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只今、絶賛先輩の前で直接悪口を言ってしまい大変なことになっておりす…。
「えっと、さっきの超級魔法ってどうやって無効化したんですか?」
いや、知ってるんだけどね。
「うーん、知りたい?」
うん、知ってる。
「はい!是非教えて下さい!!」
とにかく話をそらさなければ。
「ごめんけど、企業秘密だから。」
ま、そうなりますよね。
「そうですか。残念です。」
知ってますけどね。
「もしどうしても知りたいのなら先ずはさっきの発言について説明してもらおうか?」
話をそらせてねぇ!
「えっとですね。その、あの、ごめんなさい!」
やっぱりちゃんと謝らないとね。見よ!この完璧な90度のお辞儀を!
「お辞儀?こっちの世界では初めて見たな。」
うん?何か言っているがよく聞こえない。
「ねぇ、君は何ていう名前なの?」
あぁ、知らねぇのか。でもどうしよ。名前教えたら生徒のブラックリストとかに付けられんのかな?
「り、リオル・マルクスです…。」
ここは正直に。
「知ってる。そうじゃなくてさ、前世の名前?」
……はぁ?何言ってんのこの人。
「やっぱり分かんないよね。ごめん、忘れて。」
いやいや、どゆこと?
「1543年」
「鉄砲伝来」
「1582年」
「本能寺の変」
「あの、もしかして日本人の方ですか?」
「やっぱり!リオル君も元日本人なんだね!」
「って事は先輩も?」
「そ、僕も前世が日本人。」
まじか。でも何でも俺がそうだって分かったんだ?
「いやー、君の見事なまでのお辞儀を見たときは感服したよ。」
あー、こっちの世界でお辞儀なんて見たことねぇな。
「なるほど、そういうことですか。」
これはビックリだな。まさかこんな所に日本人が居たとは。
「リオル君が日本人なら、僕がさっき何をやったのか教えるよ。」
え、それだけであっさり教えていいの?
「さっきのはね、」
「魔力をドーム状に張り巡らせて、魔法を防いだ。」
「えっ?知ってたの?」
「まぁ、それなりに。」
やっぱ、驚きますよね。
「じゃぁ、聞かないでよ。」
あ、いじけちゃった。
「すいません。つい。」
「ま、いいんだけどね。」
許してくれた。良かったね、俺。
「ねぇ、君はいつ頃死んだの?」
「2020年、第2回東京オリンピックが中止になった年ですね。」
「えっ!嘘。東京オリンピック中止になったの?」
「はい、直前に過激派イスラム組織に襲われて。えっと、これを知らないってことは。」
「うん、僕は君の死ぬ2年前、2018年に死んだよ。」
で、今は俺より2歳年上と。
「選手の呼び出しをします。エル・コーフ君、表彰がありますので至急闘技室までお戻り下さい。繰り返します……。」
あ、先輩呼ばれてますよ。
「忘れてた…。ごめん、行ってくるよ。この続きはまた今度。」
「はぁ、頑張って下さいねぇ。」
「うん、それじゃ。」
そう言って、先輩は闘技室に行くのでした。
「よし、俺も帰るか。問題は明日シャルになんて言われるかだよな。言い訳考えとこ。」
このお話しはフィクションであり、実際に東京オリンピックが中止になったりはしないと思います(多分)。