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天翔ける宙(そら)の彼方へ  作者: 早秋
第2部第2章
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(10)スクルド号での探索

遅くなりました。m(__)m

 ベルダンディ号のいる場所から数か所のルートを越えた場所に出たスクルド号は、そのままその場所の探索を開始した。

 そこは未開発エリアの中でもさらに奥に行った場所になり、当然ながら危険度も最高難易度になっている。

 下手な冒険者では、近付くことすら難しい場所なのだ。

 現在のスクルド号は半数が新メンバーになるのだが、そこは選ばれている者たちが『天翔』でも一流と呼ばれていた者たちなので、きっちりとカケルの指示についてこれていた。

 それを見たカケルは、ちらりとクロエを見た。

「思った以上に着いてこれているみたいだが、解禁しても大丈夫だと思うか?」

 そのカケルの問いかけに、クロエは少し黙ってから答えた。

「……とりあえず、小一以時間ほど試してみては如何でしょうか?」

「うーん。なるほどね。じゃあ、ちょうどよさげなところを探してみようか」

「畏まりました」

 クロエがカケルに頭を下げたところで今後の方針が決定した。

 

 ただし、そのやり取りを聞いていた従来からの乗組員はそれどころではなかった。

 そこかしこで、慌てて新人たちに指示を飛ばす様子が見られた。

「おい、のんびり旅行はこれで終わりだぞ」

「完全に着いてこいとは言わんが、なんとか食らいついてこい」

「……習うより慣れよ、だな。まあ、頑張れ」

 それは、新人たちを励ましているといよりも、自分たちに活を入れているようにも聞こえる。

 いや、実際その通りなのだ。

 従来の乗組員が半数しかいない状態で、カケルが望んでいる能力をどこまで出せるか、彼らにもよくわかっていないのである。

 

 その様子を見ていたカケルは、苦笑しながら呟いた。

「いや、いくらなんでも、そんなに無茶なことをするつもりはないんだけれどな?」

「新人を上手く使いこなすこともベテランの重要な仕事なのですけれど……」

 カケルに同意するように、クロエもそう言いながらため息をついた。

 そのふたりの言葉を聞いて、ベテラン乗組員が顔を引きつらせることになった。

 彼らの心の中では、一度に半数も入れ替えられたら流石に無理、と叫んでいた。

 勿論、カケルとクロエに向かって実際にそんなことを言えるような強者は、一人もいなかったのだが。

 

 

 艦橋が妙な緊張感に包まれたまま、スクルド号はカオスタラサを進んでいた。

 これまで何度かヘルカオスを躱しているのだが、カケルはそんなことを感じさせない様子でモニターを見ている。

「おっ? この辺ならよさげかな?」

 カケルがそう嬉しそうな声を上げると、クロエも頷いた。

「確かに、よさそうですね。

 二人が今見ているのは、カケルの前に備え付けられたモニターで、スクルド号の周辺を映しているものになる。

 そのモニターには、先ほど話していたスクルド号の最大限の能力を解禁するのにちょうどいい場所が映っていた。

 それを確認したカケルは、早速とばかりに、その位置に向かうように指示を出した。

 

 その指示が出てから数十分後。

 スクルド号に乗った新人たちは、信じられない思いを抱きつつ、必死に先輩乗組員からの指示に従っていた。

 スクルド号がいる場所は、所謂危険地帯と呼ばれる場所になる。

 カオスタラサに生息しているヘルカオスやタラサナウスの行くとを阻む障害物の数々、そのすべてを避けるとなれば、針の穴に糸を通すような正確さが要求される。

 そのための指示をカケルは鼻歌でも歌いそうな気楽さで出しているのだ。

 勿論、それは表情だけで、出されている指示は非常に細かく、逐一変化している。

 そうでなければ、それだけの危険地帯を通り抜けることは出来ないのだ。

 

 新人たちにとって信じられないのは、危険地帯を通り抜けるための指示が正確かつ素早いからだけではない。

 それらの指示に混ぜるようにして、きっちりと素材になりそうな資源の探索も行っているのだ。

 そうした素材のありそうな場所を発見したカケルは、分析班に指示を飛ばして詳細な分析を行わせている。

 基本的には外れも多いのだが、中にはきちんとした使える素材があるということも見つけている。

 しかも、その見つけている素材は、『天翔』にとっても希少な物ばかりなのだ。

 これまでの探索で見つけたそれらの素材の価値を考えると、とんでもない額になるのは、船に乗ったばかりの駆け出しの冒険者であってもすぐに分かるほどだ。

 ましてや、スクルド号にとっては新人とは言え、『天翔』の中では所謂エリートといわれるような者たちに、それが分からないはずがない。

 

 結局、初めにカケルが言った通り、危険地帯の探索は小一時間ほどで終わった。

 危険地帯に生息しているヘルカオスに見つからない安全地帯に抜けたスクルド号は、しばらくその場にとどまって、一時間で行った探索の成果を整理していた。

 この作業を怠ってしまうと、あとで分析班が苦しむことになるのと同時に、重大な発見を見逃して無駄足を踏んでしまうことにも繋がりかねない。

 危険地帯を探索する冒険者にとっては、この作業は非常に重要なのだ。

 

 分析班が上げて来たデータを見ていたクロエが、カケルを呼んだ。

「――カケル様、これを見てください」

「うん? ……ああ、なるほど。走っているときは気付かなかったな」

「いえ。気付いていなくても、きちんと分析させたのはカケル様ですから」

 反省の色を見せるカケルに、クロエは笑顔を見せた。

 

 一方、艦橋にいる者たちは、カケルとクロエが何のことを話しているか分からずに内心で首をかしげていた。

 そんな中で、分析班のところに、クロエから最重要データとしが送られてきた。

「こ、これは……!?」

 それを確認した分析班のひとりが、慌ててそのデータの精査に取り掛かり始めた。

 そして、それを見ていた他のメンバーも慌てて作業に取り掛かる。

 たとえ一つの物が発見されたとしても、それを分析するには様々な角度から行う必要があるのだ。

 

 そうして出された結論は――。

「間違いありません。ホロクロムタイトです」

 分析官のひとりがそう報告すると、艦橋が騒めいた。

 ホロクロムタイトは、軽いのにきちんとした加工を施すと非常に頑丈になるというタラサナウスにとっては重要な部品の材料として重宝される素材なのだ。

 タラサナウス以外にも多岐に渡って使い道があるので、いくらあっても足りることがない資源とされている。

 ただし、ホロクロムタイトがある場所は、大抵が危険地帯とされるところなので、発見自体が容易ではないのだ。

 そのホロクロムタイトが見つかったとなれば、艦橋が騒めくのも当然といえた。

 

 分析官からの報告に、カケルは満足そうに頷いた。

「よかった。これで取りあえず、ただの遊びじゃないという面目は果たせたかな?」

「十分だと思います」

 本気でそう言っているカケルに、クロエは微笑を浮かべながら頷いた。

 『天翔』の冒険者にとってもホロクロムタイトの発見は簡単ではないのだが、たったこれだけで済ませてしまうカケルは流石といえた。

 

 そのカケルの言葉を聞いた新人たちは、呆然とした表情を先輩乗組員へと向けている。

 それらの視線を受けた先輩乗組員はといえば、口では何も言わずにただ黙って首を左右に振るのであった。

何とか今日中に間に合いました。

とりあえず、これで第2章は終わりになります。

次からは第3章です!

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