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1話その腕が掴むもの



空へ手を伸ばした。そんな僕を見て君は笑った。

「何してるの? 」

君は不思議そうに僕の伸ばした腕の先を見つめてもう一度僕を見た。

僕は何て答えようか悩んでその手を下ろして苦笑いしながら口を開いた。

「空が高いなっておもってね」

「何それ!」

君は可笑しいそうに満面の笑みを僕に向けてくれた。

少し馬鹿にされた感もあったけれどそれでも良かった。

君が本当に笑ってくれたから。

君の笑顔が嘘でなく、造られたものでない笑顔に出来ることが嬉しかった。

ただそれだけのこと。

僕が腕を空に伸ばしたことに理由が在っても無くても、その全ての理由が無意味になるくらいに…。




「風が出てきたね」

「そうだね。車に戻ろうか?」

「うん」

クシュンと小さなクシャミをして少し寒そうにする君の肩に、僕のマフラーを巻き付けて僕らは車に向かった。

この時の僕等が居たのが何処だったのか?

僕にはわからない。

今もわからない

君は知っていたのだろうか?

その答を君は僕にいつかくれると嬉しいと思っている。

もしそうなら僕も答えるよ。

あの時の空に手を伸ばしていたその理由を君に告げよう。

あの時は苦笑いをしてごまかしたけれど今なら答えられるよ。


あの時、僕は何故か実感したんだ。あまりに感動したんだよ。

君と今居ることへの感謝。

そしてあの空があまりに高く綺麗で幸せを逃したくなくて何かを掴もうと手を伸ばしたんだ。



今は僕の隣に居ない君へ。

届かないと知りながら僕はあの時掴んだものを手放そう。


もうここに居ない君が幸せになれるように祈りながら…。



今、僕はここに居る。

だけど僕は僕が何処にいるのかわからない。

この先もずっとわからないまま在ることを選んでいる。



今は昨日に

未来は今日に

過去は更なる過去へ


時は止まることなく流れ続ける

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