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天翔ける宙(そら)の彼方へ  作者: 早秋
第1部第2章
16/89

(2)核

 カケルがこの世界に来て一カ月がたった。

 この一カ月、最初に見つけたルートの先の調査を行っていたが、残念ながら希少資源は見つけることができなかった。

 これ以上の範囲を調査し続けるのは効率的にあまりよろしくないために、カケルたちは次のエリアに来ていた。

 勿論、エリアといってもカオスタラサに線引きがされているわけではない。

 カケルは、調査地点までの往復する距離を考えて、ある程度の範囲をエリアとして考えている。

 そのエリア内で希少資源が見つからなければ、新しくルートを探し出して、その先にある新しいエリアで再び探索を行うのである。

 こんな方法がとれるのも、カケルが新しいルートを探し出せる運と実力があるからだった。

 現在ふたつ目のエリアに来ることができているのも、カケルが新しいルートを探し出すことができているからだ。

 

 きっちり探索するのではなく、ある程度のところで次のエリアに移るのにはもう一つ理由がある。

 カケルが見つけたルートはそれまで誰にも発見されていないものだが、これからもそうであるとは限らない。

 それならば、さっさと見つけたことをギルドに報告して資金を得るようにしたほうがいい。

 新ルートの発見は、報告すればかなりの資産を手にすることができる。

 ルートに関しては、発見者の権利はこの報告して資金を得ることだけになっている。

 ルートの一つ一つに管理する者を置いて使用料を得るとなると、かなりの人員と経費が掛かることになる。

 それならば、いっそのこと管理はしないで、懸賞金のようなものだけを出すことになっているのだ。

 

 カケルは報告で得た資金を使って、タラサナウスのオプションの更新を行っていた。

 そのおかげで、もう一つワンランク上のヘルカオスが出てきても逃げる以外の対処ができるようになった。

 新たに見つけたルートの先が、最初のものよりもさらに深部のヘキサカオスに向かうものだったので、装備の更新をするタイミング的にちょうどよかったともいえる。

 こうしてカケルたちは、新たなエリアでの調査を行っているのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦ 

 

 新しいエリアで調査を始めてすでに三日が経っていた。

 その間カケルたちは、ヘルカオスと遭遇することもなく、順調に作業を進めていた。

 残念ながら希少資源は見つかっていないが、機体が大きな損傷とかをしない限りは赤字になることもない。

 ついでにいえば、希少資源でなくとも大きく儲けの出る資源はある。

 そうした売値が高めの資源を持ち帰れば、今は借りている状態のタラサナウスを買い取るくらいには稼ぐこともできる。

 無理に希少資源を探して一攫千金を狙うよりは、地道に行ったほうがいいこともある。

 ……と、いうのがカケルの考えだった。

 

 いつもの通りに資源の探索を進めていたカケルたちだったが、周囲の状況を確認していたクロエがそれに気が付いた。

「カケル様、ヘルカオスです」

「ん? ああ、なるほど。今までよりもワンランク上だね」

 クロエの声に若干の緊張が混ざっていたことから何事かと思ったカケルだったが、モニターに映るヘルカオスをみてその疑問が氷解した。

 そこには、正八面体の形をしたヘルカオスが映っていた。

 ヘルカオスは、生物を模した形をしたものから、こうした無機質な形をしたものまで様々な種類がある。

 そして、どういうわけか、生物を模した形のものよりも、いま目の前にあるような無骨な形をしたものの方が強かったりする。

 もっとも今目の前にいるヘルカオスは、その中でも一番弱い部類になる。

 

 いま目の前にいるヘルカオスは、新しく装備したオプションの効果を確認するには最適な相手だった。

 カケルは、今までと同じように「隠れる」という選択肢をとることにした。

 オプションの機能を使って隠れるといっても、機体そのものが透明になったりするわけではない。

 それこそステルス機と同じように、相手から見えにくくするだけなのだ。

 当然何かの拍子に気付かれてしまうこともある。

 

 イリオモテヤマネコが獲物の鳥を狙う時のように、慎重にヘルカオスのそばまで近づいていく。

 そして、カケルが乗るタラサナウスが十分な距離まで近づいたところで、クロエが動いた。

「よし!」

 その結果を見て、カケルは思わず声を上げた。

 この世界に来てからは、初めての急所狙いの戦闘だった。

 この戦法で一番の利点は、正面から当たるときと違って、機体の損傷が少なくて済むというところだ。

 勿論、見つかってしまえばそれ以上の被害を受けることもあるが、それはそれで仕方ない。

 それよりも今回のように、確実に仕留められそうな場合だけに使えばいい。

 

 ヘルカオスを倒したあとは、解体を行う。

 彼らの体は、無機物と有機物でできているが、その中には〈核〉と呼ばれているものができていることがある。

 核は、主に転移結晶のバージョンアップをするための素材として使われる。

 どんな小さなものでも高値で取引されているので、冒険者たちにとってはねらい目の素材といえる。

 もっとも、その分機体が損傷してしまえば、まったく意味がないものとなってしまうのだが。

 

「カケル様、どうやら核があるようです」

 今回は運が良かったようで、その核があったとクロエが報告してきた。

「おっ、それは運が良かったな。すぐに回収しようか」

「はい」

 資源や素材の回収は、人が機体の外に出て行うわけではない。

 船外活動を行える機材を使い、ある程度の大きさに分けて船の中に収容する。

 船に収容したあとで、さらに人の手で細かく仕訳を行うのである。

 このときの処理の良し悪しは、買取される際の値段を決める大きなポイントとなる。

 いくら素材自体が良くても処理が甘かったり雑だったりすると、結局そのあとの手間がかかるので、安く買いたたかれてしまうこともある。

 

 船外から回収された核を確認したカケルは、すぐに作業に取り掛かる。

 一応船は安全な場所に停めているが、何かあったときのために船橋にはクロエがいる。

 回収された素材を処理するのは、カケルの役目だ。

 何とも不思議な感じではあるが、ゲームの時に培った技術はしっかりと体と脳に焼き付いているらしく、どうすればいいのかはすぐにわかった。

 慣れた感じで作業を進めていったカケルは、さほど時間をかけずにきちんとした処理を終える。

 余計な部分は、船外に捨てて作業は終わりとなる。

 

 今回取り出した核は、大きさは十センチほどの無色透明な球体だった。

 素材としての核は、品質が高くなればなるほど鮮やかな色がつくとされているため、今回のそれは品質的には良くはないというのがわかる。

 さほど重くもないそれを持って、カケルは艦橋へと戻った。

「大きさはまあまあだったよ」

 カケルは、核をクロエへと見せるようにして持ち上げた。

「あまり質はよさそうではありませんね」

「まあ、相手が相手だからね。その辺は仕方ないさ」

 ヘルカオスからとれる核は、ランクが上がれば上がるほどいいものが取れるとされている。

 クロエとしては、カケルにとっては初めての核となるため、もう少しいい品質のものを手に入れてほしかったからこその言葉だ。

 だが、カケルにとっては、十分すぎるほどの成果だった。

 何より、自分の手できちんと素材の処理ができると分かったことが大きい。

 この先もしっかりとやっていけると確信できた瞬間だった。

 

 そして、この世界に来て初めてヘルカオスの核を手に入れたカケルは、その核は売らずに大事にとっておくことにしたのであった。

ヘルカオスの核は、取れるときと取れないときがあります。

倒しきるまで核があるかどうかはわからないです。(ゲームのときはランダム発生)


次話更新は、23日になります。

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