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凍玻璃でできた水泡  作者: 西埜水彩
七神様のお願い
4/7

「このお菓子おいしいです」


 みかさという名前のお菓子だ。初都にある山の名前が由来になっていることもあり、絶対新都では売っていない。


 パンケーキみたいな皮に、甘く煮た小豆が挟んであっておいしい。


「新都っ子のはなじみやすい感じのお菓子だと思うぜ。新都にはそういうお菓子もあるんだろ」


「そうですね、似たようなお菓子は見たことはあります。お菓子ありがとうございました。とりあえず初都の町を見てみます」


 お菓子を食べるために初都へ来たわけではない。そこで私は七神のやしきを出て、初都を歩いて回ることにした。


 神やしきはどれも似たような形をしている。これは神としての威厳を示すためなのか、私の出身地で見かけるような家よりも立派だ。


 なんなら冴夜村の七神やしきよりも立派かもしれない。いや大きさは初都の神やしきよりも、冴夜村の七神やしきの方が大きいはず。


「こんな立派なやしきが多いのに、住んでいる神様は少ないんだ・・・・・・」


 七神様は冴夜村に住んでいらっしゃるし、新都には二神様が住んでいる。


 でもこんな立派なやしきがあるなら、神はみんなここ初都に住めば良いのに。少なくとも冴夜村よりも、初都の方が生きやすいでしょ。


「神様の考えていることなんて分からないもこ。神様は気まぐれもこ」


 もこは私の頭の上を、ふわふわと飛んでいる。


「そうだね。神は人の意見を選ばないから」


 神は人に憑依する。そして誰に憑依するのかは、神が自分で決める。


 そういうわけで見た目は人であっても、中身は全然別の生き物なのだと神は思って良い。それを考えたらこのやしきを気に入らない神が多くても仕方ないだろうな、多分。


「今は神よりもいなくなった人のこともこ。どこに行っちゃったもこ?」


「本当だね。分からない」


 神のやしきがあるからか、人がほとんどいない。そして神のやしきは見通しがよくて、隠れることができるような場所もない。


「人がいないから、無理矢理連れ去られても分からなさそう」


「そうもこ」


 こうなったら不敬かもしれないけど、あちこちの神やしきで話を聞くしかない。


 ここら辺で暮らしている人なら、何か分かっているかもしれない。


「始祖神様と八神様はいらっしゃって、二神様と三神様、それから四神様の関係者は不在。となれば五神様のやしきから」


 さすがに神様のいるところへは行きづらいので、神がいないところへ行こう。


「新都から来た、そこの子。誰か探しているの?」


 透き通るような白い髪をお団子にしていて、カラフルな小紋を着ている若い女性。


 とってもおしゃれで、他の人とは違うようなオーラを持つ人。いや神様だ。


「幼なじみの月場を探しているます。行方不明なんです」


「七神ゆかりの月場ね。ここの近くでいなくなったの?」


「そうみたいです」


 もしかしたらここから歩いて行って、初都のどこかで月場はいなくなったかもしれない。それとも月場は初都からこっそり出て行ったのかもしれない。


 今は分からないことだらけだ。とりあえず初都に来たばかりなので、どうやって探していいかも分からない。


「七神の力だと人探しは難しいでしょう。とはいえ新都の学園生がいらっしゃるのは意外」


 神様は不思議そうに私のことを見ている。


「私は夏休みで、暇だからです」


 冴夜村に住んでいる人はすることがあって忙しい。そこで夏休み中の私が一番暇なのだ。


「そうですね。では一緒に探しましょう。私は始祖神、始まりの神ですし、未来予知ができますからぴったり」


「それはありがたいのですが・・・・・・、いいのですか?」


 始祖神は一番偉い神だ。


 そこで月場のような下っ端を探してくれるなんて、まずありえない。


「いいのよ。現実は凍玻璃でできた水泡なのよ。それでね、ここで月場を見つけないと、大変なことになりそう」


 始祖神は遠い空を見つめながら、話す。


「それに月場を見つける手かがりは、ここ初都の神やしき付近にあるはずよ。ここら辺を探しましょう」


「ここら辺ですか、今のところ手がかりは見つかりませんが」


 人が入ってくることがまれで、隠れることも難しい。


 そんな場所で人がいなくなるヒントが、あるはずがない。


「そうね。聞き込みをするのよ。ここら辺に住んでいる人なら、何か知っているはず」


「それしかないかもしれません」


 むしろそうするしかないだろう。


 月場がほかの神やしきにいるというわけではないかもしれないけど、何か事情があるはず。


「始祖神様は何か月場のことについて、ご存じですか?」


「月場とは関わりがないから、分からないの。でも未来予知をしていると、この辺にいるってことは分かるわ」


 七神様とは違う、神の力。それも私はよく分からない。


 とはいえ始祖神様の力だ、本当なのだろう。


「そういえばその生物、初めてみたわ」


 もこを見て、始祖神様は驚いているらしい。


「あんまり見かけませんから」


 どうやらもこは始祖神様にも知られていない存在らしい。いつの間にかいた生物がもこなんだけど、本当どういう存在なんだろうね。


 私はもこのことがよく分からないや。


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