課題:演習②
さすがに緊張の色を隠せないイリスが、ただでさえ透き通るような白い肌を蒼白く変えて浅い呼吸を繰り返していた。肩が上下に揺れ、それにあわせるように後ろで括られる長い金髪が猫が尾を揺らすように揺らめいた。暑いのか、腕をまくる戦闘服の上に青いゼッケンを着る彼女はこのチームの”リーダー”である。
殲滅以外の敗北要因は彼女の死亡であるものの、”だからこそ”衛士は彼女を選んだ。選択肢がそれしかなかったといっても過言ではない。
実力的には時衛士が選ばれて然るべきなのだが、それではまともに動けない。効率の良い行動を行うであろう敵を見れば、やはりリーダーは後援に徹するべきなのだ。少なくとも今回は。
そしてこのチームの中で最も冷静であり、精神レベルは衛士に近い位置に存在している。だからあながち、お飾りのリーダーというわけでもなかった。
対するBチームは緑味の強い黄色の鮮やかな長い髪が太陽に綺麗に照る、それだけで絵になる美女。彼女、エイダの武器はグレネードガンであるものの、勿論榴弾は爆発などせず、音と閃光だけでそれを表現するだけだ。
重火器は近づき難いものの、それ個体が突出するのが難しいという難点がある。だから彼女もまた、後方にて待機し、必要なときに前方に近づいて支援をするしかない。その事もあるのだが、やはり野外での範囲攻撃は経験則上、油断しすぎなければあまり危険視する必要は無い。四人一組でそれぞれが行動する場合などは一層その通りであった。
問題なのは前衛に出てきた、手甲を装備する最前衛のハンズだ。その背後には弾幕を作って一定の距離を作る七文太が控え、そのやや斜め後ろに狙撃としてなのか、アサルトライフルを構えるバスターがずれた眼鏡を直して衛士らを見据えていた。
表情には余裕が伺え、それが衛士の闘争心を沸き立たせてくれる。
――広大な、砂が撒き散らされる土の大地。遮蔽物は何も無く、真っ向からか機動で勝負するしかないこの環境。それぞれが陣形を作り、グラウンドの端と端で陣地を持つ。その中心点には船坂が仁王立ちしており、静かに挙げた手を、力一杯振り下ろした。
開戦の合図である。
彼はその直後に大地を蹴り飛ばして、ただ一度の跳躍で数十メートルはあるグラウンドから飛び出ると、そのまま身体を反転させて、彼等を視界に収めるようにしながら着地する。脅威の身体能力に訓練兵一向は驚愕を禁じえぬまま唖然とするが、衛士は構わず走り出していた。
それに応じるように文太がハンズの脇に出て短機関銃の引き金を絞る。銃弾は大地に射線を映してその肉薄を教えて、衛士はそれに応じて腰から銃を抜き、疾走による振動の誤差を大まかに考えてから発砲。
短機関銃の掃射は俄かにやみ、衛士はその隙を利用してより加速するが――すでに行動を起こしていたハンズが、早くも十メートル圏内に入り込んでいた。
身を強引に前方へ投げ出すような走行。それは殆ど跳躍のようなものであり、瞬間的な加速は衛士の数倍はあろうかと言うものだった。
故に、彼の肉体は間も無く衛士へとまばたきを許さぬ速度で迫撃。
手甲の鋭い一閃が衛士の顔面を襲うが、ナイフの柄尻で見事に受け止めてみせる。するとそれは甲高い音を立てて静止した。
だがその代償とばかりに凄まじい衝撃が腕ごと鈍い麻痺状態へと誘うが、対戦車ライフルを立ったまま発砲し後方へ吹き飛ばされた経験のある衛士には、それはまだマシな方である。
彼はすかさず握ったままの銃をハンズへ向けるが、視界下方向から突き上がる凄まじい気配が衛士の顎を捉え――衛士は舌を鳴らして背後へ跳躍。一先ず息をついてさらなる対処を試みようと考えた刹那、それにあわせるように、アッパーカットを中断したハンズは衛士から付いて離れず前進した。
