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予想通りというかなんというか、さすがに一回の授業では作り出すことは出来なかった。それでも収穫はあった。まず、車体を作る時に金属が必要と考えていたが、ダメもとで石を鉄に物質変換するイメージで魔法を行使してみるとできた。自分でもびっくりだ。もう魔法=イメージで何でもできる気がする。それからもう一つ。ノースに魔法の使い方を少し教えたところ、すぐに覚えた。調子に乗って光や闇属性の初級魔法を教えるとこれまたすぐに覚えて、なんと詠唱破棄までできるようになった次第だ。エルフいと恐ろし。そんな感じで魔道具精製の授業を終わらせて実技の授業。職員室でのやり取りを思い出しながら憂鬱な気持ちになっている俺。
「今日はマルクスがいろいろ教えてくれるから俺には何も聞くなよ。てか聞かれても答えん。」
まじかよ。助言くらいしてくれよ。
「あ、それとウィンの特殊保有能力の従順隷属だが、詳細がわかった。」
なに!それを早く言いなさい。にしても昨日の今日なのに仕事が早いな。
「これは条件が揃ってないとできない。」
「条件ってのは何なんですか?」
「そう焦るなマルクス。この条件を揃えるのは相当大変だ。全部で3つ。1つ目は相手のステータスを知っていること。2つ目は相手の血液を飲むこと。最後に自分の血液を相手に飲ませることだ。」
ステータスはこのクラスのヤツ全員知ってるから一つは条件が揃ってるな。
「それで、この能力に掛かると発動した奴が解くか、死ぬかしないと永遠と命令を聞くだけの人形になる。相手に命令の拒否は不可能みたいだ。ついでに術者が死んだ場合、術にかかった奴も死ぬみたいだ。」
えげつない能力だな。でもそもそも発動ができなさそうだな。
「おし、じゃあ授業を始めるぞ。マルクスあとは任せた。」
めんどくさいが、情報料だと思おう。
「分かりました。えっと今日は属性魔法系を教えるな。こん中で使えるのは、俺とエバンスとアルルとノースだけでいいか?」
いいながら周りを見ると申し訳なさそうにミレイが手を挙げていた。
「僕もちょっとだけならできるようになったよ。」
「いつの間に!」
「えっと部屋の本を読んでたら出来るかな?って思ってやってみたら出来ちゃった。」
出来ちゃったってすげーな。
「さすがだよミレイ!」
もうアルルはミレイのことが大好きすぎてそのうち暴走しそうだな。
「アルル、せっかくだから天属性の魔法を見せてくれよ。教科書には基本の六属性しかないから幻血属性の天は見たことがないんだよ。」
「いいけど、天属性は自然に干渉する魔法だから、超広範囲魔法だよ?」
「まじかよ。威力の調整とかできないのか?軽く地震を起こすとか。」
「それなら大丈夫だよ。「土を支える神よ。我は其方に干渉せん。我に力を貸し、大地の揺れを引き起こせ『天属性範囲魔法地震(震度3)』」
お、揺れてる揺れてる。天属性ってのはこんな感じなのか。使いようによっては超強力だな。さすが王族だ。でも考えたらこんな事普通のやつにはできないよな。これじゃ、手本にはならないか。
「アルルありがとな。」
「なんのこれしき。ミレイすごかっただろ?」
「はいはい、アルル様素晴らしかったですよ。」
ミレイが褒めるのに疲れてる。完全に王子様のお守り役だな。
「天属性は王族特有の魔法だからみんなには真似出来ない。次は火属性魔法を見せるな。エバンス、やってくれるか?」
「なぜ私があなたの頼みを聞かなければいかないの?そんなの自分でやりなさいよ。」
はい、予想通りの答えいただきました。にしても俺嫌われてるな。なら、
「お?火属性の初級魔法もできないのか?立派なのはお母様のクルーナ先生とそのお口だけか?やりたくないのは理由をつけて逃げたいからか?」
煽ってみた。反応は?
「なんですって?いいわ。やってやるわよ。その目でちゃんと見ておきなさい。」
大成功!ちょろいな。
「「炎をこの手に『火属性初級ボム』」
すげ!詠唱破棄とは言わないまでも詠唱省略して簡単に魔法をだしあがった。
「すごいな。魔力の流れも綺麗だ。さっきはあんなこと言って悪かった。」
「ふんっ!褒めたって何も出ないわよ。」
照れてる。照れてる。褒められるのになれてないのかな?
