下校2
「集合!」
「おう!」
顧問の掛け声が体育館に響き渡る。バスケ部員達が顧問の下に急ぐ。
当然、フリー練習で1on1をしていた俺も、春野タクは急いで顧問の元へ向かう。
「そろそろ下校時間だから、終わりにするぞ。1年は片づけを頼む。キャプテン号令」
「気をつけ、礼」
キャプテンのカズ先輩の号令がかかる。
「「「ありがとーございました!」」」
練習が終わり、1年はタイマーやボールを直す。
俺はそそくさと更衣室に向かい、着替えて帰る支度をする。
………………
着替えが終わって、
よし、帰ろう。と、立ち上がったとき、
「タクこんなところにいたのか。…っておい、もう帰るのか?」
川村シン(カワムラシン)が更衣室に入ってくるなり話しかけてきた。
「ああ」
「ったく、1on1で勝ち逃げしやがって、探したんだぞ」
川村シンは俺のクラスメイトでもあり、親友というポジションにもいる。負けず嫌いで、高校からバスケを始めたくせに、もうレギュラーを獲得している。シンは運動神経だけは無駄にいいからな…。シュートは下手だけど、ドライブの技術が高い。まだ、俺には勝てないけど。
「悪いな。…じゃ、俺は帰るから」
そう言って、更衣室を出ようとするが、
ガシッ
っと、腕をつかまれた。
振り向くと、シンが俺の腕を掴んでいた。
「着替えるから待ってくれよ。五秒で終わらせるから」
シンが冗談めかして言ってきた。
けど…
「……じゃあ、五秒な。5、4、3……」
「いや。冗談だってっ……さすがに五秒じゃ……」
「……2、1、0。よし、じゃあな」
「え、ちょっと……」
更衣室を出て、昇降口に行く。
ユイ帰ったかな…。
靴箱を見てみると、靴は……あった。
じゃあ、まだ学校か…
部活中かな?そろそろ下校時間だし、待ってようか……
そんなことを考えていると、
「おーい、待てって」
シンがやってきた。早いな。
「ふぅー、追いついた。みんなでゲーセン行こうと思うけど行かないか?」
シンの後ろには、ほかのバスケ部員もついている。
んー、ユイとは別に約束してるってわけでもないし……
たまには、みんなで遊ぶのも楽しいかも、うん、そうだな。
「そうだな。最近ゲーセン行ってないし、付き合うよ」
「決定!じゃあさ、先週に新しいオンラインレースゲーム出来たからバトルしようぜ」
なんで、バトルにこだわるのかねぇ……
…まさか、さっきの1on1に負けたのが悔しくて……たぶんそうだな。
まあ、レースゲームは得意だし、返り討ちにしてやるけど。
「そうだな。いい…「ヤッホー!タク」」
バシッ
なんだ?いきなり……
うぅ、背中に衝撃が……
踏ん張ろうとしたけど、部活の練習後だからか足に力が入らない。
そして、見事に前のめりに倒れてしまった。
「痛ぁ…」
こんなことするのは、あいつしかいない。
「…なに、すんだ。ユイ……」
俺を指差して、
「敵に背中を見せるのが、悪いの」
人を指差すなって、習わなかったのか。
そして、なんだよいきなりさ……
「意味がわからんわ」
コツン
軽くユイの頭を叩く。
ホントは思いっきり叩きたいけど、女の子ましてや好きな子を思いっきり叩くようなことは俺にできるはずもなく…これが精一杯。
それに、叩いたときユイに触れたときから
……ドキドキ…
なんで、こんなに心臓がうるさいんだろう。
「いたぃ。女の子を叩くって信じられないー」
痛くないくせに…
「知らねー」
「それより、一緒に帰らない?偶然会ったわけだし…」
…う、なんでそんな不安そうな目でこっち見るんだよ。
ちょっと、かわいいじゃないか…。
「ん、そうだなぁ…」
その視線に耐え切れず、目を背ける。
すると、目に付いたのはシン
…シンたちが……
にやにやして、俺を見ていた。
吊られてユイもシンたちの存在に気づいた。というか、忘れてたかな?
「あぁ…もぅ!タク、行くよ!」
「ぉ、おい?」
服が引っ張られる。伸びて戻らなくなったらどうするんだよ。
つーか、明日学校で問いただされるんだろうな…
まあ、ユイと下校できるからいいか。
ラッキー☆