が、これは予測できた行動だ。
衛士は口元に浮かぶ笑みを噛み殺して、足を大地へ伸ばし、強く踏ん張る。途端に背後へ飛ぶ勢いは殺されて、前進するハンズの懐へと難なく入り込む事が出来た。
これで彼が壁となったが為に相手の支援射撃は気にする必要がなくなったわけだ。衛士は考える暇も無く自ら近づいてくるハンズの胸板目掛けて素早くナイフの切先を突き刺してみるが、ハンズの肉体は瞬間的に上方、つまり頭上へと影を伸ばしたかと思うと、目にも留まらぬ速さで目の前から姿を消した。
――常識破りの強靭な肉体が織り成す繊細な機動。それは船坂に似たものだった。耐時スーツを用いずにこれほどの身体能力を見せ付けられるのは彼と船坂ぐらいもので、それ故に、彼は場違いにハンズが戦線に出たときの事を期待する。
退くわけでも止まるわけでもなく、前進の勢いを利用したその跳躍は容易に衛士を飛び越し、瞬く間に衛士の背後に着地する。だがそれは衛士にとって予測できなかった未来などでは決してなかった。
だから既に背後の彼が居るであろう位置に向けていた銃の引金を引き、発砲。ハンズは身を屈め、また大地を蹴って左右に移動しそれらを避けて見せ――ガラ空きになる衛士の背に、待ってましたと言わんばかりの文太の掃射が襲い掛かる。
こいつが本命だ。
衛士は心の中で呟いて、再び敵陣営へと振り返る。銃口の角度から銃弾がやってくるであろう位置を判断し、最低限の回避行動だけで、文太への肉薄を再開した。
「うお、うおおおおっ?」
掃射が一向に相手を捕らえられない事に不安を抱き、また見る間に距離を縮める衛士に恐怖するように彼は声を上げる。それを聞いて、傍らのバスターは嘆息の後、片膝を付いてレシーバーから衛士の姿を狙うが――その距離は既に、余裕を持って狙撃をしていられるものではなくなっていた。
舌打ちをして立ち上がり、文太の横腹を力一杯蹴飛ばすと――刹那、彼が居た位置を、その虚空を弾丸が凄まじい速度で駆けていった。
文太は悲鳴を上げて横に転がり、彼に成り代わってバスターが牽制を再開する。が――。
「うわっ……、って、マジかよぉっ!?」
既に横たわった文太の肉体目掛けて発砲された弾丸の二発が、まずは胸を、そして次に腰を射抜いていた。最もそれは実弾ではない為に、肉体にゴム弾を撃たれたかのような衝撃の後に、内包する小麦粉を霧散させるだけなのだが。
「――七文太、死亡!」
遠くから響く報告。
彼の死亡が断定され、文太は脱力したようにその場に横たわった。
衛士は残弾が一発しかない拳銃をすぐ数メートル手前に居るバスターに向けるが、同時に十数メートル程の背後にハンズが肉薄してきているのを認識している彼は、仕方が無いといった風に小さく息を吐いて、銃口を天へと向けて、間も無く発砲。
その直後に「りょーかーい」と、彼の背後で小さく響く声が耳に届いた。
干された布団を力一杯殴りつけるような鈍い音が聞こえ、弧を描く擲弾がごく自然に衛士の足元に転がる。バスターは既にエイダの下へ退避しており、グレネードの発砲を理解したハンズは舌打ちの後、仕方無しにそのまま横っ飛びで衛士から離れる。
彼も咄嗟に身体を縮まりこませて横の平坦な大地に飛び込むような回避を試みるが――間髪置かぬ凄まじい閃光が、衛士の肉体を嬲り、爆音が鼓膜を破かんとする勢いで大気を振動させる。衛士が大地に叩き付けられる頃には既に、それが収まっていた。
