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凍玻璃でできた水泡  作者: 西埜水彩
初都にて、探し人
7/8

「六神様はいません」


 花月巻きとか呼ばれるような珍しい髪型をしているのに対して、服装は紺の二尺袖と袴というあっさりした感じ。どこかちぐはくな感じをする人が、六神の初都やしきを管理している人だ。


「六神は初都にきたらしいけど、この屋敷には来ていない?」


「7月以降は六神様が初都へは来ていません」


「そうか、ちょっと家の中見ていい? 何か怪しいことがありそうだから」


「かまいませんよ。始祖神様なら何か分かることもあるでしょう。お昼の時間ですし、昼食も用意しますね」


 六神の初都やしきの管理人は、なぜか始祖神様に対して優しい。わざわざ話を聞きに来た私たちに対して、お昼ご飯を用意してくれるらしい。


「ありがとう」


「ありがとうございます」


 そこでお礼を言って、六神の初都やしきへ入る。


「オレンジの髪をしてかなり昔の女子っぽいファッションをしているのなんて、六神くらいしかいないからおかしいな」


「新都でも話題になるくらい、珍しい格好を六神様はしていますね。だから別の人と見間違えるのは難しいです」


 新都の学校でも六神様の格好について、かなり話題になっていた。だから私も知っている。


 確か六神さまは袿単衣姿という、旧都に都があった時代の日常着をよく来ているんだ。


 そんな服装をしている人、今は六神様以外にはいない。そこで見間違えるなんてありえない。


「とはいえ家の中はきれいだし、特別な香りもない」


「七神の初都やしきと中は変わりません」


 歩いてみても、七神の初都やしきと区別がつかない。それほど六神やしきに特別なところがない。


「こちらでお待ちください」


 リビングで座って待つこと少し。その人は食事を用意してくれた。


 豚肉の入ったみそ汁、卵焼き、そして命の実のつけものとごはん。とてもおいしそうだった。


「私は六神の初都やしきの管理人、美千(みち)です」


「私は見てわかるとおりに始祖神。今回はよろしゅう」


「私は七神ゆかり、冴夜村の夜々です。今回は7月29日にいなくなったとされる幼なじみの月場を探すために、初都の人に色々話を聞いています」


 食事の前に自己紹介をする。


「そうそう、だから7月29日に美千さんは何をしていたの?」


 自己紹介が終わると、始祖神様はストレートに話を聞く。


「うーん覚えていないです。7月28日に七神やしきにかなりのイケメンがかなり出入りしていたし、そのイケメンが初都に来たのは7月27日だってことは覚えています。でも7月29日のことは覚えていません」


 ゆっくりと答えて、みそ汁を飲み美千さん。


 そういえば私、久しぶりに肉を食べる。豚肉入りのみそ汁なんて新都にもないほど、珍しい食事だ。だというのにこんな思い雰囲気の中で食べなきゃいけないのは辛い。


「へー7月29日に何をしたかも覚えていない?」


「そうですね。ちょっと記憶があやふやです」


 始祖神様と美千さんは話をしている。とはいえ有力な情報はなかった。


 そこで食事が終わったら、六神の初都やしきから始祖神様と一緒に出る。


「7月29日のことを他の人にも聞いてみるか。ということで今度は五神の初都やしきにも行ってみよう」


「そうですね」


 六神の初都やしきの人は覚えていなくても、五神の初都やしきの人なら覚えているかもしれないし。


 そういうわけで始祖神について、五神の初都やしきへ向かう。


「すみません。7月29日に何をしていましたか?」


 五神の初都やしき。会ってすぐいきなり、始祖神様は五神の初都やしきを管理している人に質問している。


「覚えていないです。7月29日ですよね」


 出てきた人は丁寧に答えてくれる。とはいえこの人も覚えていないらしい。


「五神の初都やしきはあなた1人?」


「そうです、僕だけです。確か四神から七神までの初都やしきは基本みんな1人で管理しています。七神の初都やしきの人とはよく会うんですが、それ以外のやしきの人とはあまり関わりはないです」


 この人は七神の初都やしきを管理している人と似ている。まるで双子みたいだ。


「毎日会っているの? 七神の初都やしきの人とは」


「そうです。買い物は基本的に一緒に行きますから」


「ならば7月29日にも、七神の初都やしきの人と会った?」


「それが覚えていないんです。7月28日に七神やしきに1人増えて、7月30日に1人いなくなったという話を聞きました」


「ありがとうございます」


 結局五神の初都やしきでも情報は手に入らなかった。ただ始祖神と五神の初都やしきを管理している人が話しただけだ。


「もしかしたら答えが分かるかもしれない。ということで今度は七神の初都やしきへ行こう」


「分かりました」


 若干うきうきしだした始祖神様と一緒に、七神の初都やしきへ向かう。


 今までの話で何が分かったのか? それが全く分からないまま、ただ歩く。


「すみません、戻ってきました」


「こんにちは」


 私は帰宅、始祖神はお客様。ということもあってか、七神の初都やしきの管理人である(かもめ)さんは驚いたように私たちを見る。


「始祖神様どうしましたか? 夜々さんはおかえりなさい」


「7月28日に月場が来て、7月30日に月場がいないことがわかった。ということは7月29日に何をしていたのか覚えてる?」


「それが覚えていないです。記憶が、7月29日は全くありません」


 少し考えて、鷗さんは答える。


 そういえば今まで話を聞いた人は皆、7月29日の記憶がない。これは偶然では片付けられないような、何かがある気がした。


 何よりも7月29日に月場がいなくなったと報告している、七神の初都やしきの管理をしている人も記憶がない。そこには何かあるのだろうか? うーん分からない。



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