(10)重要な発見
整備場で思いがけずベニグノと遭遇したカケルだったが、別れたあとは特に問題も起こらず修理完了の手続きを終えた。
そのあとは、いつもの通り出発準備を行ってから、カオスタラサへと向かった。
「はあ~。やれやれ。なんか、久しぶりな気がするな」
「そうですね」
やっと落ち着けたと言いたげなカケルの言葉に、クロエもニコリと微笑んで応じる。
ペルニアを出たばかりだが、カケルにとっては何とも言えない安堵感を覚える。
ついでに、今回はあとをついてくる船がいないことも、それに拍車をかけていた。
ペルニアの大地の上ではなく、タラサナウスに乗ってカオスタラサの中で漂っているほうが落ち着けるというのはどうかとカケルは思ったが、不思議と嫌な感じはしないのであった。
尾行の船がいないことをいいことに、カケルたちはそのままペルニア周辺で、新たなルートの入り口を探すことにした。
二つ目の領域の探索は、まだまだ終わっていないが、せっかくの機会なので新しい手札を手に入れておこうと考えたのである。
そんなわけで、カケルはテミス号をペルニアから離れた場所に移動するように指示を出した。
ゲートを探すためには、資源を探すときよりもスピードを遅く、狭い範囲でしか探索することができない。
そのため、まんべんなくヘキサキューブの周辺を探すには、時間がかかりすぎるのだ。
勿論、政府は軍隊を使ったりして探索をしたりしているが、そのカオスタラサの広さに比べれば、海の表面をさらっているのとほとんど変わりがない状態だ。
とてもではないが、深海レベルのところは探索が進んでいるとは言い難い。
だからこそ、カケルのような冒険者たちがお宝を求めて探す余地があるのだが。
それだけ広大な場所の一点を探し出すのだから当然、運も必要になってくる。
カケルは今回も、ゲーム内で培った運を存分に生かすこととなった。
「あ、あった」
カケルたちがルートを探し始めて二日目のこと。
そろそろ見つからないかと考えていたカケルの目の前にあるモニターで、待ちに待った反応が出ていた。
「見つけましたか。さすがですね」
普通ではありえないような運の良さだが、カケルのことをよく知っているクロエの反応はその程度だった。
ただし、それは表向きのことだけで、内心では狂喜乱舞とまではいかないまでも「さすがカケル様!」と歓喜している。
それを表に出せば、カケルから引かれそうなので、出していないだけである。
そんなクロエの内心には気づかずに、カケルは笑みを浮かべた。
「ありがとう。まあ、ほとんど運のお陰だと思うけれどね」
「それは、カケル様があの世界で努力をされてこられたからです」
クロエが言う『あの世界』というのは、勿論ゲームのことだ。
ただし、カケルのとってはゲームでも、クロエたちにとっては間違いなく現実の世界だったのだ。
カケルもそれを否定するつもりはない。
むしろ、カケルにとってもあの世界は、間違いなく第二の世界だと考えてプレーしていたのである。
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新しいルートを見つけたカケルは、周りに尾行者がいないことを確認してからルートへと入った。
このときばかりは、カケルも多少は緊張する。
なにしろ、新しいルートを通るということは、その先に新しい世界が広がっているということに他ならないのだから。
勿論、通った先がすでに見つかった場所である可能性もあるが、通常運行やすでに見つかっているルートを使っていくのとでは、違った気分が味わえる。
この気分を味わえるのは、新しいルートを見つけた、あるいは知ったときだけなのだ。
さて今回はどんな光景が見られるだろうと、ドキドキしながらルートを通って目の前に見えた光景は、カケルにとっては予想外のものだった。
「・・・・・・あ~、そうくるのか。一応、確認してもらっていいかい?」
「はい」
カケルは具体的になにとは言わなかったが、クロエも同じ光景を目の前に見ているので、なにが言いたいのかはわかる。