「――時衛士、グレネードの爆発により重傷。走行不可とする!」
船坂の宣言の後、衛士は仕方なく身体を起こし、緩慢な徒歩で横たわる文太へと歩みを進めた。
ここで生き延びたのはある意味予想外だった。爆発の衝撃によって全身が嬲られ、表面は焼け爛れたはずだ。最も、そういった想定である。だがそれでも船坂が死亡判定を下さないのは、ひいきでもなんでもない。実際にあの距離での擲弾による爆発ではその程度の怪我で済み生き延びたという事実なのだ。
背後ではハンズの強行突破に似た激走が衛士へ向かう――が、徒競走、短距離ならば驚異的な速度を見せる坂詰は、既に彼の背後に付いている。ハンズはその事に、慢心が故に気付けずに、発砲音が轟いた。
ハンズの肉薄よりも早く、バスターの小銃が火を吹いたのだ。が、倒れこむような回避行動のお陰で弾丸は彼の頭上、体の脇を通り抜けて目標を撃破し得ない。
――バスターの発砲により、ハンズはより衛士へ集中する。
作戦とは、つまりこういったものだった。
衛士が捨て駒となって前衛を掻き乱し、恐らくハンズは彼に集中する。死亡扱いされるまで固執するだろう。根拠としては特に語られなかったが、事実そうだった。
Aチームの拠点まで退いたハンズは、それでもリーダーに目もくれずに一目散に衛士へと肉薄した。理由は分からないが、衛士の推測が正にど真ん中を射抜いた瞬間だったのだ。
そして――坂詰は言われた通りに、ハンズが衛士へ向けて最後の加速にと大地を蹴り飛ばした瞬間に、背中目掛けて発砲。引き金を絞り続け、それ故にマシンピストルは弾丸を吐き出し続ける。
すると、それはいとも簡単に彼の広い背に小麦粉を散らした、かに見えた。
実際には振り向き様に振り上げる手甲が弾丸の全てを受け止め、弾き、その衝撃によって爆ぜて空気中に小麦粉を振り撒いただけなのだ。煙幕のようになるその中で彼は”振り返り”、再び小さな舌打ちが耳に届く。
坂詰は漏れそうになる自身の失敗に対する呻きを押し殺して退避の体勢をとると、その直後に、再び発砲音が鳴り響いた。
粉塵が満ちる空間。その中にはハンズが居て、近くに衛士が横たわっている。そして彼の近くには再起不能した文太が居て……。
「教官! ……死亡だ」
野太い声が大気を震動させて、煙幕の中から大きな影が現れる。それは背中一面を白く染め上げた格好で、両手の手甲を外しながら緩慢な足取りで船坂へと向かう。
瞬間――同時に、船坂から見て右方向、Bチームの拠点で、高らかな声が響き渡った。
「船坂さん! 王手飛車取り、この状況はどう判断します?」
ハンズから離れた位置、エイダの死角となる横方向の端っこで伏せの態勢で、文太から奪った短機関銃を構えた衛士の姿があった。彼女を護衛する役割のはずのバスターは狙われている位置とは逆方向に居て、また彼自身も煙幕へと目を奪われていた。
状況的には、衛士が口にした通り『王手』であり、今回の演習で確実に納得の行かない人間が複数出てくることは確実であったが、Aチームの勝利と言う形で終了した。
結局、時衛士がした事といえば、無謀に敵に突っ込んで隙を突き一番の戦力を何とか不能者にした上にチェックメイトに導いた事と、適当な言い回しで戦力外を戦場から排除したことだった。
だから彼はステッキ・サラウンドの非難を頭からかぶり、重傷と言っているのにあの移動の速さはおかしいと因縁をつけられても、ただ受け流し、そのまま汗を流すためにシャワー室へと向かった。
――確かに今回は勝利した。だがこれは幸運、否、譲られた勝利なのだろう。
