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「いい、私が教えたことを駆使して、私から一本とってみなさい。」
「全力出していいってことですか?」
「魔法練では危険だから出力を抑えていたけれど、ここでの被害は考えなくていいわ。」
「初めての全力魔力行使・・・。やってみます。」
「じゃ、3秒後に開始ね。3、2、1、始め!」
「『火属性初級ボム』」
俺の手には火の玉。これは相手に投げつければ爆発する爆弾作用がある。先生が魔力操作の訓練で俺に投げつけたやつだ。
「へー、初級とはいえ、詠唱破棄とはやるわね。でも、『火属性上級広範囲魔法フレアブレス』」
うそだろ、上級の広範囲魔法を詠唱破棄しあがった。って、山火事になるだろ!それよか自分の心配か・・・。
「『不可視の要塞』」
この技は自分の半径1mに円をイメージして、ドーム型に魔力を展開する。先生の魔法ならだいぶ魔力を濃くしないとやばい。
「嘘!私の上級魔法が塞がれた。仕方ないか。『我は風を司りしもの。風の精霊よ我が魔力を用いてさらなる力に還元せよ。我は雷を操りし者。雷神トールの加護を受けその全てを我が敵に放出せん。雷属性超級広範囲魔法一点集中ライトニングバース』」
やべ!先生俺のこと殺す気で来てる。なんで風の上位属性使ってんの?しかも超級って。で、広範囲魔法を一点集中なんてしたら広がるはずの力がそこに集まるわけじゃん。『不可視の要塞』じゃ、防げないな。なら、
「『不可視の守護壁』」
こっちもドームにしてた魔力を一点集中で雷から身を守る。
「反撃行きます!『不可視の歩法』」
魔力を脚に溜めて放出。その反動で超加速、先生との間合いを詰める。
「『不可視の剣』」
そのまま俺にしか見えない剣で先生の二の腕を切断。
「っく!『光属性上級回復魔法ライトヒール』」
これまた無詠唱で上級魔法を・・・。でも、
「『闇属性オリジナル魔法魔力妨害』」
これは俺のオリジナル魔法。前の世界での電波妨害をイメージして、魔力の生成を集中を乱して使わせない。
「なにこれ。あなた何したのよ。魔法が発動できない。」
「先生、戦闘中に自分の手の内をさらす馬鹿はいませんよ。それよりそのままだと出血多量で死にますよ。」
「あーもう!降参よ!早くこの魔法を解きなさい。」
「はーい。」
☆
「それで、さっきの魔法は何かしら?」
「自分で作ってみました。」
「やっぱりか。いい、魔法を作るのは勝手だけどあんな強力な魔法を生み出すならせめて私に教えなさい。」
「いや、魔法が発動出来なくなるのはそんなに痛手じゃないでしょ。近距離戦に持ち込めば勝機はいくらでもありますし。」
「二の腕が使えない状態で接近戦なんて出来ると思うの?そもそも上級魔法を打ち消せる時点で超級レベルの魔法よ。」
「うっ・・・。以後気をつけます。」
「とりあえず、明日には私はいなくなるから約束してちょうだい。
一、戦闘の際は力の3割から少しずつ上げていくこと
一、『不可視』系は8割で通じなかった相手にだけ使うこと
一、オリジナル魔法は自重して作りなさい
この3つは絶対に守りなさい。とくに3つ目は絶対よ。」
「分かりました。先生の遺言だと思って心に刻んでおきます。」
「まだ私は死んでないわよ!」
「冗談ですよ。てゆーか今日は先生のためのパーティーなんですから急いで帰らないとリナリーに怒られます。」
「そうね。急ぎましょうか。」
☆
「お兄ちゃん、クルーナ先生遅い!」
「ごめんごめんリナリー。」
「リナリー済まなかったな。」
「反省してるなら許す!」
リナリーはまだ幼い顔ではあるが先生に負けず劣らずとても美人になっている。髪は炎のような濃い赤色で、お母様の血を色濃く受け継いでいる。
「ありがとな。」
「じゃあパーティーを始めましょうか。」
「はい!」
と、そんなこんなでパーティーをして、次の日先生とのお別れをした。先生がいなくなる際に何故かリナリーが、号泣していたが理由は分からない。そして先生が最後に言った言葉
「約束は守りなさいよ!」
俺どんだけ信用ないんだよ。と、思いつつも少し泣いてしまったのは秘密だ。