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夏休み

 時衛士ときえいじは事後報告に使用したノートパソコンを小脇に抱えてから、肩に掛けるリュックサックにそれを押し込むようにしまう。迷彩柄のズボンに吸水性の高いインナー。加えて着るのはタクティカルベストで、武装は解除しているものの、平和を極める成田空港ではやはりその格好は目立ってしまうらしい。

 ジロジロと人に見られるのに、いい気がしないのは当たり前だった。

 しかし、丸一日かかった戦闘の後、休む暇も無く旅客機に乗り込んで一日近いフライトの中で睡魔と格闘しつつ報告書レポートを書き終えた彼にはなりふりを構う余裕は無かった。

 ――そもそも、独立している専用の衛星があるからこうして連絡は取れるのに、国内に戻らなければ転送が出来ぬとは一体どう言う了見なのか。考えてみるも、無駄だと首を振った。

 衛士はやがてロビーに出てくると、近場の自動販売機から適当な飲料水を購入し、そのまま外の景色を映すガラスが正面にある椅子へと腰をかけた。

「しかも、交通費も出ねぇんだからな……まだ訓練兵なのに」

 表の世界で使い道も無い金をアルバイトで荒稼ぎをしたお陰で一○○万円近くの貯金があり、さらに金の使い場所が無い地下空間ジオフロントで幾度とも無く任務を達成しているお陰で、既にその貯蓄は五倍以上に膨れ上がっている。

 最も、弾薬などの消耗品や装備を損耗、故障させた場合には報酬から引かれるのだが、今の衛士にはそれさえも大した痛手にはならなかった。

 だが今回、短機関銃と拳銃、あわせて五十ある予備弾倉を消耗し尽くした事について考えると少しばかり下腹部が痛くなる。これで金欠になることは決して無いし、報酬に大きな影響が与えられる事も皆無だが、それでもやはり使いすぎた感が否めない。資金面での苦労などはあまり考えたくは無いことだった。

 しかし、たかが数十円で購入できる銃弾一発で、下手をすれば人の命を奪えるのだ。

 これほどまで容易に命を奪う仕事をする羽目になるとは思わなかったが、それでも、それに対して何の感慨も恐怖も悲壮感も懺悔する心も持たぬのは、それ以上に予想外の事だった。

 衛士はキンキンに冷えた缶のブラックコーヒーを飲み下すと、途端に強い渋みが襲い掛かる。ロビー内に行き渡る冷房の冷気と手を組み、それは衛士の睡魔を瞬時に払拭せしめていた。彼はそれから空になった缶を床に置き、同時に購入しておいたペットボトルの炭酸飲料を手に取った。

 妙な窮屈感が気になって首を捻ると、驚く勢いで骨が鳴る。次いで逆側も同様にしてやってから、胸いっぱいに息を吸い込んで、吐く。これで幾らかは気分が晴れたような気がした。

 だがしかし、まだ帰るには嫌な気分が心の中に蔓延っている。

 ――三日以上も訓練校を離れたのは今回が初めてだった。

 そもそも日中の表の世界への外出自体が存在しておらず、ついでに言えば暴動を抑制する為の殲滅作戦に派遣されるのも今回が初めてだ。だからそれも仕方が無いが、今日ばかりは、帰ってから何をどう言い訳をすれば良いのか分からない。

 適正者候補仲間に任務に出ていることは、理由は分からないが禁句だ。だから、どうにかしてごまかさなければならないのだが……。

『――ご搭乗のお客様は、搭乗ゲートまで……』

 アナウンスが思考の邪魔をする。衛士はそれから気晴らしにと正規のパスポートをバッグから取り出し、まだ若かりし頃の自身の顔を見て苦笑する。

 若いといってもまだ一年と少し前の写真である。高校の修学旅行の行き先は外国だとか言う戯言を本気にした彼はさっそく役所にてそれを申請したのだ。しかし最早それは不要となっていたと思われたが、まさかこんなところで役に立つとは思わなかった。最も、勝手に更新されているのを見ると、やはり偽造なのかもしれなかったが。

