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1/ベイアナット -2 体操術

「ほ、ほら。プルにも軽い運動までって言われてるしな。ここまで、ここまで」

「何を言っている。まだ準備運動だろう?」

「一時間も手合わせしておいてか!」

 ヘレジナが、これ見よがしに溜め息をついてみせる。

「カタナには決定的に体力が足りん。師匠から受けた傷で内臓機能が弱まっていることを考慮に入れたとしても、だ」

「これでも、ブラック営業のおかげで体力だけはあるほうなんだぞ……」

 少なくとも、アラサー男の平均よりは遥かに上だろう。

「異世界の人間というのは、随分と持久力がないのだ、……な?」

 ヘレジナが不意に言葉尻を濁し、神妙な表情を浮かべた。

「カタナ」

「なんだよ」

「カタナは、魔法も魔術も使えない。間違いはないな」

「使ってみたい気持ちは負けてないけどな」

「ならば、体操術なしで奇跡級下位の実力というわけか……」

「体操術?」

 まさか、ラジオ体操のことではあるまい。

「体操術とは、操術の一種だ。自らの肉体を魔術によって制御することで、身体能力の向上を図る。白兵戦においては、体操術の巧拙が勝敗を分けるほどだ」

「……まさか、持久力も?」

「単純に考えて、体力と魔力マナとで持久力は倍になるな」

「え、ずる」

 高校生のマラソン大会に小学生が混じってるようなもんじゃねえか。

 道理で、あのプルですら破格の持久力を誇っていたわけだ。

「なら、ルインラインも、その魔術で自己強化してたってことか」

「いや」

 ヘレジナが首を横に振る。

「師匠は生まれつき火法しか使えなかったらしい。師匠といい、カタナといい、体操術は肉体が本来持つ成長性を阻害しているのかもしれないな」

 冗談めかして、ヘレジナが続ける。

「もしカタナが体躁術を扱えるようになれば、私程度、容易く追い越してしまうやもしれん。奇跡級上位も夢ではないぞ」

「無理だろ」

 魔術的な意味でも、実力的な意味でも。

「ところで、魔法の練習は順調か?」

「プルに教えてもらってるけど、駄目だな。取っ掛かりの一つも感じない」

「三大魔法のいずれもか」

「火法、光法、動法──どれも同じだよ。諦めたかないが、プルが言うには、そもそも魔力マナがないかもってさ」

「むう……」

 そんな会話を交わしていると、平屋の扉が開き、プルが顔を覗かせた。

「ふ、ふたりとも。お昼ごはん、できた、……よ?」

 ヘレジナが姿勢を正す。

「すみません、プルさま。食事の用意など、本来であれば、従者である私がすべきこと……」

 毎回言わんでもいいだろうに。

「い、いいの。わたし、お料理好きだし……。それに、わ、わたし、もう、皇巫女じゃないから……」

「ですが、私の主であることは──」

「聞き飽きた。ほら、メシ食うぞ」

 二人の背中を押しながら、住み慣れてきた借家へと足を踏み入れる。

「せっかくプルが作ってくれたんだ。冷める前のいちばん美味いときに味わうのが礼儀ってもんだろ」

「そ、その通り!」

「……うむ、そうだな」

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