参
「ここが私の部屋」
流石六神様の妹が暮らす部屋、というのだろう。
新都でもありそうなこざっぱりとした部屋で、狭くもない。
「広いね~」
「そうそう広いんだよ。旧都の部屋はこの部屋よりも狭いよ」
「私の新都で暮らす部屋も、ここよりも狭い」
私が新都で暮らしている部屋は、そこまで広いわけじゃない。学園の寮だから、広くできないってこともあるけど。
とはいえ冴夜村の家では専用の部屋はなかったので、村だから個人の部屋がもらえるわけじゃない。ということはろいろはかなり恵まれている。
「夕ご飯です」
お手伝いさんらしき人が、命の実を持った器を持って部屋へやってきた。
「机の上に置いていおいて」
「かしこまりました」
お手伝いさんらしき人は、机の上に器を置く。
「このうつわ二つあるけど、もしかして夕ご飯はこれだけ?」
これはろいろと私の分、そういうことだろうか?
それとも両方ろいろが食べて、私の分はほかにあるのだろうか?
「銀皀村では命の実以外のものは食べないの。旧都じゃあ色々食べていて物足りないけど、仕方ない」
ろいろは命の実にかじりつく。
命の実には味が一切ついていない。それもあってか、命の実だけの食事はあり得ない。
冴夜村に暮らしていたときだって、こんなことなかったのに。
「いただきます」
仕方なく、命の実をかじる。
当然のことながら、おいしくはない。でもこれ以外食べるものはないので、仕方ない。
「じゃあお風呂に入ろうか。神やしきだから、お風呂はあるよ」
「あっ入りたい」
お風呂に入りたいわけではないけど、体は洗いたい。
今日もたくさん歩いたから、体は当然汚れているし。
「ここが風呂場」
少し大きなおけがぽつんとあり、その中にはお湯が入っているらしい。
「冴夜村にはお風呂がないから、こっちの方がまし」
そりゃあ初都や新都には負けないけど、冴夜村よりは立派な風呂だ。
そこで布で体を洗い、お風呂のお湯で髪を洗う。うん、これですっきりした。ろいろも々感じにしていたから、銀皀村でもお風呂にはあまり入らないかもしれない。
「じゃあ部屋へ戻ろうよ。私の部屋で泊まってよ、広いから」
「ありがとうございます」
ほかの部屋で泊まるよりは、ろいろの部屋の方が気楽だろう。
とはいえ六神やしきは広く、部屋が余っている気がした。お風呂からろいろの部屋へいく途中、そう思う。
「六神様のおやしきは人が少ないでしょう。お手伝いさんは通いの人しかいないから、私と六神様、そして六神様の夫と居候しかいないわよ」
「それは少ないです」
住み込みの使用人がいることは、素晴らしい神やしきであることを証明している。
そこで七神様のやしきのも、住み込みの使用人がいる。月場も住み込みで手伝いをしていたはずだ。
そういえば六神様が月場を連れ去ったのではないかという話だった。そこでこのやしきに月場がいるかもしれない。
「このやしきって、何か使われていない部屋があるの?」
「それはあるよ。使用人立ち入り禁止の部屋もある。私の部屋じゃないけど」
ろいろが話し終わった途端、ろいろの部屋についた。
「あっもう布団を引いてくれたみたい」
ろいろの部屋には、さっきまでなかったものが増えていた。
「これが銀皀村の布団・・・・・・?」
人が寝そべることのできるサイズの平べったいサイズをした袋に、何か物がつめてある。そこに服のような布がかかっている。
「新都はもっとさかえているから、はじめてみる布団かも。これは命の実の葉っぱを乾燥させた物を中につめている布の袋ね。この布の袋の上に寝転んで、この布をかけるの」
「ここでも命の実・・・・・・」
私が住んでいた冴夜村にも命の実はあるけど、葉っぱを活用することはない。寝るときに使うのは、確か冴夜村ではわらと布だった。
「ちなみに寝心地はよくないよ。旧都の布団が恋しい」
「都のつくところは栄えているから、私も旧都に泊まってみたい」
今七神の旧都やしきで泊まらなかったことを後悔した。きっと旧都の方が、寝心地のいい布団があるでしょ。
木の葉っぱが詰まった袋はふかふかしていないし、ふわふわもしていない。おまけに存在感もないので、床の堅さが体に影響しそう。
「じゃあ寝ようか。歯を磨いてね」
「そうする」
このやしきに明かりがとぼしい。ろいろの部屋も使用人がつけたらしい、ろうそくの光がぽつりぽつりあり、ろうかにもたいした明かりがあるわけじゃない。
初都や新都、それからちょっとしかないけど旧都にも魔法の明かりはあった。そこで夜も明るかったけど、銀皀村にはないから嫌だ。
「はーここにいると旧都へ帰りたくなる」
ろいろはため息をつく。
「旧都から銀皀村は近いでしょ、帰ったら良いんじゃないの?」
といいつつ難しいだろうなとは思った。
私だって新都から冴夜村に帰った。新都にいるときは冴夜村になんて帰らないと思ったけどね。帰らないわけにはいかなかったんだ。