 順調に行けば、今は進学、就職を目前に控えた高校三年の夏だ。学園生活を思い返そうとしてみても、一年と少しばかりの短い期間は、既に記憶の彼方に追いやられ忘却していた。

「こんなモンか……」

 物悲しくなる一方で、感慨にすら耽ることが出来ないほど心が乾いているような気がした。

 感情はある。怒るし、悲しむし、人に気を遣わせないように繊細な努力さえも怠らぬようにすることもできる。だが感動は無かった。感傷は存在しなかった。潤いは無く、今の生活さえも考えようによっては幸せであると考えられるようになっていた。

 命を賭け、それに対する報酬を貰う。傭兵のようなものだ。加えて地下に戻れば、自身が唯一熱を出すほど想った女性が居る。今はまだ忙しすぎてそれに考えを向けることは出来ないが、やはりそう考えれば幸福なのだろう。

 ただ少し物足りない気がするだけだ。それだけならば、別に良い。それ以上は贅沢だ。

 大きく息を吐くと、まだ昼間だというのに中学生くらいの子供たちが数人で目の前を横切っていった。

「サボリか?」

 いや、と衛士は首を振る。それから確かめるように携帯端末を見てみると、日付は既に八月一日を示していた。

「夏休みか」

 いいものだ。オレには休みも何も無い――。

 衛士は大きく息を吐いてから、ジンジャーエールを一気に飲み干し、ピリピリと耐え難い痛みを喉に覚えて顔をしかめた。



「――く、訓練は?」

「だから、休みだって。夏休み。クーラーが無いと集中できないから自宅学習ってのと同じ……じゃないけども」

 空港での検閲を華麗にスルーしてすぐさま地下へと舞い戻る彼は、お決まりのように寮の前に転送されていた。それから私物を部屋に置いてから急いで訓練が行われているであろうグラウンドへと走ると、そこはもぬけの空だった。

 わけも分からぬ頭でエミリアの自室へ向かうも留守であるらしく、続いて船坂の部屋に訪れては見るが人の気配すら無い。だから医務室へと来て見れば、そんな俄かに信じられない言葉が返ってきたのだ。

 彼はその台詞に当面は消えぬであろう困惑を顔に貼り付けてから、幾度かの質問に対する答えをようやく理解した。

「いつから?」

「今日。君がバカみたいに汗掻いて……えーと、中東だから……今が十一時で……」

 彼女は指を折り数え、それから違う違うとぶつくさと独り言を零しながら、幾度も幾度も計算をしなおして、やがて面倒になったのか、拳を握るとそのままファイティングポーズをとった。

 衛士は反射的に受けるように手のひらを向けると、彼女はそのままジャブを一度して見せてから口を開いた。

「君が慣れないタイピングで一万文字前後の報告書レポートを一日かけて書いてた頃よ」

 文法も酷かったわ、と彼女は付け足して、卓上に置いてあるコーヒーカップを手に取り口元へ運ぶ。

 冷房の効く施設はこの医務室と食堂であるために、随分とこの貧弱な空間に慣れてしまっているような彼女は、気温差を感じ寒さを覚えて身を抱く衛士とは対照的に、薄着で冷たい飲料で喉を潤していた。