程よく筋肉が付いた肉体を見下ろし、いくつかに割れた腹筋を撫で、既に古傷となり始める無数の細かな傷跡を手のひらでさすりながら扉を開ける。途端に、蒸した湿度の高い蒸気が彼の全身にまとわり付く不快感を覚え、湯気の中に、幾つかの影を捉えた。
シャワー室はタイルの壁にシャワーが等間隔で設置してあり、その奥にサウナ室があるだけの簡単な造りだ。特に豪華と言うわけでもなく、金がかけられている風には見えない。湯船が無いのは残念なことだったが、そんなものはとうの昔に慣れてしまっていた。
衛士は自身の身長を比較的高めだと自負している。だがそれより割合に巨大な、というか肉体が一回り大きい影の隣に移動して、バルブを捻った。すると間も無く頭上から熱い湯が降り注ぎ、瞬く間に全身を心地よい加減に濡らし、暖めた。
「ハンズ、あんた手ぇ抜いたろ」
備え付けのシャンプーボトルから内容物を手のひらに出し、頭に擦り付ける。そのまま掻き乱すようにしながら洗髪をし、そのまま頭皮マッサージへと移る。一向に返事が無いのに焦れったいと追撃を試みようとしたが、その寸での所で低い声が耳に届いた。
「へぇ。どうしてそう思う?」
「あんたなら跳躍でも横っ飛びでも何でもで避けられた筈だ」
もし彼にソレが出来なかったのならば、既にアレほどまで状況を困窮させられる前に始末が出来ていた。
衛士の問いに彼は困ったように息を吐くと、ただ一言、
「面倒だった。俺だって疲れる」
それだけ残して、既に身体は洗い終わっていたのか、シャワー室を後にした。
衛士はそれに返事をして、目に入りそうになる泡を手で拭い、だが手に付いた洗剤が目に入り込んで、染みる痛みに短い悲鳴を上げてシャワーで洗い流す。
――その背を睨みながら、だが口元に笑みを浮かべながら、ハンズはそそくさと更衣室へと戻っていった。
「……面倒だった、か。は、確かに――能力を使わなきゃ、こんな原始的な戦闘は面倒すぎて欠伸が出る」
微かな独り言。彼はその後に肩を震わせるようにくつくつと笑いを零した。
この四ヶ月は酷く退屈だった。そしてこの組織は酷く間抜けだった。
ハンズは軽く腕を振るい――自身の持つ特殊能力で、離れた、とても手が届きそうに無い位置のロッカーを殴り抜ける。金属板がひしゃげて鈍い音が鳴るも、シャワー室には届かないささやかさだった。
リリスは間抜けだ。
ハンズは心の中で嘲笑する。だがどうにも、今回の事が自分にとって笑いの沸点に達したのか、笑みを零さずに入られなかった。
「俺が付焼刃だっつーのも知らずに、スカウトなんてしちまって」
そして現在ではその付焼刃に立ち向かう為に訓練をしているのだ。なんとも滑稽な話である。この調子では随分と内輪的に期待されている衛士も、下手をすれば”事故”で命を奪われてしまいそうな勢いだ。
あれほど持てはやされていたのだからどれほどの実力を持っているのかと楽しみにしていればこの有様だ。単純な行動には、単純に速さが間に合わずに追いつかれ、細かい動きも未熟で、攻撃力もハンズにとっては皆無に等しい。
ただ最初の一撃を止めたのにはやや驚きだったが、その直後に僅かな間でも行動に支障を出してしまってはてんで話になりはしない。
――最も、リリスはこの事を知っていながら、付焼刃という存在の研究の為に、実験体としているのかもしれない。ハンズは考えるが、それは彼を不安にさえさせてはくれない。
中に入れなかったものがこれほど簡単に入れたのだ。実験体でもなんでも関係が無い。こんな機会は一度も無かったのだ。
その時さえ来れば、いつでも歯向かう準備は出来ていた。
ハンズはほくそえみ、己の拳へと視線を落とす。
