ACT.01「観測する少年と腐れ縁の友人、それと転校生」
......眠い。
昨日...というか今日は恋愛小説を夜遅くまで読み込んでいたらいつの間にか深夜2時にまでなってしまっていた。
これは観測者としてはあるまじき行為だ。...だって眠気のせいで尊い物語を観測できないのだから!!
......とまあ冗談じゃない冗談はさておき。
俺の紹介でもほんの少しだけしておこう。俺は「東宮 蒼」ただの一般高校生一年生さ。
......ただまあ、一般と言えないようなところがあるとするなら...それは俺の趣味だな。
その趣味とは"観測"。他人が築く恋愛のストーリーを傍観者や協力者、はたまた演技のライバルとして焦らせさせたり、と様々な方法で人の恋愛を観測してきた。
そこの過程で様々な奴から「お前自身はしないのか」などと言われてきた。...正直言って俺自身がする気はまったくない。
だって恋愛は俺からしたら見てるだけでいいものなのにわざわざする意味がない、と思っている。
とまあそんな感じで俺は自分の恋愛ごとには全くもって無関心だ。まあ、それで俺は別に構わないしな。
さてと......それじゃあまた観測しますかねぇ...
「お~い蒼!!大ニュースだぞ!!」などと考えていた矢先、耳に馬鹿でかい声が響いてきた。
...出鼻をくじかれた......
「なんだよハゲ。」
「ハゲ呼びはマジでやめろ??」
「実際ハゲだろ。」
「スキンヘッドですがぁ!?」
「変わらんだろ。」
「変わるわい!!」
...マジでこいつはうるさい。でもまあ、それさえ除けば普通にいい奴なんだがなぁ......
「...んで要件はなんだよ。」
「急に話題変えんなよ......。」
「まあいいから早く。」
「分かったよ...」
「...今日、転校生来るらしいぞ。」
「.........マジで?」
「大マジもんよ。」
「今って5月だろ?そんな時期に来るのか?」
「ところがどっこい来るんだと。」
「へえぇ......。」
「一体どんな人なんだろうなぁ...」
あ、紹介が遅れたな。さっきから話してるこのハゲは「明星 希」だ。俺の数少ない友人の一人だ。なんやかんやで小さい頃から一緒に居るから多分腐れ縁?とやらのものだと思う。
んで外見はさっきも言ってたがハゲ(本人が言うにはスキンヘッド)だ。まぁその原因はだいたいお察しのとおり希が野球部だからだ。そんでエースを張ってる。それも弱小チームじゃなく普通に強豪チームで。
俺はあまり野球に詳しくないのでそこまでは分からないが結構すごい...らしい。
しかも顔が中々にイケメンだからだいぶモテている。だが希自身はずうっと昔から一人の女子だけを見続けている為、残念ながらその周りの奴らに希が惹かれてしまうことはない。
...とまあ希はスペックが中々高いのだが。
そんな奴が何故ずっと俺なんかと絡んでくれているのか、それが俺にはさっぱり分からない。
こんな奴なんかと関わる必要もないだろうに......。
(ちなみに、希は以前一回だけ髪を伸ばした時があったのだが案の定、というかなんというかで普段も良いのだがそれ以上に美貌が露になってしまい、アホほどもてた。それが嫌だった希は速攻髪を元に戻したが。)
「あっまた蒼お前ネガティブなこと考えてただろ?」
「え?」
「いや別にそんな事ないが...?」
「嘘つけ、眉が下がってたぞ。」
「えっ...マジで?」
「マジで。本当にお前は嘘ついてるかどうか分かりやすいし顔に出やすいよなぁ......。」
「......治したいんだけどな。」
「多分無理だな。」
「ひどくねぇ?」
「さっきのお返しだ。」
「ぐぬぬ.........。」
などと謎の?やりとりをしていると......
「お~い席に付け~」
先生がやってきた。
「うおっやべやべ、そんじゃ後でな~」
と、慌てながら自分の席へと戻っていく希。
「それじゃHR始めるが...その前に...」
その意味ありげな発言に、俺や希などの何なのか分かっている一部を除き、クラスメイトがざわつく。
「おい落ち着け。とりあえず発表する。」
「今日からこのクラスに、転校生が入る。」
.........その言葉が発され、一拍子が過ぎた直後だった。
教室が歓喜と困惑、そして驚愕の声で一気に騒然とする。
「うるっさ...」
思わず愚痴の言葉をこぼしてしまいつつもその様子を眺める。
「おい落ち着け!!」
先生が必死に皆を落ち着けるも猿ばかりのこのクラスはそう簡単には落ち着かない。
......やっぱりこのクラスじゃない方が良かったかもなぁ......。
数分後
やっとのことで落ち着いたクラスメイト達を転校生の前にしてそこまで怒れない先生が怒っている様子を横目に見ながらちらりと窓の外を見る。
俺の席は幸運なことに窓際の一番後方の席な為、たまに窓の外の中庭を見ることができる。そしていつものごとく外をちらっと見ていると。
明らかに見覚えのない女子が教室があるこちら側に歩いてきているのが見えた。
......あれが転校生...か?
ふぅん...まあ世間一般的には可愛い...んだろうなぁ。
まあ別にそんなに興味ないしどうでも良いんだが。
「...まあ説教はここまでとする。さてじゃあいよいよ転校生が来る。くれぐれも静かにな?」
そんなことを考えているとやっとのことで説教を終わらせた先生が少し疲れた様子で一瞬教室の外へと向かう。
「あ、それじゃ教室に入ってきてくれるかな?」
とか普段の俺らには到底言わないような声色でその転校生を呼ぶ先生。そんな声に俺を含めたクラスの大多数がドン引きする中、いよいよその転校生が入ってくる。
......さっきちらっと見た時も思ったが結構可愛い顔をしている。まあこんな顔だったらいい感じに恋愛劇を観測させてくれそうな感じだな。......楽しませてもらうかね。
「それじゃ自己紹介を頼んでもいいかな?」
「了解しました。」
...そう言うとその転校生は黒板に名前を書いていく。
そうして彼女が綺麗に整った字を書きあげてこちら側に振り返り、はっきりとした声で言う。
「今日からこのクラスでお世話になります、橘 遥香です。......よろしくお願いいたします!!」
いったんここで区切らさせて頂きます。
基本的には一週間に一回のペースで更新していこうと考えていますので...
初心者な自分ですが、改めてよろしくお願いいたします!!