1/ベイアナット -18 放浪の物語
翌朝、俺たちは、再びウガルデのギルドを訪ねていた。
朝っぱらから赤ら顔の冒険者は、さすがに多くない。
それでもいることはいるのだから、他にすることはないのかと思わず心配になってしまう。
「──よう、あんたら。ヤーエルヘルもちゃんと眠れたか?」
ヤーエルヘルが元気よく答える。
「眠れました!」
「元気そうで何よりだ。んじゃ、さっさとパーティ登録しちまうぞ。パーティ名は決まったか?」
「ああ」
ヘレジナが頷き、答える。
「〈ワンダラスト・テイル〉とした」
「放浪の物語──なかなかいい名前じゃねェか」
「ふふん。そうだろう、そうだろう」
案を出したのが自分だからか、ヘレジナはすこぶる得意げだ。
用紙にパーティ名を書き留めながら、ウガルデが続けて尋ねる。
「代表者とパーティメンバーの名前も頼む。仮の登録証を作らないとなんねェからな」
「ふむ。代表者は私で構わんか?」
「それが無難だろ」
「あちしもそう思いまし」
「へ、ヘレジナ、お願い……ね?」
「わかりました。代表者、謹んで拝命いたします」
プルに一礼したあと、ヘレジナがウガルデへと向き直る。
「では、代表者はヘレジナ=エーデルマンで頼む。メンバーは──」
ヘレジナがこちらを振り返る。
「ヤーエルヘル=ヤガタニでし」
「鵜堂──いや、カタナ=ウドウで頼む」
こちらのほうが通りがいいだろう。
「わ、わたしは、プルク──」
言い掛けて、プルが慌てて口をつぐむ。
こんなところで本名を名乗れるはずもない。
「どうした?」
ウガルデが怪訝そうに顔を上げる。
「──…………」
明らかに主従関係が見えるヘレジナより、俺のほうが妥当か。
「こいつは、プル=ウドウだ。それで登録してくれ」
「ほう?」
ウガルデが無精髭の生えた顎を撫でる。
「……どう見ても血は繋がってねェな」
「複雑な家庭環境なんだよ。察してくれ」
「なるほどな。まあ、深くは聞くまいよ」
ウガルデが用紙にペンを走らせる。
よし、通った。
「……カタナさんとプルさん、兄妹だったんでしか?」
「そ、そそ、そうなの……?」
「おお、親愛なる妹よ」
「お、お兄さま……!?」
プルが混乱している。
混乱するな、このくらいで。
「この登録用紙を遺物三都ギルド連盟に送れば、登録証が送り返されてくる。この登録証は身分証明書としても使えるから、絶対に紛失すんなよ。登録証が届くまで二日はかかる。それまでは仮の登録証で働いてもらうわけだが、仮だと大した仕事は任せらんねェ。まあ、肩慣らしだと思って気楽にやんな」
「了解した」
「んじゃ、ワンダラスト・テイルの初仕事は──」
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