 この不条理にかすかなイラつきを覚えるが、衛士はそんな事はどうでもいいと首を振って話を戻す。

「期間は」

「きっかり一ヶ月。九月には”仕上げ”が始まるわ」

「それなのに夏休み?」

「あら、夏休みには課題が付きモノってのを忘れちゃうほど、この世界に順応してくれたのかしら」

「いやいや、オレは九月の提出期限ギリギリまでやらなかった派ですから。無いようなものでした」

「でも今回は一つ一つの課題に一つ一つ、それぞれ提出期限があるから気をつけないといけないわね」

 彼女はそれから、自身の言葉で思い出したように手を打つと、机の引き出しを引いて数枚のA4用紙と、それから一枚のCD―ROMを衛士に手渡した。

「君の課題、それだから。一枚目に提出予定と場所が書いてあるから今の内に最初の所だけは目を通しておいてくれると助かるわ」

「期限が切れたらどうなるんです?」

「フナサカ氏のフル装備とタイマンって予定」

「応援してください」

「課題に力を尽くしてから言って欲しいわねー。個別にそれぞれ、一生懸命考えたんだから。ま、担当が居るのは担当が、だけど」

 衛士が肩をすくめると、保健医は意外だと言わんばかりに笑みを薄めて真顔になる。

「ミシェルが関わってるって言うのに、あまり喜ばないのね?」

 頷いてから、背を向ける。衛士は彼女の言葉に何も答えぬままにその部屋を後にしようとして――。

「あぁ、それから、仮に今日提出の課題があったら、明日まで期間が伸びるわよ。任務終わりの人間には考慮して、次の○時までは丸々休みにしてあるのよ」

「……二三時五○分に帰ってきても?」

 首だけを回して後ろを見ると、彼女は口角を吊り上げて首を振った。

「考慮するって言ってるのよ」

「そうスか。まぁ、良い事聞ィたんで今日はもう寝ます。戦場アフリカはやかましくて眠れやしなかったんで」

「そう。おやすみ」

「えぇ。おやすみなさい」

 衛士はその後に大きな欠伸を一つ漏らしてから、医務室を後にし扉を閉める。残された彼女は机に向き直ってから、再びコーヒーカップの内容物で喉を潤して、展開してあるノートパソコンへと視線を移した。

 文章はともかくとして、今回の報告は酷く興味深かった。彼、時衛士が回収してきた機械的なマスクと、チューブには価値があり、現地で行ってきた『付焼刃スケアクロウ』達の尋問結果も随分と貴重なものである。

 ――戦場では総数五○名の敵を殲滅した。一方味方の初期配置、民間軍事会社からの傭兵は十人で、衛士らリリスからの援軍が五人。生き残ったのは傭兵五人で、支援職員は僅か衛士を含む二人。これでも随分と生き残った方だと言えるのだから、戦場は過酷であるのが容易に理解できる。本来ならばこちらが全滅していてもおかしくは無いのだ。

 敵団体はやはりテロリストでその目的は現政府に対する暴動だったのだが、リリスからの要請に応じた軍事会社とリリス職員によって簡単、とは言いがたくも制圧されてしまったのだから、結局、抑圧する部隊が存在しなくとも彼等には国を変えることは出来なかっただろう。

 しかしどちらにせよ、そんな掃いて捨てるほどある団体の目的や行動などは最初から興味が無い。彼女の食指を動かすのはどこからとも無く湧いて出る『付焼刃スケアクロウ』の存在だ。

 付焼刃はリリスが定義する、人個体が副産物と呼ばれる特殊な道具を用いずとも特殊能力を行使する『特異点』とはやや異なる。特異点と言う存在は、副産物を肉体の一部とする事によって――可能性は低いが――目覚めた人間だ。能力はその副産物どうぐによって大きく変動し、ソレ同様、あるいは近い種類の能力を有する事が出来る。

 だが付焼刃は違うのだ。ソレは何の制限も無く特殊な能力を使用し、その種類も、現状を考えれば無数に存在していると考えて良いだろう。例えば発火能力だったり、例えば大気を操作する能力だったり。それは様々で、さらに、特異点とは異なりその数が徐々に増えてきている。

 養成しているのだろうが、その増え方は明かに異常だった。

 特異点はある種の才能だ。だから限られた人間しか目覚めることが出来ないし、現状での特異点は、少なくともこの日本の組織リリスには居ない。ただそれが観測できていないだけかもしれないが――その特異点に一番近い位置に居る人間も、片手で数えられる程度しか居ないのが実際のところである。

