5 confusedly
先に、僕は彼女の名前も知らないのに気にも留めていなかったため呼称がなく今後不都合な事この上ないので番号を、彼女には7を割り振っておく。
きっとこの人は天然なんだろう。そうじゃなきゃ二人してこんなに恐ろしい目に会う理由がない。まったく、助けが来るならなんでもっと早く呼ばない。
7「緊急性がなかったから。」
「最近車に轢かれた記憶があるんですが緊急性は?」
7「無い。どうでもいいからだまってて。」
との御命令、本人も自覚があるのか少し機嫌が悪い。これ以上逆鱗に触れたくないので黙っていると携帯でどこかにかけ始めた。
7「・・・・・・あっ、E773を・・・・了解。以上。」
まるで宝くじの当選番号の確認のような数字の羅列。簡潔な通信。非常に興味をそそるので内容を聞こうとしたが残念なことに答えてくれそうな顔ではなく、どうやら電話一本で機嫌がより悪くなったようだ。一応一縷の望みにかけて確認を取ると、
「なんでもない!」
彼女はいつからか立て掛けてあった刀を取って地べたに座り込んで丸くなると、そのまま押し黙ってしまった。何が怒りに触れたのかわからない。
・・・・・・・・・・・・・・
気がつくのが遅かった。
何の音もしない。
気がつくと仲間が一人もいない。
闇雲に下を目指していただけだったのだから広いビルの中ではぐれることはありえる。だが、自分が一番槍だ。立ち止まっていれば誰かが追い越す。今さっき開けたばかりのこの壁の穴を通らずに進む道はない。
しかしさっきから静寂と淀んだ空気以外ここを通り過ぎるものがない。それどころかこの穴を作った時の爆音とともに仲間の悲鳴が聞こえていた気がする。
何が起きているのか分からない。相手はたった二人で片方は一般人、もう一人は小娘、大人数で囲めば殺すのは簡単だろう。犠牲こそ出ても負けないはずだ。
なぜ誰もいない?
拳銃をしまって肩に掛けていたショットガンを構え、耳を澄ます。目の前に8m程の廊下と背後は降りてきた階段。空調が止まっているから空気が流れない。いまだに吹き飛んだ鉄の匂いがする。
無音の中時間だけが過ぎてゆく。