ついでに副産物でも利用できれば上出来だと考えて、また口角を吊り上げた。
「これで壊滅でも出来りゃ”ナガレ”も出てくる。ここまで出来りゃ完璧だ」
彼は誰にとも無くそう呟いて、衣服を纏う。手早く服を着ると、彼はそのまま部屋へと戻り――。
衛士は深い溜息を付いた。
扉に張り付き、ほんの僅かにあけていた扉から覗くように伸ばしていた首を戻して、脱力。そうしてから再び、シャワーの湯を頭から浴びる。
「……気付いてねぇわきゃねーだろ。バカかアイツ」
――坂詰の射撃の直後に、弾丸が空中で爆ぜた。
それは彼の、ハンズの圧倒的な力ならば可能だった。だから不思議とは普通思わないだろうが、振り向かずにそれを迎撃をする事などは、凄まじい力以前にまず不可能なのだ。だから、小麦粉の粉塵が空間を満たした後に振り向く事などはありえない。
まず彼への疑惑点の一つがそれだった。
次が――衛士がトドメに、と打ち出したと思われている銃撃である。流石の彼でも、あの煙幕の中では的確にハンズの背を打ち抜くことなどは出来ないし、そもそも、あの短機関銃に残った一発は背などではなく、膝、あるいはそれより上の下半身に向けたものだった。
そして仮に直撃したならば、機動が出来なくなる為に、あとはナイフで殺害しようと考えていた。
だからどう間違っても、弾丸が外れて大地を叩くことはあろうとも彼の背を小麦粉塗れにすることは決して無い。
何を焦っていたのかはわからないが、彼はわざと負けたのだ。わざわざ特殊能力を用いるなどと言うリスクまで冒して。
ここまで来てわざわざそんなバカな真似をするはずが無いからてっきり誘っているのかと思っていた。そもそも仲間に付焼刃が居るなどとは考えたことも無かったが、今まで会って来た能力者の感覚と、それは酷く似てしまっていたのだ。
強烈な違和感や、根拠無き自信を、到底相手は持っている。理由としては”自分だけは違う”、”自分だけが特別だ”と、能力を持つが故に自分を過信するからだ。それと同様の雰囲気を、残念ながらハンズは出してしまっていた。
そして念のためにと様子を伺ってみれば、中々どうして――予想以上の間抜けだったらしい。
無口で姿もあまり現さないのは、自分がそれを自覚していて、それを隠すためだと衛士は認識した。
「エイジ、いつまでシャワー浴びてんだ?」
「ステッキさんに怒られたのがそんなにショックなんですか?」
「ふん。勝ったんだ、適当に言いくるめてやればいいだろう」
衛士のそんな複雑な心境を知ってかしらずか、気ままに彼等は声を掛ける。彼は仕方なくバルブを締めてお湯を止めると、そのまま髪を掻き揚げて顔から水を払い目を開けると、苦笑を浮かべて振り返った。
「今日は良い気晴らしになると思ったのになぁ……」
逆に不安要因が増えてしまった。
なぜ今こういった事を知ってしまったのだろうか。なぜこの状況で彼は血迷ってしまったのだろうか。
頭を抱えたくなる衝動を抑えていると、文太はにこやかな笑顔で衛士の肩を小突いて見せた。
「なんだ、もう一回やるか?」
「なるほど、良い度胸だ」
「ハンデは三対一ですよね」
「ちょ、待てよ何言ってんの? オレもう疲れて――」
それぞれがそれぞれなりに嬉しそうな表情を作って、衛士の両手を引いて更衣室へ向かう。
衛士はそれから深夜にかけてみっちりと彼等に私刑じみた自主訓練をかけられて――口は災いの元だと、身を持って理解した。
今度はハンズの番だと密かに画策しながらも、この夏休みでの”本題”に呼び出されて、結局夏休み中にそれが出来る余裕が生まれることは無かったのである。