 しかしその分、その能力に覚醒する事が出来れば一騎当千の力を持つと言われるほど、その力は脅威的だった。

 だからこそ、容易に能力に目覚める事が出来る付焼刃スケアクロウは魅力的だった。付焼刃と呼ばれるほどにその力は未熟だし、案山子スケアクロウと呼ばれるほどその存在意味は明かにリリスへの挑発じみたもので、こちらを意識して作られたと言う事は明瞭だった。

「だけど……」

 だがしかし、付焼刃を生む技術はリリスには無いモノだった。

 矯正器具があるのは分かっている。今回ではより簡易化されているソレを、ようやく入手する事に成功した。

 だがそれでも、どうやってその力を精製しているのか、生み出しているのか、発現させたのかは分からないだろう。

 人間の、よく脳医学の教授が言うみたいに「生活するに於いて使われない部分を使用している」のかもしれないし、特殊な器具を肉体に埋め込んでそれを実現しているのかもしれない。一見すれば後者の可能性が高いようにも見えるが、実際には恐らく前者だろう。

 そんな器具を作るには途轍もなく大規模な開発施設や技術者、そして資金が要るし、そんなものをコソコソと隠せる筈が無い。

 ならば脳の中にある使用されていない部分を使っているのかもしれないが、そもそも、普通の生活をしている際の脳の使用領域は多くて十数パーセント、という事がデマであるのは余りにも有名な話である。

 だからある種の洗脳か、脳、ないし肉体の改造と考えるのが妥当だった。

 改造……機器を埋め込んでいるのか、あるいは特殊な力によって強制的に肉体の性質を刺激し、変異する段階にまで進化させているのか。

 そんな完全に不明瞭であることを考えてもキリがないのは分かっていたが、それでも保健医はそれが気になって仕方が無かった。

 酷く興味があるのだ。

 以前まで――十年近く前までは技術開発部に居た彼女だからこそ、そういった興奮を覚えるのだろう。

「ホロウ・ナガレの関与……何が目的なのかしら」

 ホロウ・ナガレは特異点に目覚め、そしてこのリリスを辞した男の名だ。現在分かっているのは、彼が遅延弾丸スピードローダーと言う、任意のタイミングで発砲した弾丸の動きを停止し空間に固定する事が出来る弾丸の副産物を全身に受け、能力に目覚めたということだ。

 その効果は、彼を中心とする周囲数メートル、ないし十数メートルに入り込んだ無機質の動きを完全に停止させるもの。それ以外にも何かを有しているのかもしれないが、現在では未だ不明だった。

 しかし今回の任務で得た情報を見るに、彼が関わっているのは確実となる。疑惑から確信に、というものだった。

 彼女は顎に手をやってから、マウスへと腕を伸ばし文書を見つめる。ホイールを回転させて、次の文章を興味有り気に幾度も反芻するように読み込んだ。

 ――敵の付焼刃スケアクロウは想定していた人数よりも二人少ない三人だった。恐らく逃げたというわけではなく、単に少なかっただけだと思われる。内訳は、一人が物理的な攻撃を防ぐ防御壁シールドを展開させるもので、一人が発火能力者。残る一人は思念伝達テレパシーを駆使し、集団の最後方に位置していた。

 最初の一人は能力が能力であるために捕縛する余裕が無く殺害をしたが、二名の捕獲には成功。発火能力者はその発火能力が可能な位置が限定的であり、威力は火炎放射器並と非常に危険であったが、肉体を拘束した時点でほぼ無力と化した。

