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課題:演習①

「嗚呼、ちくしょう、畜生……あああぁぁぁっ!!」

 拘束を解き、彼の部屋で介抱する。それから間も無く意識を覚醒した時衛士は涙を流さずに泣く様にそれを繰り返し、頭を掻き毟っていた。

 その状態は誰が見ても非常に悲惨で、エミリアも流石に止めることも出来ず、ただ誰かが用事を作ってこの部屋に訪れないことを願うだけだった。

 ――本部に行って何かがあった。彼女はそれを理解するが、何があったかなんて事は到底分かるはずも無い。彼が理性を放棄する勢いでこれほどまでに取り乱す事なんてのは、今までで一度も無かったからである。 上辺だけの感情で人と接し、任務の時にだけ生き生きとした顔を見せる彼は、日を増すごとに彼女の理解の範疇から飛び出て行ったのだ。

 かつては”弟子”だと思っていた彼は、いつしか自身の手に負えなくなっている。元々師弟関係などは築くつもりは無かったが、それでも少しばかり、その成長は誇らしくもあり、少し寂しいものでもあった。

 だが、だというのに今はこんな状態の彼に声を掛けてやることも出来ない。やがて打ちっ放しのコンクリート壁に頭を幾度も叩きつけて、その額の皮膚が裂け、とめどなく溢れる血で寝台の純白のスーツを汚したところで彼は自傷を止めた。

 それからどうしようもなく哀れに見える悲痛な表情で照明を仰ぎ、それから耳に劈く笑い声を上げて――暫くしてから、それもやめた。

 酷く情緒が不安定で、エミリアさえもが微かな狂気に恐怖を煽られる。仮に彼が襲い掛かってきたところで対処はできるだろうが、その後の事を考えると頭が痛くなるほどだったが、その心配はどうやら必要が無かった。

「止血しなければ……」

 エミリアがようやく出せた声で指摘すると、衛士は任務から返ってきてから一度も脱いでいない長袖のインナーを脱いで、雑に頭に巻きつける。彼はそれから寝床の汚れを見てから舌打ちをして、それを剥いで寝台の下へと蹴落とした。

「代えのシーツはシャワー室だ」

 衛士は頷き、それから寝台に腰掛ける。エミリアは出入り口の扉を背にする形で棒立ちをしたまま、衛士の鋭い視線を一身に受け、さらにその目を見据えていた。

「恥ずかしいところを見せたようだ……だけど、こうしなきゃ、オレは理性を取り戻せなかった」

「貴様の肉体からだだ。好きにしろ」

「そりゃそうだよな。だけど自分の暴走って、客観的に見ると凄い滑稽って思わない?」

 彼から敬語が失せている。

 もしかすると最早敬られる存在では無くなってしまったかと心配したが、仮にそうであっても何も困らないことに気がついた。言ってしまえば、彼との初対面のような状態だ。下手に喧嘩を売られず落ち着きさえ持っていれば、かえってこういった態度の方がしっくりと来てしまう。

 彼の場合に限るのだろうが、なにやら妙にかしこまっているのは、似合わないような気がするのだ。

 それはある種の、彼なりの強さ……強くなったという表現なのかもしれない。しかし、そういった態度でしか自身を表現できないのは、それはそれで哀れなような気もするのだから、エミリアの心情はより複雑になってしまう。

「貴様はいつも滑稽だよ」

「こいつは手厳しい」

「だが、もう足が地に着いただろう?」

「あぁ、おかげさまで。本当に、アンタみたいにオレに興味を持ってくれてないほうが気楽で済む」

「何を言っている。私はいつでも貴様に興味津々だ」

「それじゃあドライだ」

 彼の言い返しには動揺がなく、ユーモアも無い。しかしこの方がやりやすく、エミリアにとっても都合が良いように思えた。恐らくあの時の衛士が何の影響もなくあのまま順当に成長すれば、このような落ち着きを持った、どこか悟ったような人間になるのだろうと、彼女はそう思いながら彼の言葉に頷いた。

 ――哀愁を持ち始める瞳には、しかしそれなりの熱さがあった。どこか空回りしてしまいそうな、そんな心配を強いられるような勢いを孕んでいる。エミリアはそんな衛士を見てから、肩をすくめてワザとらしく鼻をつまんで見せた。

「貴様、帰ってきてからシャワーも浴びてないだろう。臭うぞ」

 任務から帰ってくれば訓練仲間が適正者に絡まれていて、仕方なくその始末を。そして自室に戻るなり疲労が限界に達してすぐさま床につき、目覚めると同時にエミリアに協力を求めて寮の前で待機していれば拉致されてしまった。

