技術だけでも十分に利益になることが示された。

 ダナウス王国ほどの大国であれば、十分に対等な取引ができると見込んでの国交開設要求なのだ。

 もっとも、『天翔』側にはそんな要求を呑む必要はまったくない。

 カケルがダークホエールを討伐するための技術を見せたのは、別に『天翔』と他国の間に国交を結ばせるためではないのだ。

 

 完全に鎖国した状態で運営して来た『天翔』にとっては、ダナウス王国を始めとした他国当の交易は、デメリットのほうが大きい。

 先を行っている技術を盗まれることもさることながら、ナウスゼマリーゼ以外の種族をいれることによって、余計な波風が起こる可能性が高いためだ。

 ナウスゼマリーゼの忠誠心を考えれば、内乱などを扇動されるという心配はほとんどないとは思うが、そもそもゲームと同じように行くかどうかはわからない。

 それを考えれば、余計な要素を入れたくないと考えるのは、当然のことである。

 

「どうされるのですか?」

 意味ありげな視線を向けて来たクロエに、カケルは肩をすくめた。

「いや、別にどうもしないさ。……そのうち、大使館くらいは置くことになるかもしれないけれど、いまのところは考えてないからな」

 先日カケルが決めた方針では、どの国とも国交を結ぶつもりはないとし、大使館すらも置く予定にはなっていない。

 もっとも、いつまでも躱しきれるかは疑問なので、一応大使館くらいは置いてもいいのではないかという余裕はもっている。

 まあ、大使館の設置が終われば、また次、そしてさらに次と、要求がエスカレートしてくるのは目に見えているのだが、それでもカケルの今後の活動を考えれば、全ての要求を断るのは止めておいたほうが無難である。

 カケルは今後も冒険者として、テミス号に乗って活動していくつもりなのだ。

 

 そのカケルの言葉を引き継ぐように、フラヴィがさらに付け加えて来た。

「カケル様が活躍すればするほど、こちらのやり取りが楽になりますから」

 冒険者としてのカケルの価値が上がると、その腕を失うのが惜しいと思われるようになる。

 普通に考えれば、国同士の関係として釣り合うようなものではないが、カケルが『天翔』の総統であることが、それを可能にしている。

 それによって関係が悪化するかもしれないが、そうなったとしても、『天翔』が困ることはほとんどない。

 

 見方によっては『天翔』が上から目線で他国を見ているともとれるが、実際この世界のすべての国を蹂躙しようと思えば出来るのだから、あながち間違っていない。

 それほどまでに、『天翔』とこの世界の各国との技術力の差がある。

 もっとも、いまのところ『天翔』の上層部の誰も面倒なのでそんなことをしようとは、まったく考えていないのだ。

 世界に対して何もしていない『天翔』が、武力で他国を制したところで、反発されるだけなのだから『天翔』にとってもなんのうまみもない。

 それくらいなら、技術を餌に相当有利になるように交易条件を結んだほうがましである。

 ただし、技術は一度渡してしまえば返してもらうことができないために、将来的に見れば不利になるのはわかり切っているので、それもするつもりはない。

 

 この先何十年か経てばどうなるかはわからないが、少なくとも技術が『天翔』に追いついてこない以上は、まとものな外交交渉をすることは不可能である。

 そして、『天翔』は『天翔』で、簡単に追いつかれるつもりはないので、よほどのことが起きない限りはいまの状態が続くはずである。

 そう『天翔』の上層部は考えていた。

 カケルもむやみに他国に攻めようなんてことは考えていないので、今のところ彼らとまったく同意見だ。

 いまカケルの頭にあるのは、どうやってテミスを育てて行こうということと、折角来た新しい世界をじっくり見て行きたいということだけである。

 『天翔』の運営は、自分がいなくても十分回って行くことが分かっているので、むやみに口出しするべきではないと考えているのであった。

お久しぶりです><

すみません。ちょっと作業が立て込んでしまいまして、二週間も開けてしまいました。

また一週間ごとに戻る……と思います。


そして、いつものことながら地の文が多い説明回に。( ノД`)

今回の話、しっかりと他国の登場人物とか出して、会話をしながら文章にしたらどれくらいの長さになるのだろうと、余計なことを考えてしまいました。

面倒なので(コラ)、そんなことはしませんが。


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