 またテレパシストはどこまでの範囲に適用する能力かはわからなかったが、少なくとも得られて困るような情報を漏らすことも無いので放置し、尋問を開始した。

 その結果、全ての付焼刃スケアクロウの情報との共通点を見つける。それは『ホロウ・ナガレ』と接触し、ある一年前に何らかの実験を受けているという事だった。

 何の実験かは記憶から消されているらしく知りうる事は不可能だったが、少なくとも現在能力者として存在する人間は、一年前の実験体であった事が確実であるらしい。身に着ける矯正器具の数々は、その能力の適正に応じて軽装備から重装備まで対応しているのだと思われた――。

 彼の付焼刃スケアクロウに関する報告、推測はそこまでだったが、それで十分だった。

 ナガレの関与に、一年前の実験と言う存在。彼が逃走者になったのは二年前だ。正確には、既に三年が経過したが――その間に、彼が何を考えどうして今日へと到ったのか。それを知る者は居ない。

 最も、それを調べるのが彼女等職員なのだが――そろそろ動くべきか。

 彼女は重い腰を上げて、両手を天井に伸ばす。後頭部で両腕を組むようにして身体の筋肉を解すと、彼女はそれから大きく息を吐いた。

 ――抑圧組織リリス。目的はあらゆる犯罪や暴動などを抑圧する一方で、様々な技術開発を行うこと。現在では既に世界を支配できる程度の技術を有しているが、それを知る人間はごく限られていた。

 彼女はポケットから携帯端末を取り出して、登録されている番号へと発信。すると間も無く、相手は電話を取り、声を発する。

『アイリンさんから電話なんて珍しいですね。何かありました?』

「その名前で呼ばないで欲しいわね。あたしはしがない保健医よ……ま、それも近いうちに終わるかも。いえ、両立させて見せるケドね。トキ君の報告書にはもう目を通してくれた?」

 人懐こいような声は女性のもので、慣れ親しんだように彼女を呼んだ。保健医はそれを制するように軽く流してから、雑談をするつもりはないと、早速本題へと移る。

 相手の女性はすかさず「えぇ」と相槌を打ってから、保健医へと促した。

付焼刃スケアクロウ……多分、上層部はどうでもいいって感じかもしれないケドね」

『この情報は割と大きいですよ。あと、機械マスクとチューブも手に入れたんデスよね? チューブ内に何らかの成分が残っている内に検査をしたいんで、今からそちらに伺っても良いですか?』

「いえ、あたしからも話したいこともあるし、学校での役割も殆ど無いようなモノだし、あたしがそっちへ行くわ」

『はは、なら迎えを寄越しましょうか?』

「面倒だわ。そっちで転送してくれないかしら」

『了解。なら一分後に中央研究所こちらに転送します』

「えぇ、お願い」

 通話は其処で終わり、端末の小さいディスプレイには親切に転送までのカウントダウンを表示されていた。アイリンと呼ばれた保健医は赤い髪を掻き毟るようにしてから、椅子の背にかけた白衣に腕を通す。

 それから必要な書類が収まるクリアケースと、持論を固めてバックアップを入れておいた外付けのSSDをPCから外して、乱雑にポケットに突っ込む。そこまでして、残りの時間はようやく十秒を切った。

 この調子ならば”夏休み”が終わるまでにある程度の解析は終わるだろう。しかしその為にはまた幾つかの情報サンプルが必要になるから、衛士でなくとも、誰かに付焼刃スケアクロウと接触してもらわなければならない。

 しかし――彼女の夏休みの課題はこれで決定した。これさえ、”正解”の半分近くまででも解析が成功すれば、副産物とて幅広く作成できるだろう。そしてリリス内の技術を駆使すればより質の高い付焼刃スケアクロウを生み出すことも可能なはずだ。

 副産物の多種類化や単純な強化、適正者の成長。そして一般兵の付焼刃スケアクロウ化……。

「……忙しくなりそうね」

 彼女は最後に嬉しげな言葉を残して――次の瞬間には、その医務室から跡形も無く姿を消した。

 夏休みはここで初めて始まりを告げる。この時点では、誰もこの夏休みが想像以上に過酷になることを知る由も無かった。

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