 こんな状況では入浴をする暇どころか、そんな発想すら生まれないのは仕方が無いことだった。

 衛士は彼女の言葉にはにかむと、そうだな、と溜息混じりに呟いて立ち上がる。

「シーツを代えるついでにシャワー浴びてきます。ついでに誰か居れば、体調は整ったって伝えなくちゃだし」

 彼は足元のシーツを手にとって丸めて固めると、半裸のままで扉を開ける。彼女は通路を空け、彼の背を見送るようにして立ち――やがて彼が視界から失せて、扉が緩慢な動作で閉まり始める頃、不意に驚いたように肩を弾ませて、扉へ飛びかかるように肉薄する。が、それは無情に、完璧なまでに閉塞されてしまった。

 ――現在は鍵を持ち合わせていない。だからこの扉を開錠できるのは部屋の主である衛士だけなのだ。

 中からも、取っ手ではなく指紋認証システムを適用しているからこそ、強制開錠システムを展開しても物理的な鍵を所持していないから、鍵穴を出現させても鍵を開ける事が出来ない。

 つまりは閉じ込められてしまったと言う事だ。

 時刻は午後七時でまだ早いが、さっさと帰りたかった彼女には苦痛でしかならない。自身の思考の鈍重さが招いたミスなのだが、それでも溜息は口をついて漏れた。

 殺風景な部屋には、時計と写真たて、それと保健医が与えたノートパソコンしかない。ノートパソコンにはネット環境が無く、そもそもインターネットに繋げる為に必要な機器の一切が排除されている為に、仮に彼が機械に強い人間だったとしても、ネット接続する事は不可能だった。

 あるのは表の世界でも市販されている地域制圧型の戦略シミュレーションゲームが幾つかインストールされているくらいで――エミリアも衛士も知るところではないが、そのプレイ状況、結果や過程などの全ては無線接続されている保健医のパソコンに随時データを提供していた。

「まいったな……」

 嘆息し、寝台に腰掛ける。

 自宅でも暇を持て余すことが多々あるが、武装の調整や掃除などで時間を潰すことが出来る。だが今のように、完全に何かをすることがなくなったのは初めてのことだった。

 一人遊びは好きであるのだが、得意ではない。どちらかといえば下手な彼女は、仕方なく今後のこと、そして訓練兵の未来やリリスの行く末などを考えてみるも、どうにも面倒になって思考は端から零れ落ちて集中が出来ない。

 寝転がってみれば、先ほどの衛士の汗臭さが香る。この生娘には男の匂いと言うものが分からないが、その染み付いた匂いをかいで、なんとはなしにそれを理解する。が、間も無く頭を振って体を起し、自制した。

 他人の部屋というのは割合に緊張するものである筈なのだが、ここでは逆に落ち着いてしまう。だから横になってしまえば、やがて瞼が重くなり、視線はとろけるように艶やかな虚ろさを持つだろう。故に、そう時間を要せずに眠りに就くことが可能だった。

 そして衛士が帰ってくるまでに目覚めることは難しい。そんな所を目撃されてしまえば何が起こるか、今後どういった立場の転回が起こるかは瞭然だった。

 だから彼女は大きく溜息をついてから重い腰を持ち上げて、扉の隣の壁へ目掛けて前転するように行動して、逆立ちをしてみせる。しなやかに伸びる肢体はやや筋肉質であるものの、その輪郭の柔らかさなどから女性のものだと容易に分かる。

 褐色の肌は照明に照って色気を醸し出し、めくれるタンクトップは乳房の半分ほどを露出させる。血液は徐々に頭にたまり始めるものの、苦痛などでは全く無かった。

 透き通るような白髪頭は逆立って床を掠める。だがエミリアはこれでいいと微笑んだ。

「いい運動で、眠気も覚める。一石二鳥とはこのことだ!」



 翌朝午前一○時。

 時衛士を初めとする訓練兵総数八名は、それぞれ着慣れた迷彩服に身を包み、グラウンドの中心辺りで整列をしていた。

 夜も朝も無い蒼穹から降り注ぐ熱光線はじりじりと肌を焼き、ただ立っているだけでも額に汗が滲む暑さを生む。夏だからか気温が高く、だが湿度が低いために、そう不快には感じられなかった。

 衛士が左端に、そこから一列に並ぶ面々はそれぞれ、七文太ななぶんた坂詰保志名さかづめほしな、ステッキ・サラウンド、イリス、エクス・バスター、エイダ、ハンズという順だった。

 彼の印象的には、軽い男に、幼い少年、勝気な娘、控えめで健気な娘、常識人の坊ちゃん、美女、そして屈強な勇士、というものである。

 ハンズという最年長の男は訓練以外ではあまり姿を見せないものの、この訓練兵の中で一等の実力者と言うのが周知の事実であり、無口で一見気難しそうながらも、話してみれば気の良い男だと言う事もあって、人気者であった。どちらかといえば憧れというものを抱かれる彼は、それを素知らぬ顔で受け流し、自身を鍛えているのだ。