すぐに観測機器を動作させたクロエは、予想通りの結果に頷いた。
「間違いなくヘキサキューブが存在していますね」
「そうか。それじゃあ、とにかく近付いてみるか」
観測機器では、見つかったヘキサキューブが居住型か資源型は確認することができない。
より詳細を知るためには、近付いて確認するしかないのである。
ちなみに、ヘキサキューブがあるまでかなりの距離があるのに、カケルとクロエが観測機器に頼らずにあると分かったのは、ヘキサキューブ自体が独特の形状と色を発するためである。
カオスタラサにヘキサキューブがある場合は、たとえ初心者冒険者であっても気付くことができるほどだ。
ゲーム内とはいえ、何度も新しいヘキサキューブを見つけて来たカケルとクロエが見間違うはずもない。
観測機器で確認したのは、あくまでも念には念をいれてのことだ。
それは、たとえカケルたちでなくても、ベテランになればなるほどそうするだろう。
世の中に絶対ということは、残念ながら存在していないのだ。
ヘキサキューブに近付いたテミス号の中で、カケルは困ったような顔になっていた。
「さてさて。近付いたおかげでヘキサキューブがあると確定したわけだけれど・・・・・・」
「そうですね」
「どうしたものかな?」
具体的なことを言わなかったカケルに、クロエが首を傾げた。
いくらクロエといえども、なんのヒントもなしにカケルの思考が読めるわけではない。
勿論、目の前にあるヘキサキューブに関係することというのはわかるので、そこから探りを入れることにした。
「今後の対応、でしょうか?」
各国にとってカオスタラサの中で一番一番重要な資源は、当然というべきか、居住型のヘキサキューブだ。
人が住めるヘキサキューブが増えれば増えるだけ、それは国力の増加につながるのだから。
ついで資源型のヘキサキューブになるが、これが見つかれば、ヘキサキューブという狭い範囲内に重要資源が多く見つかるからである。
とにかく、ヘキサキューブを見つけたということは、それだけ国家にとって重要な功績を示したということになる。
それは、逆にいえば、それそれの国の重要人物として取り込まれる可能性が高まったということを意味しているのだ。
クロエの問いかけは、間違いなくいままで以上に接触を図ってくるであろうダナウス王国に対して、カケルたちがどうしていくべきかというものだった。
「まあ、そういうことだね。これが居住型だった場合は、間違いなく国そのものが動いてくるだろうからな」
「そうでしょうね」
カケルの言葉に、クロエは大きく頷いた。
「下手をすれば貴族に任命なんてこともあり得るかもしれないからなあ。そうするとちょっと厄介なことになる」
「それも、そうでしょうね。・・・・・・と、いうことは?」
先ほどと同じように相槌を打ったクロエは、ハッとした表情をカケルへと向けた。
居住型のヘキサキューブを見つけたものが、それぞれの国で重要人物扱いを受けるのは、先ほどの理由からほぼ決まっていることだ。
そこから考えれば、その者に対して貴族として任命することも、国によってはあり得る対応だ。
そして、ダナウス王国は、過去の例からいってもその対応を取って来る可能性が一番高い。
そうなった場合に、『天翔』という組織をすでに抱えているカケルにとっては、厄介なことになるのだ。
なぜならダナウス王国の帰属になるということは、『天翔』が国家の下部組織として帰属することになるのだから。
そんなことは、当然カケルは望んでいない。
となれば、どうするべきか。
「・・・・・・一度戻る必要があるか」
ぽつりと呟やかれたカケルの言葉に、クロエが顔を輝かせた。
「それでは・・・・・・?」
「まあ、そういうことだね」
クロエの顔を見ながら笑顔を見せたカケルは、そのすぐあとに大きく頷いた。
こうして、カケルがこの世界に来て初めての『天翔』への帰還が決まったのであった。
す、ストックが切れてしまいました><
申し訳ございませんが、次の更新は一週開けさせてください。(8/20)




