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4 Explosively

「やあ、お嬢ちゃんよ。わかってると思うがよ、そいつを渡してもらえねぇか。」


コートを着た厳つい中年の男に睨まれる。いつのまにか眼の前に黒い車が何台も止まっており、すでに周りは何十人もの男たちに包囲されていた。


「左足の膝関節より上なら。」


僕の横にいるこの少女は何を言ってるんだ。巻き込んでおいて足以外見捨てるつもりか、まずなぜ足だけなんだ。


妙に間の抜けた喋り方をする男は苛立ちを隠しきれず怒鳴る。


「グダグダ言ってないでさっさとソイツの足よこせ。残りは助けてやるからよう。」


「断る。」


彼女は男の言葉を一蹴してそのまま僕を引きずって立ち去ろうとするが、背後のガシャッという金属音を聞いて立ち止まる。僕の予想が正しければ、この音は芳しい音ではない。足だけくれてやったほうが安全かもしれない。で、なんで足なんだ。


「もどきのくせにデカイ口聞きやがってえ。いいからさっさとよこしやがれい!」


男が怒鳴ると同時に銃声が鳴り響く。


彼女が僕を物陰に投げ込んだ。大声で逃げるように伝えるとそのまま敵の方に走っていく。流石に現状何もできないのは理解できていたので、僕はそのまま建物の地下駐車場に飛び込んだ。


随分と広々とした駐車場には車が一台も止まっていなかった。このビルは使われていないのだろうか、と考えを巡らせるが残念なことにどんなビルに飛び込んだのかすら確認していない。やっぱり考えるのは僕には向いてないなぁと実感しつつ非常口のマークを逆向きに辿る。


その間彼女は銃弾が降り注ぐ中、もっていた刀で二、三人の男を切り伏せ、その男を盾にしながら持ち物を手早く物色するといくつかポケットに放り込みと、彼女は長い黒髪をなびかせ、服に穴を開けていく銃撃の雨を水でも弾くかのようにして、僕のところまで走ってきた。


てっきり囮になってくれるとばかり思って、脱出経路の確認に駐車場の地図を眺めていたから唐突な登場に大変驚く羽目になった。せめて来るといってくれればいいのに、おかげで撃つたれるところだった。


結局避難経路不明のまま銃弾を避けるために隠れる羽目となり、燦々と降り注ぐ鉄の雨で身動きがとれなくなる。轟音で耳が痛くなりそうだった。


「どうしてこうなってるんだよ!」


「あなたはこの世界でもっとも重要度の高いものだから。正確にはあなたの体が。」


「どういう意味だよ!」


「説明できる権限がないし、どちらにせよ今は後回し。」


そうでしょうとも。明らかに当たっていないにもかかわらず、入口の方からものすごい数の銃弾が休みなく叩きこまれている。遠くない未来に盾にしているコンクリートの柱はハニカム構造になるだろう。急がないと体が蜂の巣になる。


「どうするの?」


「これ。」


ポケットから取り出したそれは円筒形の缶だった。なるほどこれを頂いて来たわけだ。側面のラベルは缶コーヒーに見えるが、フタにプルトップとは違う引っ張れそうなピンがあるからきっとアレだろう。


「投げるの?」


「当然。」


彼女はピンッと軽い音を立てて安全装置を外し、物陰から壁に向かって放った。


カンッ、、カラン、カラン、、、バン!


狭い駐車場に爆音が響き渡り体に衝撃が伝わってきた。キーンという耳鳴りで、何も聞こえないが銃声はやんだように思う。


柱の影から出て様子をみると、どうやら壁にあたって跳ね返った手榴弾はそのまま敵の目の前で爆裂するだけにとどまらず、ちょっとばかり駐車場を破壊。柱をまるごと一本吹っ飛ばし、天井の一部を崩落させた。


瓦礫と化した駐車場の入口を見ると、ありがたいことに完全に通行止めになっている。自動小銃に対する防護策にはなった。確かに銃声はもう聞こえなくなったから。ただ、、、


「・・・・やりすぎじゃない?」


「対人榴弾、のはず。」


「アレは人に向けるにはオーバーキル甚だしいと思うんですが。」


「対戦車手榴弾でもあのサイズであの爆発威力はありえない。最悪、ビルが倒壊してたかもしれない。」


なんでそんなもの携帯してるんだ。あの連中は何を相手に戦ってるんだ。


瓦礫の山を少し掘って爆心地を確認したあと、彼女は周りを見渡しながら、


「効果域と粉砕したコンクリートの量が合わない。でも地球のものじゃないから当然か。」


「どういうこと?」


「これだけの威力があれば爆風だけでこの建物は倒壊する。」


そっちじゃない。手榴弾の話よりもよっぽど今の爆弾発言のほうが重要だ。この状況下において実は私は電波少女なのってパターンは無いだろうな。


「そうじゃなくて、地球上のものじゃないってどういう意味?」


「言葉通りの意味。おおよそ人間と呼ばれる生き物の以外。」


「宇宙人とかエイリアンとか地球外生命体とか?」


「その3つに何の違いがあるのかわからないけど、ちがう。」


すごいジト目で見られている。そこまでバカなこと言ってないと思うのだけど。


「ともかく5分は安全なはず。」


そう言うと眉間に少しの間手を当てて考えこんだ後、ポケットから携帯を取り出した。


「こうなったら助けを求める。」

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