 坊主頭を伸ばしたようなツンツン頭に、切れ長の鋭い目。がたいは大きく、筋肉質。風貌これだけで、多くの人間に威圧を与えるような彼だった。

「今日は四対四の集団戦の課題を行うという事だが……それで確かか?」

 彼等の前で仁王立ちする船坂は、見下ろすようにして告げる。その言葉に各々が頷き返答すると、彼は了解との言葉を返し、自身の背後に置いたダンボール箱を持ち上げ、自身の手前に落とした。

 その中にはゴム製のダミーナイフが人数分より多めに用意されており、またその他にも銃火器や、短剣、手甲など様々な武器が納まっていた。小さめに見えた箱もそうやって見ると割合に大きく、船坂による錯覚は随分と強烈だと再認識する。

「武器は全て訓練用だ。拳銃もペイント弾だが、染料ではなく小麦粉になっている。ほれ、自分の使い易い奴を持ってげ」

 彼の言葉に反応するように、それぞれが動き出しダンボールに殺到する。一人は拳銃を、一人は二本の短剣を、一人は手甲を、一人は組み立て式の槍を……それぞれがそれぞれなりに武器を持ち、定位置に戻って背筋をぴんと伸ばして停止する。衛士はようやくたどり着けたダンボールの中を覗いてみると、残されているのは拳銃とナイフのみだった。

 短い溜息の後に、仕方なく予備弾倉も無いそれとナイフとを手に取り、腰のベルトに差して戻る。その際に船坂から「全部持ってっていいんだぞ?」との言葉が掛かったが、衛士は背を向けたまま軽く手を上げ、台詞に反応するだけに終わらせた。

「では、これから俺が平等に振り分けたメンバーを発表する。呼ばれたものは列から抜けて後ろに下がれ」

「船坂さん」

 後ろで手を組み、いよいよ名を呼ぼうとした所で声が遮った。衛士はそうした後に一歩前に出て、彼の眼を見据えて、視線で促されたのを感じて続けた。

「平等に……ですよね」

 真剣な眼差しは船坂を射抜く。そうしてその言葉の意味に、船坂は難なく気付くことが出来て――嘆息の後、彼は面倒そうに頷いた。

「あぁ、平等にな」

 仕方が無いと彼は顔をしかめた後、頭を軽く掻いて短く思考する。だがそう時間はかからずに、すぐさま初めの一人の名が呼ばれ、途切れる事無くそれは続く。

「トキ、坂詰、イリス、サラウンド。これがAとして、残りがBだ。五分後に作戦を開始するが――ルールは敵の殲滅、あるいはリーダーの撃墜だ。死亡判定は俺がする」

「ちょ、待ってくださいよ!」

 再び彼を止めるのはステッキの制止だった。船坂は予測しえた彼女の反論にまた面倒そうな顔をしてから、翻しかけた身体を戻し、彼女の正面に立つ。ステッキは構わず捲くし立てるように、眼光を鋭くさせた。

「平等って、これじゃ火力の差が歴然です!」

 彼女が持つ武器は対なる短剣だ。イリスは槍であり、坂詰は銃。

 一方で相手のチームは文太が短機関銃を持ち、バスターが小銃を装備。エイダは擲弾銃を、そしてハンズは手甲をそれぞれ装備していた。攻勢としては後者が圧倒的に有利であり、それと比較する前者はもはや前時代の産物のみを扱っているようにさえ思えてしまう。

 最も、武器などはそれぞれに長けていれば相性こそあれ、強弱の判断は難しいものだ。

 しかし今回は長けては居らず、さらにこの状況では明かにAチームが不利であり、船坂の言う平等とはかけ離れた結果となっていて、それ故に不平を漏らすステッキは誰が見ても仕方が無いと思えた。

 彼女が騒がずとも、その結果を聞いて周囲は既にざわめいているのだ。

 衞士の実力を侮っているのはステッキだけだが、文太は過小評価しており、バスター以下三名は彼が実力を隠しているのには気付いてはいたものの、これ程までではなかった。

 この際に一切の動揺を見せなかったのはイリスのみであるのだが、彼女は衞士と自身の担当者に関係があったことを知っているから、それをむしろ当然だと考えていた。

 だが――衛士はこの結果に苦笑しか漏らさない。

 明かに近接格闘しか出来ないこちらのメンバーでは、まず初めに相手の頭を抑えることで有利となる状況が築けないのだ。武装から考えて一番厄介なのが七文太だが、これは衛士の機動だけで肉薄して倒すことが出来る。だがその際に、衛士の行動を見て確実にハンズが飛び出てくるだろう。