「えっと、今のは火属性の初級魔法でボムってゆう。この魔法は爆発の性能を秘めている。ちなみに今のは詠唱省略ってゆって、本来魔法の発動のキーになる詠唱を少し短くしたやつだ。完全に何も言わずに魔法名だけを言ったら、詠唱破棄になる。」
「ま、これくらいは出来て当たり前です。それより私にあんな事言ったのは自分ができないからなのでは?」
かっちーん!完全に煽られてるけど腹立ったわ!
「それくらい俺にもできる!いや、俺なら中級の詠唱破棄も出来るぜ!」
「中級の詠唱破棄?そんなのできわけ無いじゃないですか。仮にも学園に入学したばかり。優秀な魔導師に指導を受けたなら・・・。」
「そうだよ。俺は優秀な魔導師に指導を受けたんだよ。元宮邸魔導師のクルーナ・エバンス、お前の母さんにな。」
「そ、そこまで言うならやってみなさいよ。」
「いいぜ。見てろよ。『闇・火属性混合中級魔法デスバースト』」
言った俺は闇を纏った炎を全力で休憩している脳筋教師めがけてぶつけた。
「『光属性上級ライトフォール』」
「っち、塞がれたか。下半身焼き切るつもりで撃ち込んだのにな。」
「舌打ちしてんじゃねーよ。危ないだろうが!」
「上級の光属性魔法を詠唱破棄できる奴がたかが中級魔法に負けるわけないでしょ。」
「簡単に属性魔法を融合させてる奴がよく言う。」
「ま、これで俺が中級の詠唱破棄ができるのは分かったかエバンス。」
あ、口開けたまま停止してやがる。
「さすがリオル君。カッコよかったよ。」
いぇーい。ノースに褒められた。癒されるぜ。
「冗談みたいな威力・・・。煽っておいてなんですけどイカれてます。」
「お、復活したなエバンス。俺に喧嘩売るなら、先生レベルになってからにしてくれよ。」
「少しは自重するわ。止めはしないけれど。」
「いや、止めてくれよ。とにかく、こんな感じで属性魔法は使えるようになる。属性によって使える技も変わってくる。火属性は攻撃特化。水属性は守り。風属性は移動。土属性は行動阻害、及びに強化。光属性は癒しで、闇属性は呪いだな。ま、これはあくまでもその属性がそれを得意としてるだけで、さっきの先生みたいに光属性で守りをすることもできる。防御力的には、水属性の方が優秀だが、さっきのは闇属性が入っていたから相性的に光属性の方が良かったんだ。」
「ちなみに属性の相性については教科書に載ってました。5ページめくらいだったと思います。って、皆さん知ってそうですね。」
ミレイがフォローを入れてくれたが、皆そんなことは知っているという顔だ。
「ま、この学校に来たってことはそれなりに魔法に感心が有るんだろうから下手な説明は省略して、早速属性魔法を放ってみるか。エバンス、火と風と光持ちの担当してくれないか?」
「な、なぜ私がしないといけないんですか!」
「そっか、残念だな。お前の母さんは教師としてとても優秀だったけどな。まあ、出来ないならしょうがないか。」
「それくらい出来ます!分かりましたやってあげます。」
「だそうだ。じゃ、火と風と光持ちはエバンスのところに集まってくれ。それ以外は俺のところな。ノースは闇と光のどっちにする?」
「リオル君の方がいいな。」
やった!ま、向こうには、ホークがいるしな。アルルはどうするのかな?あ、ミレイの方に行ってる。
「よし、まずは水属性からな。今回は初級の1番簡単なヤツな「水の精霊の眷属よ、我が手に水を宿したまえ『水属性初級ウォーターボール』っと。これを今日は覚えてもらう。詠唱に関しては水のところを土とか闇に変えればいい。それから技名はそれぞれグランドボールとダークボールだ。イメージは今俺が出した技を強く意識してくれ。じゃ、それぞれ始めてもらっていいぞ。分からないところがあったらそのづと聞いてくれ。」
と、まあこんな感じで全員が初級ボールを習得したところで今日の実技は終わった。