弐
「銀皀村はこの国で一番寂れた村だよ」
「いやいや私が住んでいた村と変わんないよ、あんまり」
ろいろにはそう答えた物の、銀皀村は冴夜村よりも寂れているところもある。例えばぼろい木材で作られた小屋。一応冴夜村にある家は、きちんとした木材で作られていた。
「あそこにあるのは物置小屋?」
「違うよ~。あそこにあるのは旅人さんの家」
穴があちらこちらにある木を三角に組んだ、1人しか入れない小屋が家とは思わなかったから、びっくりする。
「ろいろちゃん、どうしたの?」
無地の茶っぽい着物を着た人が、私たちのところへやってきた。この人は私やろいろと同じ年くらいの女の子だ。
「この人の幼なじみを探しているけど、それらしき人見た?」
「まーね。それにしてもろいろちゃん、旧都っぽくなったね。私は学校に通っているから、格好変えられないんだ。じゃあね」
ろいろの質問には答えず、女の子は立ち去った。
「学校に行きましょう。小学校と学園が一緒になっているんだ」
「村の学園って気になる」
私は新都の学園に通っているから、村の学園とは縁遠い。そこでろいろについて、歩く。
「ここが村の学校だよ」
冴夜村の小学校よりも、少し大きい学校。ここが小学校と学園が一緒になっているらしい。
「銀皀村の人しかこの学校には通っていないから、ほかよりも小さいかも。寮もないし」
「銀皀村専用の学校ってこと? 学園って寮付きが当たり前なのに、そうじゃないのも珍しい」
他村の学校に通っているってことはよくあるので、一つの村に住む人専用の学校って珍しい。
何よりも寮がついていない学園も珍しい、学園に通う人は寮生活をするって決まりになっているはずだから。
「そうそう。銀皀村の人しか通わない学校だから、特例で寮がないんだ。まあこの村は別世界だから、他の人にはなじめないと思うから、これでいいと思うよ」
「その学校に幼なじみを探すヒントなんてある?」
とはいえほかにツテがあるわけでもなく、私はただろいろについていく。
「こんにちは~」
つぎはぎのある着物を着た女性に、ろいろが話しかけた。
「お久しぶり。旧都から帰ったの?」
「そうです。少し帰省しています。ところでこの人の幼なじみが見つかっていないのですが、この村では見かけましたか?」
「覚えていない。多分そういうことが気にできる状況じゃなかったんだ、多分」
「そうですか、ありがとうございます」
ろいろが色々な人に話を聞いているけど、誰からも私の幼なじみの話を避けようとする。
私の幼なじみの話題はこの村では駄目とされるのかな?
「学校から出ようか」
「それがいいかも」
この学校は冴夜村よりも寂れている感じがする。
冴夜村の小学校はこぢんまりとしつつも、きれいだったけど。ここはあちこち掃除が行き届かないみたいで、端っこの方とか汚い。
それにここに幼なじみはいなさそうだ。寮のない学校で、小学校を卒業した男子をかくまいつづけるのは無理だろう。
「命の実が多いね」
「この村では命の実が大事とされているの。なんなら命の実以外は植えられていない」
「それは珍しい」
冴夜村では命の実以外の物がたくさん植えてあったし、なんなら命の実だけを植えているのはあまりない。
だって命の実はあんまりおいしくはない。生きるのに大事だけど、おいしさはないはずだ。
「珍しいよね。旧都じゃあさ、銀皀村じゃあ想像もできないほど食べ物の種類が多いよ。肉や魚が毎食のように出てくるのなんて、銀皀村にいたときは想像すらできなかったけど、旧都じゃあふつーだし」
「うらやましー。私が住んでいた村では、肉や魚は出なかったもん」
新都では肉や魚出ていたけど、冴夜村では全く出なかった。初都でも肉や魚を見ることはあんまりなかったから、旧都は新都ほど栄えている街だろう。
「ここは光が多いね」
建物から離れて、命の実が多い場所。そこではほかの場所では見たことにない、光であふれていた。
「そうそう。命の実が多いと、こんな光が出るの」
水色の光はふんわりと地面から出ている。
一つ一つ小さな丸みたいで、ぼんやりとした光。それらはそれに向かって、少しずつ登っていく。
「それにしてもいなくなった人いない」
光から離れていくようにゆっくりと歩きつつ、周りを見ているろいろ。どうやら見覚えのない人はいないらしく、時々会った人と話している。
「本当だね。いない」
月場らしい人はいない。月場は顔立ちが整っているのもあって、出会ったらすぐにわかりそうだけど。
「ここが六神様のやしきだよ」
「きれーな色」
壁がきれいなオレンジ色で塗られている。こんな家新都にもないほど、派手できれいなやしきだ。
「ここで今日は泊まっていって。私六神様の妹で、ここに住んでいるんだ」
いざとなったら七神の旧都やしきで泊まろうと思ったけど、誘われたからここの方がいいかな。
それに銀皀村と旧都の往復の時間も節約できるし。
「ありがとう。六神様の妹なんて意外」
ろいろは色々な人と話してはいたけど、六神様の妹っぽい偉さはなかった。そこでかなり意外だ。
「普段は旧都にいるから、銀皀村の人とはあんまりなじみがないのよ。じゃあ行こう」
そこで初都やしきではない、神様が住んでいるやしきへ私は入るのであった。
そういえば月場がいなくなったことに、六神様が絡んでいるんだった。だとすれば六神様と会うことが大事、なのかな?