 下手をすれば文太を始末する前に彼が出てきて応戦する可能性がある。この場合は即座に後退する必要があるのだが、確実に援護が必要なのだ。相手のチームは同様の作戦に加えてチームワークと言う心強いスキルを持っている。しかしこちらは、それとは無縁なのだ。

 衛士が一人で突っ込み相手をかく乱させながら潰す事も作戦の一つとして考える事が出来るだろうが、それは余りにも無謀な作戦だ。

 彼等は個体で鍛え抜かれた軍人に匹敵するだろう。しなければならないのだ。

 他と比べて、適正者だとか言う以前にこの地下空間ジオフロントの中にいる戦闘員の総数は一般的な軍に比べて圧倒的に少ない。だから個人が、一人が一人分の戦力を持つだけではあまりにも割に合わない。だから強くなくてはならず――また、衛士の目の前に居る彼等は四ヶ月間休み無くみっちりと身を寄せ合って汗水を流し時を共にしていた仲間たちだ。たとえ戦闘教育がついこの間始まったばかりとはいえ、絆は固いものだろう。

 そんな者が相手では、いくら実戦慣れしているからとは言っても苦戦は確実に強いられ、冷静に考えれば自殺行為に他ならない。

 その上、今まで殺してきた相手に精鋭部隊プロは居なかったが、彼等は精鋭として育てられてきている。ステッキらを戦力に含めても、勝利できる確率はきわめて低いだろう。

 だから衛士も手を上げ、ステッキと同様に船坂へと詰め寄った。

「せめてサラウンドさんとバスターを交換してくださいよ」

「なっ? わ、私は戦力にならないって言うの!?」

 船坂の要望は果たして傍らの少女の激情を突き動かした。衛士はそれを聞き流して船坂の返答を後ろで手を組み静観して待つも、ステッキは鼻息を荒くして肩に掴みかかる。衛士はそれを軽く手で振り払ってから、小さく嘆息した。

 その光景に船坂は一つ息を漏らして、薄笑いを衛士に浮かべる。彼は足元のダンボールを指差して口を開いた。

「全部持って良いと言っているだろう?」

 箱の中を覗けば無数の拳銃とナイフ。

 最も、一概に拳銃といってもその種類は多々ある。まず一般的な自動式拳銃オートマチックに、回転弾倉式リボルバー、上下二連のようになっている小型の複銃身式銃。その中でも特に際立つのは、オートマチックのグリップから水平に生える小銃の銃床が目立つマシンピストルだった。

 最も、他の自動式よりもマシンピストルの方が単純に数がある。予備弾倉が無い上に短機関銃を小型化させたようなピストルをわざわざこの状況で好き好んで使用する者はそうそう居ないだろう。

 衛士は肩をすくめた後、自身が選んだマシンピストルの他に自動式を二挺と、銃床を外してマシンピストルを一挺手にとってから、念のために訊いてみた。

「予備弾倉は?」

「武装はこの箱の中にあるだけだ。そう長引いても、俺も面倒なんでな」

「ちょっと、トキ。あんた話聞ィてん――」

 耳元で喚く金切り声に思わず耳を塞いで、やかましいと一言添えながら自動式拳銃を手渡す。それから駆け足で後方で一応チームを作るイリスと坂詰の下へ急ぎ、それぞれ自動式とマシンピストルを与えてやった。

 そそくさと目の前から逃げ去った衛士の後を追うステッキは、その最中でこれほどかっかと頭を煮えたぎらせてはいけないと、以前仲間から批判されたことをふと脳裏に蘇らせて、足を止め、大きく深呼吸を試みる。肺一杯に吸い込んだ空気は心を落ち着かせるような気がして、静かに息を吐くと、これまた俄かなリラックス効果が得られたような気がした。

 未だ衛士が自身を戦力外と判断したのには気に喰わないが、一方的な感情を押し付けるだけでは何も変わらない。彼女はその程度の成長を見せてから、心なしか落ち着きを取り戻す足取りで、やがて衛士たちの輪に加わった。

 すると途端に耳に届いたのは、先ほど船坂に告げた傲慢な声音などではなく――。

「どうせやるなら勝とうぜ!」

「はい」

「おー!」

 などと言う、奇妙なまでに意気込んだ連中の小さな咆哮だった。

 それからステッキの存在に気がついた衛士は彼女を含めて、残る僅かな時間で作戦を立てる。否、それは最早衛士の頭の中で決められたものを伝えているだけのようなものであったのだが、それでも、この四人の中で知恵を絞って提案し合い作るソレよりも、十分勝機が見えそうで、大きな賭けともなるものだった。

 ステッキが思わず弱気に「行けるの?」と問うも、彼は彼女に負けないくらいの、いつもとは違う見たことも無いような強気な顔で、

「冗談じゃない、行くんだよ」

 とだけ返す。

 それから間も無く船坂の手を叩く音が乾いた空気に良く響いて――演習が開始した。

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