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凍玻璃でできた水泡  作者: 西埜水彩
初都にて、探し人
5/7

「そろそろ夜だし、続きは明日にしよう。また会ったら話そうね」


「かしこまりました」


 ということでひとまず初都の七神やしきへ戻ることにした。


「夕ごはんにするぞ」


「はーい」


 戻ってから、すぐに夕ご飯。


 私も準備を手伝って、食事を取る。


 今日の夕ごはんは白米を炊いたもの、とうふときのこのみそ汁、大豆と野菜の炒めもの、そして命の実のつけもの。


 冴夜村よりははるかに豪華だけど、新都に比べると質素だ。もちろん冴夜村で取った食事よりもはるかにおいしいけど、新都で取った食事よりも物足りない。


月場(つきば)はなぜ初都へ行くこととなったのですか?」


 冴夜村から初都までは往復12時間。そこで初都に神やしきはあるものの、冴夜村から行く人なんていない。


 ぶっちゃけ初都やしきは管理人以外行かない場所だと、私は思っていた。


「初都に住んでいる八神様の婿候補に月場が選ばれたんだ。それで八神様に会わせるために、月場を初都へよこしたらしい」


「八神様ですか・・・・・・」


 色々な家とつながっているのが、神様だ。でも八神様は生まれたばかりの神なので、ゆかりの家はない。


 そこで八神様と縁をつなぐために、あちこちの家が様々な策を練っているらしい。月場は顔立ちが整っているから、婿候補としてふさわしいと思われたのだろう。


「八神様だけ未婚者であることもあって、色々な家が八神様の結婚相手を初都に送ってきているらしいぜ。七神様はおとなしい方で、ほかはもっと人をよこしている」


「うーん八神様のことが分からないから、どういう風にコメントしたら良いかは分からないですが・・・・・・」


 私は八神様とは会ったことがない。


 神様は大体既婚者で、二十歳以上が多い。そんな中十七歳で未婚の神様だから、余計に結婚相手を薦めてくる人も多いはず。私が想像できないくらい、大変だろうな。


「とはいえいくら顔立ちが整っているからとはいえ、月場が小学校を卒業してから七神やしきで下働きをしている人です。神様なら大学卒の人とも結婚できそうです」


 神様は基本女性だ。尊い存在ということもあってか、大学を卒業した男が結婚することが多い。


「それだけ七神やしきは人手不足なんだって。それもあってか、月場はよく外に出ていたぜ、まあ七神の初都やしきにずっといても八神様とは会えないから」


「そうですね。八神様が七神の初都やしきへ来られるのは難しいでしょう。そこで外へ出た方がまだ、八神様と会うこともできるはずです。それよりも月場が七神の初都やしきの外で何をしていたかご存じですか?」


「それは知らない」


 どうやら七神やしきの管理人にも教えないで、月場は単独行動をしていたらしい。


 そこで食事を終えてから、風呂場で体を清める。冴夜村ではお風呂に入らなかったので、新都でもそうしている。そこでここでもお風呂には入らない。


 お風呂上がりに布で髪を包んでから、寝るための部屋へ向かう。そこで明日のことを考える。


 八神様の婿となるべく、初都へやってきた月場。ということなら八神様にも会った方がいいかもしれない。


 私は七神様以外の神様とは会ったことがない。いやさっき始祖神様と会ったから、2つの神以外かな。


 八神様は神になりたてなので、ほかの神よりも人としての感覚が残っているという話だ。


 とはいえ神は神。たとえほかの神よりも人っぽさが強くても、神様が人と一緒であるわけがない。


 でも人が消えている以上、八神様にも絶対話を聞く必要がある。もしかしたら月場は八神様に会っているかもしれない。そうしたら八神様が月場のことを覚えている可能性はある。


「月場は見つからないもこ?」


 もこはふわふわといつも通りに空を飛んでいる。さっきからずっと黙っていると思ったけど、なんか急に話し出した。


「見つからないよ。もこは何か分かる?」


 もこは何をできるのかよく分からない。そこでもこが月場を探すために役に立たなさそうだな、そう思っている。


「分からないもこ。もこはまだ修行中だから、分かることは少ないもこ」


「そうなんだ」


 まあもこはあてにしていないから、別に良い。


 今日は冴夜村から初都まで歩いたから、かなり疲れた。そこでもう寝ることにしよう。


 歯を磨いてから、寝る準備をする。新都ではベッドで、冴夜村ではわらの上に布をひいたものだった。それもあって新都と冴夜村では寝るときの差が大きかった。


 初都では違う。ベッドよりも薄いマットに、ふわふわの布団がある。要するに新都には及ばないけど、冴夜村よりはうーんとましだ。


「初都は冴夜村よりも栄えているもこ」


「それだけで初都にこれてよかった」


 冴夜村よりも生活レベルがましだ。少なくとも冴夜村よりも、安心して過ごせる。


「ここはいい場所もこ。ずっとここにいたいもこ」


「とはいえ私は新都の方がいいや」


 冴夜村よりもましなだけで、初都も不便なところがある。そこで新都へ早く戻りたい。


 もう私の居場所は新都にあるんだ。首都があって栄えている新都、そこ以外で私の居場所があるとは思えない。


「おやすみもこ~」


「おやすみ」


 部屋の明かりとなっている、ろうそくを消す。


 さーて寝ようか、もう夜だし。



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